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中国『618ショッピングフェス』最新対策2025:越境EC企業が成功するためのマーケ戦略とは?

1. 中国『618』ショッピングフェスとは?市場規模と注目の背景

中国の「618ショッピングフェス」は、もともと京東(JD.com)の創業記念日にあたる6月18日に合わせて行われていた社内セールイベントに端を発します。2006年から始まり、数年で大規模セールへと発展。現在ではTmall(天猫)、京東、抖音、小紅書、拼多多などほぼ全ての中国EC・SNSプラットフォームが参加する国家規模の商戦期になっています。

中国語での正式名称は「618购物节(liù yāo bā gòu wù jié)」で、京東主導のため「京东618大促」「618狂欢节」といった呼び方も一般的です。毎年5月下旬から事前予約販売がスタートし、本セールは5月31日夜から開始、6月18日をピークに6月20日前後まで続くのが通例です。

京東の公式サイトでは、毎年5月下旬から「618」関連セールページが順次公開されます。詳しくは京東公式サイトをご確認ください(※期間限定キャンペーンは開催時期のみ表示されます)。Tmall(天猫)や抖音(Douyin)、小紅書(RED)でもアプリ内で「618」関連の特集バナーやセール会場を展開します。小紅書では「618种草」や「618攻略」などの検索タグが人気で、多くのユーザーが事前に購入候補の商品を保存・比較する習慣があります。

2024年の618取引総額は約1.3兆元(約28兆円)にのぼり、これは日本の「楽天スーパーSALE」や「Amazonプライムデー」を合わせた規模を大きく上回ります。さらにライブ配信、SNS口コミ、AIレコメンドなどを活用した販売手法が高度化しており、越境EC企業にとっても戦略的に参入すべき重要イベントと言えるでしょう。

1-1. 618とは何か?「ダブルイレブン」との違い

「618」は、ECプラットフォーム「京東」の設立記念日を祝うイベントとして誕生し、その後アリババや抖音など競合他社の参入によって、EC業界全体の大型販促期へと発展しました。11月11日の「ダブルイレブン(独身の日)」は「中国最大のECセール」として知られていますが、近年では618の成長が著しく、売上ではほぼ肩を並べる存在に。違いとしては、ダブルイレブンが「年末決算型セール」であるのに対し、618は「上半期のトレンド仕掛け型セール」である点が挙げられます。新商品プロモーションやZ世代向け訴求などに活用されやすいのも618の特徴です。

1-2. 2025年の市場予測とZ世代の影響力

近年の「618ショッピングフェス」は取引総額が年々拡大しており、その成長は中国消費市場のダイナミズムを象徴しています。特にZ世代の台頭とともに、ライブコマースやSNS購買の比率が高まっていることが大きな要因です。

以下のグラフは、2018年から2024年までの618期間中における取引総額(京東・天猫など主要プラットフォームを含む推定合計)を示したものです。

取引総額は2018年の約1,600億元から、2024年には約5,100億元(約1.3兆円)にまで増加しており、この6年間で3倍以上に拡大しています。Z世代を中心としたモバイル消費、KOLの活用、AIレコメンドなどがこの急成長を後押ししています。

※出典:京東(JD.com)および天猫(Tmall)公式発表、36Kr、億邦動力などの業界報道をもとに編集部が独自に集計・作成。

1-3. 主要プラットフォーム(Tmall・JD・抖音)の動向

それぞれのプラットフォームには独自の販促文化があります。Tmall(アリババ系)は「ブランド重視」、京東(JD)は「配送と信頼性重視」、抖音は「バズ重視の動画型」と役割が明確に分かれています。日本企業が中国市場で成功するには、出店先プラットフォームに最適化した戦略を設計することが前提条件です。

2. 越境EC企業が準備すべきマーケティング施策

中国市場における618は、単なるセールイベントではなく、越境EC企業にとって中長期的な認知拡大とファン獲得の最大機会です。ですが、「とりあえず出店した」「とりあえず広告を打った」だけでは成果は出ません。特に日本企業が注意すべきは、中国ユーザーの購買判断基準と文化的背景が日本と大きく異なることです。

本章では、プラットフォーム選定、KOL戦略、SNSコンテンツ設計における実務的な注意点や費用感、成功のための施策の具体例を紹介します。

2-1. プラットフォーム別のプロモーション最適化

中国には複数のECプラットフォームが存在し、それぞれに文化と強みがあります。たとえば、Tmall Globalは越境EC向けの旗艦店モデルで、出店には法人登録・商標登録・預託金(約5万〜15万元)などが必要です。出店審査にかかる期間は2週間〜1か月。自社で進めるのは困難なため、代行会社を通じての進出が一般的です。

一方、京東(JD Worldwide)では、配送・物流の信頼性が重視されるため、倉庫体制(中国国内の保税区)との連携が重要になります。キャンペーン期間中に「即日配送可」と表示されることでコンバージョンが倍増することもあります。

プロモーションの最適化には、プレセール(予約販売)・タイムセール・クーポン発行を段階的に活用し、商品露出と「今買う理由」を明確に打ち出す必要があります。

2-2. KOL/KOCとのコラボによる訴求力強化

KOL(Key Opinion Leader)とは中国版インフルエンサーで、カテゴリごとに専門性を持ち、ライブ配信や投稿で大量の購買を生む存在です。フォロワー数50万人〜100万人のKOLであれば、1回のライブ配信で10〜20万元(約200〜400万円)の費用が発生するのが一般的です。

KOL活用のポイントは、単に商品の紹介をお願いするのではなく、商品の文脈やストーリーを理解した「語り手」としてコラボレーションすることです。最近では、KOC(Key Opinion Consumer)と呼ばれるマイクロインフルエンサーによるレビュー投稿が重視されており、1投稿あたり数百〜数千元と比較的低コストで起用可能です。

たとえば、ある日本のヘアケアブランドはKOCを50人起用し、小紅書で実際に商品を試した投稿を展開。結果として618当日の売上が前年比で210%増加しました。

2-3. 小紅書・抖音を活用したコンテンツ戦略

小紅書(RED)は「中国版Instagram+Google」とも言われる存在で、Z世代女性が情報検索と商品選定に日常的に使用しています。ここで重要なのは、ユーザー自身が「体験」として共感・保存したくなる内容にすること。企業目線ではなく、生活者目線で“なぜこれを使ってよかったか”をビジュアル+テキストで語ることが求められます。

一方、抖音(Douyin)はTikTokの中国版で、購買直結型の「ライブ×短尺動画」が中心です。近年では“種草(zhòng cǎo:買いたい気持ちを植え付ける)”を目的に、5秒で惹きつけるサムネイル・商品登場のテンポ感・インパクトのあるリアクションが重視されています。

日本企業の成功例としては、あるコスメブランドが「朝の準備ルーティン」動画シリーズを投稿。抖音内で1万以上のシェア・保存がつき、ライブ配信を合わせて1日で100万元以上の売上を記録しました。

3. 広告・物流・決済インフラの最適化

中国向けの越境ECでは、「売る仕組み」だけでなく、「届ける仕組み」「支払える仕組み」が一体化して初めて成果が出ます。618のような大規模セール時には、広告費の高騰、配送の遅延、決済時のUXトラブルなど、想定以上の課題が発生しやすく、準備不足がすぐにレビューやSNS上で可視化されます。

この章では、広告運用の最新事情、保税区物流の仕組み、アリペイなど中国主要決済への対応など、日本企業が取り組むべき具体的なインフラ整備のポイントを解説します。

3-1. クリック単価の高騰に対応する広告戦略

618直前になると、Tmallや京東、抖音など主要プラットフォームでは広告枠の競争が激化し、クリック単価(CPC)が1.5倍〜2倍に跳ね上がる傾向にあります。したがって、無差別に出稿するのではなく、購買確度の高いユーザー層に絞ったターゲティングと、訴求ポイントの明確なクリエイティブが必須です。

たとえば、小紅書では検索キーワードに連動した広告枠があり、「618必买(必買)」「平价替代」などのトレンドワードに合わせて出稿すると、保存数やシェア率が格段に上がります。さらに、動画型広告(Dou+など)では15秒以内に製品のベネフィットを伝える構成が推奨されています。

日本企業の成功事例として、あるスキンケアブランドは「夜のルーティン」をテーマにした動画クリエイティブを出稿し、クリック率が平均の2.3倍を記録しました。

3-2. 越境物流の選定と配送スピードの最適化

中国では、配送スピードがそのまま「信頼性」と認識されます。特に618のようなセール時には、配送が3日以上かかるとレビュー評価が下がる傾向が強く、これが購入判断にも直結します。

日本から直接配送する「直送モデル」は関税や遅延のリスクが高いため、現在主流なのは保税区(中国国内にある関税保留エリア)に事前に在庫を送り込み、注文後に中国国内から出荷する「保税区直送モデル」です。上海・広州・寧波などが主要拠点で、Tmall・JDともに公式にこのモデルを推奨しています。

物流業者の選定では、返品対応(中文カスタマーサポート)や梱包の質も重視されており、現地と連携できる日本企業向け専門物流会社(例:転送Japan、CNE、Shenzhen 4PXなど)の利用が増えています。

3-3. 支払い手段と中国ユーザーのUX向上策

中国で主流の決済手段は、アリペイ(Alipay)、ウィーチャットペイ(WeChat Pay)、銀聯(UnionPay)です。これらに未対応のECサイトやランディングページは、それだけで「信頼できない」と判断され購入されないリスクがあります。

最近では、ShopifyやMagentoを活用した越境EC構築時にも、Alipay/WeChat Payの接続が可能になっており、クロスボーダー決済代行(例:LianLian、Airwallex、イプシロンなど)を通じた導入が一般化しています。

また、UX改善の観点では、中国語での決済画面、決済後のリアルタイム通知(WeChat経由の自動メッセージ)、さらには顧客情報の再利用許諾設定など、細かな要素が「スムーズさ」「安心感」に直結します。これらのUXが整っていないと、せっかく獲得した顧客もリピートに繋がりません。

4. まとめ:618を活かすための戦略的アプローチ

618ショッピングフェスは、単なる短期的なセールではありません。中国市場で中長期的にブランドを浸透させるための「戦略発火点」と捉えるべきです。この期間に集めた顧客・データ・レビュー・SNS上の反応は、翌月以降の継続施策の“素材”として再利用できます。

本章では、618終了後に日本企業が行うべきファン育成、データ活用、ナレッジ共有の具体策を紹介し、「単発イベント」ではなく「年間戦略の一部」として位置づける視点を提供します。

4-1. 618後も見据えたファン獲得施策

成功企業の共通点は、「売って終わり」ではなく「買ってからが始まり」という視点を持っていることです。たとえば、購入者限定でWeChat公式アカウントへの登録を促すメッセージを送り、以後のキャンペーンや新商品の案内を行うなど、CRM(顧客関係管理)との連動が行われています。

また、小紅書に投稿されたレビューを企業側が再編集・拡散する「UGC(二次活用)戦略」も有効です。実際にある日系ベビー用品ブランドは、ユーザー投稿を組み合わせて「ママの本音レビュー動画」を制作し、618後に抖音広告で活用。CPCが40%低下し、広告ROIが2.8倍に改善しました。

4-2. 成果を最大化するデータ分析と改善運用

618での施策は、売上やPVだけを見て終わるのではなく、再現性ある成功パターンの抽出と、それを社内ナレッジとして共有・活用するプロセスが重要です。

チェックすべき指標は、広告のCTR/CVR、カゴ落ち率、リピート率、レビュー投稿率など。これらを週単位でトラッキングし、特に成果の出たKOLやコンテンツは「再活用対象」として整理しておくと、次回プロモーションの準備期間を大幅に短縮できます。

また、中国現地チーム・パートナーと連携して、レビューコメントや返品理由などの定性データから「改善すべきUX」や「響かなかった訴求」も抽出することが重要です。

4-3. 成功企業から学ぶ2025年のベストプラクティス

2025年の618でも成果を出した日本企業の多くが、「ローカルユーザー理解」を起点に戦略を構築しています。たとえば、ある高級包丁メーカーは中国ユーザーの「ギフト需要」に合わせて、“父の日ギフト特集”として商品を展開。小紅書とJDでの同時キャンペーンを行い、618当日に売上が4倍に跳ね上がりました。

また、ある医薬部外品メーカーは、中国の「成分重視文化」に対応し、有効成分のエビデンス資料を中国語で公開。WeChat経由で資料DL→問合せ→BtoB商談化という流れを構築し、ECを入口としたBtoBリード獲得にも成功しています。

このように、618は単なる「売るイベント」ではなく、ブランド価値を試し、戦略を実行し、データを集めて改善する“実験場”として活用すべきです。

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