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抖音もライブ動画配信へ、ショートムービー収益化への険しい道

一.ライブ動画配信開始へ

ライブ動画配信というニューウェーブは激しい競争を巻き起こした後、落ち着きを見せ始めています。先ごろ、ライブ動画のトップアプリである映客(Inke)が宣亜国際(Shunya International)に買収されたというニュースはそれを裏打ちするものです。それに対してショートムービーの分野はライブ動画の後に出現した新たな上昇気流といえるかもしれません。
興味深いことに、快手(Kwai)、美拍(MeiPai)、火山小視頻などランキングトップに名を連ねているショートムービーのプラットフォームが、相次いでライブ動画の配信を開始しています。このような趨勢の中、ミュージック・ショートムービーのプラットフォームとして立ち位置を定めてきた抖音(Douyin)もライブ動画の配信サービスを開始しようとしています。

これまで、抖音はライブ動画機能の初期テストを行ってきており、フォロワー数最多を誇る張欣尭もそれに加わっています。抖音によれば、アプリのライブ動画機能は以前から計画されていたもので、IOS版もアンドロイド版も数日のうちに開始されるということです。ただ、抖音の国際版アプリであるTik Tokにはライブ動画機能は追加されません。
今のところ、すべてのユーザーがライブ動画を視聴することができますが、動画を配信するには条件を満たす必要があります。最近流れた情報では、5万人以上のフォロワーを持つ場合にのみ配信を行えるというものです。これに対して抖音は「確かに限られた範囲での実施から始めます。しかしフォロワー数が基準になるというより、これまでのサイト内での評価などを総合的に考慮して判断します。」といっています。

二.ショーも引き抜きも行わない

もはや、ショートムービーのプラットフォームがライブ動画を配信するというのは目新しいことではなくなっていますが、抖音のライブ動画にはどんな特徴があるのでしょうか。抖音関係者は「私たちは他のプラットフォームがしているようなショーの配信は行いません。」と語っています。抖音はもともとショートムービーのコミュニティであって、ライブ動画機能を追加してもその立ち位置は変えないということです。

1.抖音のライブ動画視聴ボタンは目立たない場所にあります。ニュースフィードにはライブ動画は表示されず、独立したライブ動画メニューもありません。今のところストーリー、マイページ及びムービー右側の三ヶ所からのみ視聴ページに移れます。


比較してみると、抖音のライブ視聴入り口は快手とよく似ています。2016年の初めに快手がライブ動画機能を開始したときにも「フォロー」の中にひっそりと置いたことから分かるように、ライブ動画は付加機能という位置づけに過ぎませんでした。そして今でも、快手のライブ動画視聴ボタンは動画撮影ページの隅にひっそりと置かれています。
かたや、美拍や火山小視頻ではライブ動画視聴が目立つ位置に配置され、大きなウェイトを占めていることがわかります。美拍ではライブ動画の配信開始以来ずっとこの機能に重きを置いており、ファン・ビンビンやアンジェラベイビーといった大物芸能人を招いてのライブ配信を行ってきました。そして、ショートムービーの録画時間も比較的長く10秒から60秒となっています。火山小視頻はもともと火山直播と火山小視頻という二つのアプリが合併してできたものなので、ライブ動画が重要な位置を占めているのも当然のことだといえます。
抖音が今後ライブ動画のウェイトを大きくしていくのかについて、まだ直接の回答は得られていませんが、ライブ動画の機能に関連して調整や刷新を行っていくのは間違いないでしょう。

2.抖音には商業プラットフォームがありません。さらにランキング対決などのショー配信という「既定路線」を退けてフォロワーの「いいね!」の数でランキングしています。方向性の違いにより、ほかのプラットフォームからの引き抜きも行いません。

ライブ動画の分野では、ほとんどがショー形式の配信を取り入れています。これは受け取ったバーチャルギフトの収入でランキングするというものですが、これにより上位ランクインを目指す配信者がギフトを必死に懇願するようになりました。実際、ライブ動画配信のプラットフォームを開いてみると、バーチャルギフトの飛行機や自動車、クルーザーが画面を飛び交っており、配信者はそれに対する感謝を述べ連ねているのです。
抖音が考えるに「これでは配信者もフォロワーも疲れてしまい、本来の意義が失われてしまいます。このような状況では配信者はお金持ちばかりに注意を向けるようになり、そのほかのユーザーは見向きもされなくなるでしょう。」インスタグラムが打ち出したライブ動画の機能のように、第一に良質なショートムービーによって獲得してきたフォロワーとの交流を考え、コンテンツのクオリティや配信者本人の魅力に根差したつながり、いわば対等なコミュニケーションを提供したいとしています。

抖音はライブ動画に対するこのような見方を示したうえで、収入ランキング対決というのはある種のもうけ主義だと述べています。抖音と火山小視頻ではライブ動画の位置づけに大きな違いがあるものの、お互いをライバル視しているように感じられます。
これについて、抖音は次のように説明しています。「ショー配信が良くないと言うつもりはありません。すでに確立された収益化のモデルだからです。ただやるかどうかは目的によります。私たちは抖音から配信者とフォロワーの交流やつながりをもっと配信していきたいと考えており、その目標を考えたときショー配信はそぐわないと判断したのです」。ただ、配信者とユーザー間の対等な関係というのが優れているのかに関しては少し疑問も残ります。
先日、映客の創業者またCEOの奉佑生氏が『財経』のインタビューで述べたところでは、映客のハイエンドユーザーのコミュニティの本質は「優越感」さらに言えば「美しさ」だということです。手に入らないからこそ美しいのであり、ユーザーはそれを手に入れようと必死に時間、労力及びお金をつぎ込みます。さらに、そのような人たちはみなiPhoneを使っているので、ハイエンド感を出すためにアンドロイドユーザーの配信者はトップページに表示されないようにさえしているというのです。
この考え方からすると、リアルに普通の生活を切り取って発信する庶民的な快手は、どこか見下ろされているという感覚になるのではないでしょうか。
この対等、優越感及び庶民派という立ち位置と方向性の違いにより、あらゆる人のニーズを満たせるのでしょう。

3.ライブ動画内のギフトとコンテンツはすべて抖音のコミュニティ文化から派生したもので、抖音のオリジナリティーを際立たせています。

抖音のライブ動画ページでは「ビブラート」、「ペロペロキャンディー」、「魔法のステッキ」、「電話する」、「サグ・ライフ」、「爆弾」などのギフトが並んでいます。名称には抖音らしさがあふれていて、若い人やネット文化の流行にマッチしているだけでなく、「ペロペロキャンディー」や「魔法のスティック」といった響きはハイヒールやビールなどよりもずっと新鮮です。「いいね!」をお願いするお決まりのフレーズを聞くと誰もが快手を連想するように、抖音がプラットフォームの差別化を図るポイントになるかもしれません。
抖音の関係者によれば、初期テスト期間中に抖音の動画コンテンツとほかのプラットフォームとの違いが明らかになってきました。よくあるコメントでの交流のほかに、ライブ動画の中でフォロワーに録画の方法やダンスのスキルなどを教えている配信者が多くみられたということです。

残念なのは、ほかのプラットフォームでは何十種類ものギフトが3,4ページにわたって用意されているのに対し、抖音では今のところ種類がわずかだということです。抖音は今後、ギフトやスタンプを増やしていくとしています。

三.確立された収益化のモデル

ショートムービープラットフォームがこぞってライブ配信を開始したのには、ユーザーの様々なニーズを満たすためだけでなく、ライブ動画が確立された収益化のモデルだということが大きく関係しています。
ライブ動画プラットフォームは最近やや下り坂の様相ですが、ショートムービーはコンテンツ産業の次なる風穴だとみられています。しかし実際にはショートムービーも6年にわたる苦節を経て、ようやく盛り上がりを見せてきたのです。
今のショートムービー業界の構図はまだ流動的で、スタートダッシュをかけた快手がトップの座についているほかは、大手プラットフォームが熾烈な競争を繰り広げています。極光(JIGUANG)の発表した第3四半期データによると、快手が19.8%のユーザーを獲得して1位にランクインしたほか、2位に西瓜視頻、3位に美拍がつけています。注目できるのは、抖音と火山小視頻が3桁の上昇率を保っている点です。

ショートムービーの分野では急速にユーザーが拡大していますが、数年をかけて発展してきた快手にしても設立1年ほどの抖音にしても、利潤確保は避けて通れない問題です。
国外ではSnapがすでに上場を果たしました。企業としては依然赤字ですが、広告やハード開発を積極的に推し進めて収益を上げています。Facebook傘下のインスタグラムはユーザーと広告の獲得において結果を出しており、COOのシェリル・サンドバーグは同社の第3四半期報告でインスタグラムの広告主が200万に達したことを明らかにしました。
中国国内では、美拍が「辺看辺買(見ながら買う)」と「美拍M計画」を打ち出し収益性を上げてきたほか、快手が年末に上場予定との情報が流れ、その価値は30億ドルに達すると見込まれています。快手の創業者でCEOの宿華氏は1年前に「今年は大規模な商業化に着手し、ニュースフィード広告、ネットショッピング、ゲーム、ライブ動画、付加価値サービスなど多角的なモデルで収益増を図りたい」と述べていました。本サイトでも以前に、抖音が商業化の第一歩となる縦型のネイティブ広告ムービーを打ち出したと報道しましたが、この種の広告がどれほどの収益増を生み出すかを見るにはもう少し時間が必要でしょう。
興味深いことに、いつかは頭打ちになるといわれているライブ動画業界で、陌陌やYY、天鴿互動、快手さらには身を売った映客までもがライブ動画によって大きな収益を上げています。データによれば陌陌の第2四半期のライブ動画収入は17.24億元、YYの第2四半期のライブ動画収入は23.26億元、天鴿互動の上半期のライブ動画収入は4.23億元、映客の第1四半期の営業収入は10.35億元、快手のライブ動画の月間平均収入は2-3億元に上るということです。データからわかる通り、YY、陌陌、快手、天鴿互動及び映客が収益面でのトップ5です。ライブ動画プラットフォームの主な収益源となっているのはバーチャルギフトです。映客では100万元以上チャージしたユーザー数が2015年にはゼロだったのに対し、2016年には210人、2017年第1四半期には32人でした。ユーザーがライブ動画につぎ込む金額はますます大きくなっています。そして快手の最大の収益源はこのライブ動画業務だということです。
こうしてみてみると、ショートムービーのプラットフォームでは収益増を目指す様々な試みがなされてきましたが、今のところ最も効率の良い収益源はやはりライブ動画でしょう。ショートムービーの広告収益がまだ安定していない現状で、ライブ動画により収益を上げようとするのは十分理解できることです。ライブ動画の配信を始める理由について抖音は、ライブ動画が強力なインタラクティブツールであり、フォロワーとの緊密なつながりを保てるという点を挙げています。また多くの配信者がたくさんのフォロワーを獲得しており、彼らもまた収益増を望んでいる中で、ライブ動画は確立された収益化のモデルだということです。抖音のユーザーは主に、大都市に集中しているため十分その消費を支えることができるのです。
ただ、抖音のライブ動画配信の本質は収益増を目指したものではないので、抖音ではライブ動画による収入試算を出してはいませんし、収益目標を掲げるつもりもないとしています。

四.大手企業の争い

SNS、ネットショッピング及び検索エンジンの分野では騰訊(テンセント)、アリババ及び百度(バイドゥ)がそれぞれ絶対的な地位を占めています。盛り上がりを見せているコンテンツ産業に対して、BAT(百度、アリババ、騰訊の頭文字をとったもの)も追随する姿勢を見せてはいますが、まだ様子見の態度を保っています。しかし、これら大手がひとたび参入すれば、ショートムービーの分野を含め業界の構図に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。
コンテンツ事業に関して言えば、今日頭条(Toutiao)の運営会社Bytedanceの創業者でCEOの張一鳴氏の判断は正しかったと言えるでしょう。今日頭条のエンジェル投資家である劉峻氏は次のように回想しています。「初めは奇虎360で個人の趣向や関心に沿った読み物の提供を考えていましたが、同社の同意が得られませんでした。その時に張一鳴氏の今日頭条を見て、すぐ投資することに決めました」。しかし、これに対してBATの反応は薄く、ベンチャー企業を遠くから見下ろしているような雰囲気さえあります。
テンセントは早くに今日頭条と接触を持ってはいたものの、投資のタイミングを逃してしまいました。当時は今日頭条の発展性を過小評価していたと、後でテンセント関係者は語っています。これは、テンセントがWhatsApp買収に失敗した場面を彷彿とさせます。劉峻氏が見るに、これはテンセントが逃した2大ビッグチャンスでした。目を覚ましたBATは今や、猛烈な勢いで追撃を始めるはずです。
「ショートムービーこそがコンテンツ産業の次なる風穴になります」。今まだ勢い衰えぬショートムービーに関して、去年張一鳴氏はこのように語っていました。そして今日頭条は多角的な戦略を講じ、プロ制作のショートムービーを扱う西瓜視頻、ライブ動画とユーザー生成コンテンツに特化した火山小視頻、ユーザー生成のミュージックコンテンツを配信する抖音をそれぞれ打ち出してきたほか、北米のミュージックビデオプラットフォームのFlipagramを買収しました。BATに先んじるため今日頭条はショートムービー全体を掌握する戦略を敷いたのです。
しかしテンセントと百度もショートムービーの分野に注目し、早くから攻勢を仕掛けていました。テンセントは「微視」を打ち出して創業者の馬化騰氏自らも出演しましたが、様々な理由からサービス停止となりました。また百度傘下の愛奇芸も早くに拍拍奇(拍の漢字は口偏がつく)や榴蓮をリリースしましたが、こちらも今では姿を消しています。
しかし、2017年は転換点といえるでしょう。テンセントが快手のリードインベスターとして出資し、ショートムービー共有アプリのQIMをリリースしたほか、微視の復活も考えているとのことです。『財経』によればテンセントは今、新しいムービープラットフォーム構築のために大規模な買収を展開しています。アリババは既存の土豆視頻をプロ制作コンテンツに特化した土豆短視頻に作り変え、百度も百度視頻の中のプロ制作コンテンツを前面に打ち出しています。
BAT以外にも美図傘下の美拍、微博の出資する一下科技傘下の秒拍、小加秀などどれも好調に見えますが、『財経』の報道によれば、微博ショートムービーの唯一のツールである秒拍が「酷燃」へと様変わりすることになっており、激しさを増す競争において微博が先手を打つ形になるかもしれません。
BATや微博、美図といった企業の戦略と比べて、カバー範囲が最も広いのは今日頭条でしょう。今日頭条は西瓜視頻、火山小視頻、抖音、Flipagramというラインナップにより、ショートムービー業界のあらゆる市場を制する構えを見せています。ショートムービーのランキングでは、これら今日頭条の製品は目を見張る成果をあげています。今日頭条はおそらくFacebookのソーシャル戦略を参考にしたのでしょう。ソーシャル製品は形式や内容だけでなく、ユーザーの年齢、地域、文化などで細かく区分されます。わずかな決断の遅れで巨大な市場を逃すこともあり得るのです。この点で失敗したのはテンセントです。もしWhatsAppの買収に成功していたなら、テンセントは今や世界を股にかけるグローバルソーシャル企業になっていたことでしょう。反対に成功した例はFacebookで、Snapchatの買収には失敗しましたがインスタグラムの買収により追随するライバル企業をけん制し、大量のユーザーと広告主の獲得に成功しました。
とはいえ、大手企業の中で最大の未知数はテンセントでしょう。今やテンセントには最大のショートムービープラットフォームである快手が付いているうえ、微信(WeChat)やQQなどのユーザーやコンテンツを他のプラットフォームに流入させたとしたら、今後の構図にどのような変化が生じるのか全く予測がつきません。
静かに高まってきたショートムービーのうねりが、まもなく訪れる激しい嵐を予感させています。激化する競争の中で、いったいどの企業のプラットフォームが一歩抜きんでるでしょうか。

[原文]

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