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小紅書(RED)におけるライブコマースの急成長と今後の展望

ライブコマースが牽引する中国のeコマース革命と小紅書(RED)の躍進

中国のライブコマース市場:驚異的な成長を見せる

中国のライブコマース市場は、急速に進化しており、eコマース業界における革命的な役割を果たしています。中国社会科学院と中国マーケティング学会が共同発表した『2024年ライブコマース業界の発展動向調査』報告書の推算によると、2024年1月から11月の間に、全国のライブコマース小売売上高は4.3兆元に達し、その成長勢いは圧倒的です。この成長がもたらしたeコマース業界への80%の増加分は、まさに業界全体の成長を牽引する原動力となっています。

ライブコマース元年と中国市場の先駆者たち

振り返ると、2016年が中国におけるライブコマースの元年とされています。その年、淘宝(Taobao・タオバオ)をはじめとするライブ配信プラットフォームが登場し、ユーザーが商品を購入する際にリアルタイムでインタラクションを行う新しいショッピング体験が誕生しました。さらに、2018年には快手(Kuaishou・かいしゅ)や抖音(Douyin・中国版TikTok)がライブ配信を取り入れ、いち早くこの分野に参入しました。これらのプラットフォームは、ライブコマースの進化を牽引し、商品の紹介と販売のスタイルに大きな変革をもたらしました。

小紅書(RED)の遅れた参入とライブコマースの急成長

他のプラットフォームに比べてライブコマースへの参入が遅れた小紅書(RED)ですが、2020年にライブ配信機能を導入し、その後急速に市場に進出しました。遅れた参入にもかかわらず、小紅書(RED)はライブコマース市場で急成長を遂げました。

小紅書(RED)とは? — SNSとECが融合した新しいショッピング体験

小紅書(RED)は、中国の若年層(特に20代から30代)に支持されるソーシャルメディア兼ECプラットフォームです。日本ではまだあまり馴染みがないかもしれませんが、Instagramとオンラインショッピングが融合したサービスと言えます。ユーザーは自身のライフスタイルや趣味に関連する商品や体験をシェアし、他のユーザーと交流することができます。その投稿で紹介された商品は、その場で購入できる仕組みも特徴的です。

このような特徴が、ユーザーを「興味を引かれた」状態で小紅書(RED)に引き寄せ、毎月1.2億人以上が購入アドバイスを求めて訪れる要因となっています。また、アメリカの大手市場調査会社であるニールセンの調査によると、小紅書(RED)の1日の検索浸透率は70%に達し、その88%が積極的に検索し、購入の参考情報を探していることが分かっています。

小紅書(RED)の急成長を支えるプラットフォームの特性

この「情報収集と即時購入」が融合したプラットフォームとしての特性は、ライブコマースの急成長を支える強力な基盤となっています。ユーザーはリアルタイムで商品を購入する動機を強化され、また、商品への関心を深めるための場として、非常に高い効果を発揮しています。

小紅書(RED)の勢いを示すデータ

中国のネットライブ配信プラットフォーム業界における競争階層(ライブアクティブユーザー規模別)のデータを見ると、小紅書(RED)は第2階層に位置しています。この統計データは、小紅書(RED)が急速に拡大している中、依然として抖音(Douyin・中国版TikTok)や快手(Kuaishou・かいしゅ)には及ばないものの、その成長が非常に高いことを示しています。

トップ(10億人以上):抖音(Douyin・中国版TikTok)、快手(Kuaishou・かいしゅ)、淘宝(Taobao・タオバオ)

第1階層(5〜10億人):京东(JD.com・ジンドン)、腾讯视频(Tencent Video)、拼多多(Pinduoduo・ピンドゥオドゥオ)、哔哩哔哩(Bilibili・ビリビリ)

第2階層(3〜5億人):小红书(Xiaohongshu)、虎牙(Huya)、微博(Weibo・ウェイボー)、斗鱼(Douyu)

第3階層(3億人未満):映客(Inke)、陌陌(Momo)、酷狗(Kugou)

データ出典元:前瞻産業研究院(中国で設立された市場調査機関)

この二つのデータだけを見ると、小紅書(RED)はそれほど目立っていないように思えますが、淘宝(Taobao・タオバオ)、京东(JD.com・ジンドン)、拼多多(Pinduoduo・ピンドゥオドゥオ)といった純粋な電子商取引プラットフォームを除外し、また腾讯视频(テンセントビデオ)、哔哩哔哩(Bilibili・ビリビリ)、愛奇芸(iQIYI・アイチーイー)といった動画プラットフォームを除外して考えると、小紅書(RED)は【コンテンツ+ソーシャル】系の同様のプラットフォームにおいて、抖音(Douyin・中国版TikTok)や快手(Kuaishou・かいしゅ)に次ぐ強みを持っていることが分かります。特筆すべきは、前瞻産業研究院の最新のレポートによると、2022年のデータでは、抖音(Douyin・中国版TikTok)、快手(Kuaishou・かいしゅ)、淘宝(Taobao・タオバオ)の3つのプラットフォームだけでライブコマース市場のシェアが70%を占めていることです。このことからも、【コンテンツ+ソーシャル】系の同じようなプラットフォームにおいて、抖音(Douyin・中国版TikTok)や快手(Kuaishou・かいしゅ)に次ぐユーザー数を持つ小紅書(RED)のポテンシャルは非常に大きいことがわかります。

データ出典元:前瞻産業研究院(中国で設立された市場調査機関)

小紅書(RED)のライブコマースの効果と要因分析

動画コンテンツとライブ配信の需要拡大が示す未来

小紅書(RED)の公式発表による《2024小紅書クリエイター動向》レポートでは、今年上半期のライブ配信クリエイター数が昨年同期の2.48倍に達したことが述べられています。同レポートではさらに、動画ノートの閲覧数の割合が動画ノートの投稿数の割合を22%上回っていることも指摘されています。これは、ユーザーの動画コンテンツへの消費需要が現在の供給量を大きく上回っていることを意味します。これに基づいて推測されるのは、動画コンテンツの一形態であるライブ配信が、今後さらに大きな成長の余地を持っているということです。

小紅書(RED)のコマースの発展実績

2024年9月、小紅書(RED)は中小企業向けに『成長ブランド大会』を初めて開催し、その場で中小企業の成長データを発表しました。2024年上半期、小紅書(RED)で運営される中小企業の数は前年同期比で379%増加し、取引総額(GMV)は436%増加しました。また、昨年1年間で、小紅書(RED)の電商プラットフォームにおいて月間売上500万元以上の企業は3.5倍増加し、購入ユーザー数は4.3倍増加しました。特に、ライブコマースを開始してから1年半の間に、買手の規模は6.7倍増加し、買手と提携するブランド数は5.2倍に達しました。

小紅書(RED)のライブコマースと他プラットフォームの比較

小紅書(RED)のライブコマースは、他の主要プラットフォームと異なる特徴を持ち、各プラットフォームごとに流量の構造やターゲット層に違いがあります。これにより、同じライブコマースでも、プラットフォームごとに異なる戦略が求められます。

抖音(Douyin・中国版TikTok)は、ソーシャルとコンテンツが融合したプラットフォームで、広く公開されている「公域流量」が多く、ヘッド級インフルエンサーが集中しています。これにより、美容や衣類・雑貨などの消費者向け商品が多く展開されています。一方、快手(Kuaishou・かいしゅ)は、私域流量が中心で、インフルエンサーが比較的分散しており、低価格の商品やタレントライブ、投票商品が主流です。小紅書(RED)は、広範囲にわたる「公域+私域」の流量を持ち、代表的なKOLが少ないものの、主に美容系の商品が展開され、口コミやレビューを重視したマーケティングが行われています。

これらのプラットフォームは、異なる流量構造とインフルエンサーの活躍の仕方があり、それぞれに適した商品戦略を採用することが成功の鍵となります。

小紅書(RED)の独自のECライブ配信ロジック

同じECライブ配信であっても、流量メカニズムが異なるため、小紅書(RED)のライブ配信には衝動的な消費を促す要素が欠けている点が特徴的です。抖音(Douyin・中国版TikTok)の流量メカニズムでは、20%のユーザーが80%の流量を占有し、高い露出度と売上が比例します。一方、小紅書(RED)では、流量をより均等に分配し、素人ユーザーにも多くの露出機会を与え、コミュニティの雰囲気を強化しています。

データによると、小紅書(RED)ではUGC(ユーザー生成コンテンツ)の割合が70%以上を占め、商業化の割合は厳格に20%未満に制限されています。さらに、小紅書(RED)の内部調査では、従来の「棚型EC」や「ライブEC」のモデルでは、プラットフォームに十分に多く、安価な商品が必要であることがユーザーの関心を引き付ける要素だとされています。しかし、小紅書(RED)の強みは「コンテンツ」にあります。質の高い投稿やライブ配信コンテンツを通じて購入を促進することが、小紅書(RED)に最も適したEC成長モデルとされています。

この独自のポジショニングにより、小紅書(RED)では商品の種類とターゲット層との間で非常に高い転換効率を実現しています。

小紅書(RED)のライブコマースに見る高い効果とその背景

小紅書(RED)のライブコマースは、その独自のECライブ配信ロジックと戦略によって、注目すべき成果を上げています。特に、プラットフォームが持つ「公域+私域」の流量の特徴や、口コミとレビューを重視するマーケティング戦略が、ユーザーとの強い信頼関係を築き、高い転換率を実現しています。

小紅書(RED)を主要研究対象とする【千瓜データ】というデータ統計サイトの2024年公開の統計によると、これらの戦略が反映された以下のデータが示されています:

商品クリック数:25.25万人
小紅書(RED)の「公域+私域」の流量の効果により、商品のクリック数は高い数値を記録しています。視聴者が商品紹介後に自ら積極的にクリックし、購買意欲を高める傾向があります。

商品売上数:16万件以上
小紅書(RED)では、視聴者との密接なインタラクションが促進されるため、実際に視聴者が商品購入へとつながるケースが非常に多くなっています。特に、ライブ配信中に商品紹介が行われると、視聴者の関心を瞬時に引き出し、高い売上を生み出しています。

平均商品クリック率:20.05%
小紅書(RED)の特徴的なポイントは、ユーザー生成コンテンツ(UGC)の比率が高いことです。ユーザーが自ら投稿した体験やレビューが、視聴者の共感を呼び起こし、商品へのクリック率を高める要因となっています。これにより、ユーザーは購買の意思決定を迅速に行うことができます。

平均出品商品数:228点
プラットフォームは、多くの商品を一度に紹介することで、ユーザーに幅広い選択肢を提供しています。特に、化粧品やファッションなどの分野では、多数の商品を一気に見られることで、視聴者の関心を引きやすく、購入へとつながりやすい環境が整っています。

平均客単価:560元(約12,040円)以上
小紅書(RED)では、質の高いコンテンツがユーザーの購買意欲を引き出します。特に、ターゲット層である若年層の女性は、高単価な美容関連商品を好んで購入する傾向があり、これが客単価の上昇に寄与しています。

支払い転換率:65.37%
口コミやレビューを重視し、消費者の信頼を獲得している小紅書(RED)の戦略は、視聴者の購買転換率に直結しています。商品に対する信頼が高まることで、視聴者の約65%が最終的に購入に至っています。

平均ライブ配信視聴者数:125.93万人
ライブ配信においては、視聴者とのインタラクションが重要なポイントです。小紅書(RED)は、フォロワーやインフルエンサーが活発にコメントし合う環境を提供することで、視聴者数を維持しつつ、エンゲージメントを高めています。

売上転換率:13.11%
小紅書(RED)のライブ配信は、一般的なECサイトよりも高い売上転換率を誇ります。これは、視聴者が商品情報をリアルタイムで得られるため、即座に購入へと至ることができるからです。

まとめ:小紅書(RED)ライブコマースの今後の展望と活用戦略

小紅書(RED)のライブコマースは、急速に成長しており、特に中小ブランドにとって非常に大きなチャンスを提供しています。ニールセンの3年間にわたる数千人規模の小紅書(RED)ユーザー調査によると、ユーザーが購入決定において最も重視する要素は「製品品質(84%)」「自己満足(79%)」「コストパフォーマンス(79%)」の3つであり、ブランド自体は「71%」と、比較的低い順位にとどまっています。この結果は、ユーザーが感情的な価値を提供する高品質な製品に対しては積極的に投資する意向を持っていることを示唆しています。

これは、中小ブランドにとって重要な示唆を与えており、製品の品質や独自性をアピールすることが、競争の激しい市場で差別化を図るポイントとなります。また、特にユーザーの購入決定においてブランドよりも製品そのものが大きな役割を果たしているため、これらの要素を訴求することが成功の鍵となるでしょう。

さらに、小紅書(RED)の公式発表によると、消費財カテゴリーにおいても新たな成長の兆しが見られ、中小ブランドにとっての大きなチャンスが広がっています。2024年には、小紅書(RED)のTOP1000アイテムのうち160点が成長ブランドから提供されており、これらのブランドは急速に市場に浸透しています。また、イヤホンや香水など、これまであまり注目されていなかったカテゴリーが急速に拡大し、139の新たに細分化されたカテゴリーが登場しました。このように、小紅書(RED)は中小ブランドにとって新たな市場開拓の場を提供し、ユーザーの多様なニーズにも応えています。

小紅書(RED)が持つ強力な「公域+私域」の流量メカニズムは、ブランドや商品が消費者と密接に結びつきやすく、高い転換率を実現しています。特に、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の割合が高いため、ユーザー同士の信頼と共感が購買へとつながりやすい環境が整っています。これにより、ライブコマースにおいては、視聴者とのリアルタイムなインタラクションが重要な要素となり、商品紹介とともに消費者の購買意欲を高めることができます。

小紅書(RED)を活用するための戦略

品質とコストパフォーマンスの訴求
ユーザーが重視する品質やコストパフォーマンスを前面に押し出したマーケティングを行うことで、より多くの消費者にアピールできます。製品の特長や品質に焦点を当て、感情的な価値を提供できるコンテンツを作成することが求められます。

中小ブランドの成長のチャンスを活かす
小紅書(RED)は、特に中小ブランドの成長を支援するプラットフォームとしてのポテンシャルを秘めています。TOP1000アイテムのうち160点が成長ブランドから来ており、この傾向は今後も続く可能性が高いため、成長段階にあるブランドには特に注目が必要です。高品質な商品を手にした中小ブランドは、小紅書(RED)を通じて新たな顧客層を開拓しやすくなります。

新たな消費財カテゴリーの開拓
小紅書(RED)は新しい消費財カテゴリに積極的に進出しています。イヤホンや香水、さらに細分化されたカテゴリーが急速に拡大しており、このような新たな市場に積極的に参加することで、早期に先駆者利益を享受できます。

インフルエンサーとユーザー生成コンテンツ(UGC)の活用
小紅書(RED)の成功には、インフルエンサーやユーザー生成コンテンツ(UGC)が大きな役割を果たしています。ユーザーが自分の体験をシェアし、他のユーザーと情報を交換する文化が根付いているため、インフルエンサーや口コミをうまく活用することが、購買行動を促進する重要なポイントとなります。

ライブ配信の活用
小紅書(RED)では、ライブ配信を通じて商品紹介が行われ、視聴者とのインタラクションが強化されています。商品紹介と同時に、リアルタイムでの質問応答やデモンストレーションを行うことで、ユーザーの購買意欲をさらに引き出すことが可能です。

結論

小紅書(RED)は、その特異なライブコマースプラットフォームとして、今後さらに多くの中小ブランドにとって重要なマーケティングツールとなることは間違いありません。製品品質とコストパフォーマンスを重視するユーザーのニーズに応えることで、ブランドはより多くの消費者にアプローチでき、売上を拡大するチャンスを得ることができます。ライブコマースの強みを最大限に活用し、インフルエンサーやユーザー生成コンテンツの力を借りることで、小紅書(RED)での成功を手にすることが可能となるでしょう。

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