7-Eleven商品の研究開発は、そもそも儲けを見越してではなく、社会現象から始まっています。
1. 7-Elevenはなぜ自社製品開発に力を入れているのでしょうか?
2. 日本7-Elevenはなぜ出荷方法を大型コンテナから小型発送へ切り替えたのでしょうか?
3. 日本7-Elevenはなぜサプライチェーンに対して利益を上乗せしないのでしょうか?
本日行われた雲栖大会で、予定通りアリババグループサプライチェーンの中心的組織による新しい小売りサプライヤーたちの特別ショーが開催され、様々な技術者が登場して、そのアイデアや商品を披露していました。その中で、小売業に精通した専門家、上海碓胤管理咨询公司の代表取締役である龚胤全先生が講義した《7-11の優れたサプライチェーン管理》の内容は詳しく的確で、素晴らしい講義でした。
《零售老板内》APP(微信ID:lslb168)としては、講義の内容は7-Elevenのサプライチェーン管理についてにすぎませんが、小売業全般について参考になると感じました。実際に、7-Elevenのサプライチェーン管理業は確実に無印良品、Uniqlo、さらにHLAモールなどの日中の企業へ影響を与え、小売業のあるべき理念ともいうべきひな形を提示しました。その影響力はすでにコンビニエンスストア事業という枠組みを超越していると言えます。
筆者は今回の講義内容の記録から要点を以下のように、小見出しを付け加えてまとめました。参考にしてください。
目次
1、7-ElevenにはなぜATM機の開発が必要だったでしょうか?
内容に入る前に皆様にお聞きしたい、今日来られた方々の多くは小売業の専門家か業主の方々ですが、皆さまは最近のビジネスはうまくいっていますか?ネットショップも実店舗も、上手くいっているという方は挙手を、誰も挙手しませんね、ではみなさん儲かっていますか?儲かっている方は挙手を、お、儲かっているようですね。つまり儲かっている方もいれば、おそらく多くは儲かっていないようですね。そして今現在儲かっている方の多数も、10年前のように楽には儲かっていないことでしょう。
一つのデータをお見せします。日本の7-Elevenのある店舗の売上高は96年をピークとすると、現在はどのくらいでしょうか、半分くらいだと思いますか。日本では経済危機がありましたし、90年のバブル経済崩壊以降、銀行は倒産し、不動産売買業も倒産して、多くの失業者を出しました。それにもかかわらず、7-Elevenの現在の店舗売り上げは96年度の2/3に留まっています。皆さんの店舗、ネットショップの現在の売り上げは最高額の半分もありますか?ないですね、我々中国の経済は日本ほど悲惨な時はありませんでしたが…実際はそんなに悲惨でもないようです。7-Elevenは日本の過去20年間に何をして、経済危機が来た時にどうしたのでしょうか?7-Eleven、Uniqloといったブランドを見てわかるように、一般人にとって衣食は欠かすことができませんし、消費に対してより質の高いものを求めていきます。過去には有名ブランドの商品を追い求めても、永遠に買い続けることはできませんし、だんだんそういった方面を切り捨てていくと、彼らは製造型にチェンジしていくことになります、これこそが、我々が研究する7-Elevenを製造型小売業と呼ぶ所以です。
7-Elevenの60%の商品はオリジナルで、ブランドのタグもありません。自社開発品なので、オリジナルは市場に出回っていませんし、彼らの自社製コーヒーメーカーなどは2年間かけて研究開発されたものです。もしあなたがコーヒーメーカーを買うとき、スターバックスのものと他メーカーのものを比べて、差異がないとしたらどうでしょう、そこで彼らは自分たちで2年間を費やして研究開発を行い、他社との差異化を実現したのです。7-Elevenの戦略とは、消費者が365日24時間いつでもサービスを受けることを可能にする、いうことが大きな目標なのです。
日本におけるインフラとしては、まず彼らは銀行で大行列ができていて、とても不便であることに気が付きました。そこで7-Elevenの開発担当者は、自分たちでATM機を開発・導入することで、この銀行の大行列減少を緩和できないものかと考えました。そこですぐに銀行と提携し、最初は他メーカーのATM機をコンビニ店舗に導入しようとしましたが、そのATM機が大きすぎて設置が難しいことが分かり、それなら自分たちでATM機を開発して、銀行のシステムを使うことはできないものかと提案しました。
彼らはすぐにハードウェア開発に協力してくれる企業を探して開発を始めました。そして大きさは従来の半分にとどめたATM機が開発されたのです。このATM機が設置されて以来、店舗の一日の来客数1000人のうち、実際にお金を引き出しているのは75人ですが、毎日230人がこの銀行サービスを使用しています。
しかし、この75人は手数料以外に、大量の客足を伸ばすことに貢献しているのです。7-ElevenがこのATM機を開発した出発点が、そもそも儲けを見越してではなく、社会現象と消費者の視点であったからです。我々中国の消費における最大の困難は何か、肉や野菜が買えない最大の問題は何か?我々には一級クラスの高級肉は食べられない、よい野菜、無農薬の有機野菜を買うことができない、という問題です。
中国の小売業は4度の革命が起きたという意見がありますが、百貨店、スーパーチェーン、ネットショップ、小売業と分けてみた場合、中国の小売業の本当の革命は2度だと私は考えます。1度目は販売ルート革命であり、百貨店、スーパー、ネットショップなどは販売ルート革命によって変革をもたされたものです。そして2度目がすなわち製造業型革命であり、オリジナルで自由な商品を開発していくことです。これこそが小売業の2度目の革命であるわけです。
我々中国の過去20年間はパターンの革新、販売ルートの革新、商業の変革、プラットフォームの拡大でした。しかしオリジナルを開発しようとする人は少なかった、これが我々中国の悲しいところでした。しかし日本は過去20年間、Uniqloや無印良品などもずっとオリジナル商品を開発してきました、これこそが我々の補うべき学ぶ点です。
2、7-Elevenが増加しつづけるための競争力の核心とは何でしょう?
続いての私の課題は…まずは少し私の紹介をしましょう。私は2005年に先生についていました。先生とは、すなわち7-Elevenの常務取締役CIO碓井誠であります。当時、彼は中国の小売業はアメリカのウォールマートを参考にしているという、とてもおかしな事に気づきました。
我々は今日まだサプライチェーンについて討論をしていますが、実は日本の80年代のサプライチェーンはとても成熟していました。日本7-Elevenは173の工場、150の物流センターを持っていました。それで7-Eleven自身は、顧客を満足させるための商品開発に専念することができました。7-Elevenにとってのライバルは、常に飽和状態にある消費者でした。
彼らは新しい研究を進めていくことで、新商品や新サービスで顧客の倦怠感を打破すること、それこそが彼らの競争力の核心でした。
彼らの影響力はコンビニエンスストア業に留まりません、それはUniqloや無印良品などを含む日本の全ての企業たちが7-Elevenに学んでいるからです。では7-Elevenの先生とは誰でしょうか?それはトヨタ自動車です。彼らは研修を通じてトヨタ自動車から、水道水方式を学びました。トヨタ自動車は、在庫ゼロ、注文に応じての生産、といったまさに水道水方式です…それで7-Elevenの在庫は一年に42回という高速回転を可能とし、商品のほとんどは店舗に並んでいるか、運輸されている途中という状態です。
これは7-Elevenの紹介の一部ですが、最初のころはとても効率が悪かったことが見て取れます。その頃よく売れていたのはモップやほうきでした。そこで彼らはオリジナル商品開発を始めることにしました。以前は、彼らの物流も一箱ずつ店舗へ届けていましたが、その方式では効率が悪いということに気づき、サプライヤーによって個々の小型貨物として届けるようになりました。牛乳は一本ずつ、彼らの物流の大きな改革でした。
彼らはまたITシステムの必要性も早くから認識していました。日本で初めてそのシステムを導入したことで、粗利益は向上、在庫数は減少していることが分かります。2008年のデータを見るとさらに減少しています。彼らが他社に依頼して開発したビールは、その代行業者自身の使う原料よりも良いものを要求しました。また、ハイクラスの小麦粉を使うことで、よりおいしいパンの提供を可能とし、お弁当には最高級クラスの国産米を使用しています。日本では90年代にすでに防腐剤を使用しなくなり、すべて新鮮な製品に切り替わりました。そのため日本の食品は賞味期限が短いのです。私たちはまだ大量の防腐剤を使っているので、賞味期限は長いですね、これはまだ遅れをとっている問題点でもあります。
7-Elevenは創業以来、損失を出さず、ずっと成長を続けています。Uniqloが当時の7-Eleven商品開発担当の責任者にコンサルティングを依頼し、7-Elevenだけが成しえる、オリジナル商品開発のシステムを学ばせてほしいと依頼しました。やがてUniqloオリジナルのプライベート・ブランドのファッションが生み出されました。すべてがプライベート・ブランドです。それゆえに、日本の小売業全体の先生は7-Elevenで、7-Elevenの先生はトヨタ自動車であるといえるのです。
我々の国内の小売業を見てみますと、ファッション業、飲食業、スーパーチェーンいずれも、オリジナル商品の開発に精力を注いでいるとは言えません。無印良品の商品開発は、何を真似るでもなく、日常生活の観点から出発しています。消費者の家で過ごし、見て感じたことをデザイナーが開発に結び付けていけばよいのです。
7-Elevenの営業利益率は7%です。他の大型コンビニエンスストアの同時期のデータと比べてみても7%という数字はずば抜けて高く、他社のおよそ2倍にあたります。GMS大型スーパーチェーンの競争をめぐる変化を見てみましょう、無印良品はもともと西友百貨店傘下のプライベート・ブランドの開発から始まり、オリジナルの生活雑貨店を作り出しました。それが良い結果を生み、現在は独立した企業になりました。
私は今年になって、中国の小売業もプライベート・ブランドを展開し始めていることに気が付きました。まだほとんどがOEMで、まだオリジナル商品はとても少ないです。原料、デザイン、素材、消費者の要求するクオリティを満たすレベルではありません、これは今後の大きな課題となるでしょう。
3、7-Elevenの3つの戦略、背景にはどのようなバリューチェーンがあるのでしょうか?
7-Elevenの価値連鎖(バリューチェーン)を見てみましょう。彼らはとても身軽な企業です。原料、製造工場、物流などのすべてが外注で、自社のものはありません。しかし彼らはこれらの工場などをひとつの事業部として統括し、ひとつの大きな作業場として共同開発を進めています。
7-Elevenはサプライヤーに対して価格を上乗せしていません。7-Elevenはサプライヤーと共同で商品開発した後は、それを加盟企業に売り込みます。もし加盟企業からの注文を取り付けることができれば、そこでサプライヤーにお金が入りますが、もし注文が取り付けられない場合は失敗であり、それまでの投資はすべてサプライヤーが負担することになります。
この方式はのちにUniqloにも取り入れられ、中国のHLAもまた取り入れています。
加盟店を見てみましょう、粗利益の55%は加盟企業に、45%は彼らの本部へとなっています。それゆえ彼らは共存し、同じ価値のもとでともに発展していく利益共同体であるわけです。
日本の小売業界は今までに3つの市場がありました。1つは売り手市場、2000年以降は消費者が価格に関わってくるようになってきました。例を挙げてみましょう。朝、今日はお昼にあれを食べようと考えていても、お昼にはお店に行くと考えが変わることがありますね、例えば、店舗側が事前にサンドウィッチの売れ行きがよいことが分かっている場合、朝の売り場はサンドウィッチを主役に売り出していきます。そして夜にはまたほかの商品を主役にしてディスプレイしたりするのです。このように売り出していくことで、消費者の心を掴み、真冬でもアイスクリームを売ることが可能となるのです。
誰が想像しえたでしょうか…寒い冬に、アイスクリームなんて。でも、7-Elevenの商品開発担当者が現れて、冬にもアイスクリームがあるんですよと言われたら試さずにはいられないでしょう。彼らの商品開発の根源には、いろいろなものを味わってみたいという、消費者の飽くなき潜在的な要求があります。誰かが教えたわけでもなく、ましてやライバル相手だけを見ていては生み出せない発想です。そう、彼らは消費者を見て研究し続けているのです。
さあ、7-Elevenの3つの戦略を見てみましょう。
1つ目は、消費者の視点で、彼らの購買代理者であること
2つ目はオリジナル商品に力を注ぎ、消費者の要求に応えること
3つ目は消費者の要求を理解し、連動すること
私たちの要求はとてもシンプルです、中国もこれらの課題を解決できるなら、小売業界はもっと発展していくことでしょう。中国の小売業が海外へ進出しても、今の体制が変わらない限り、海外で店舗を構えるとは不可能です。
中国ではまだオンライン・ツー・オフラインや実店舗、無人店舗のことなどを論議しあっていますが、私はそんなことに意味はないと思っています。
私たちにとって消費者にオリジナル商品を提供することこそが重要であり、商品棚であれコンビニ店舗であれ、喜びをもって消費者の問題を解決していかなければなりません。消費者にもっと目を向けて、オリジナルの商品とサービスを開発していくべきなのです。そうすれば、たとえあなたが小さな金物屋さんであったとしても、ウォルマートに対抗することだってできるのです。
4、7-Elevenのプラットフォーム方式は、どのように提携企業を優れたサプライチェーンに参画させていったのでしょうか?
これは7-Elevenの加盟方式ですが、粗利益の55%は加盟企業へ、45%は本部へとなっています。
最初は加盟店が、加盟費用の半額を負担しており、そのため彼らは夏になっても、節約のためクーラーを使えない状況でした。それを7-Elevenが知ってから、すぐに加盟費の80%を7-Eleven側が負担することに切り替え、加盟店は夏もクーラーが使えるようになりました。彼らは、開発した商品が新鮮で、消費者の心をキャッチすることさえできれば、セールスも伸びて、収入は自ずと増えていくものだと気づかされたのです。
これが7-Elevenのプラットフォーム経営で、それ以降も絶え間なく様々なサービスを開発しました。水道・電気・ガス代の公共料金支払いシステム、宅急便の手続き、オンラインでの申し込み、現在では所得税の納入までが、日本ではすでに実行されているインフラなのです。
アリババグループも間違いなくインフラを提供する企業です。支付宝(Alipay)というシステムは、国内の病院の大行列を見て開発されたものです。(アリババグループの創始者で取締役会長)馬雲先生が儲かるかどうか、ということだけを考えずに開発されたのです。病院の大行列だけではなく、こういった社会現象に、まだたくさんの問題点があることに彼は気づいています。
アリババが投資した「盒马鲜生」を見ても分かるように、技術だけ、または業務だけを改革してもだめです。
「盒马鲜生」の商品はとても新鮮です。始めから終わりまで商品、サービスすべてを供給する技術が向上しており、ひとつの理想形を見ることができます。これこそが競争力の核心となるところで、また表面上のデータなどを見るだけではわからないことなのです。
これは7-ElevenのサプライチェーングループMDの商品開発体制です。すべてのサプライヤーと共同開発を進めますが、これらのサプライヤーはみな自社のために開発を行います。なぜなら、もしちゃんと開発しなければ、商品は売れず7-Eleven側もお金をくれませんし、最終的に困るのは自分たちです。必ず売れる商品でなくてはいけません。結果として自社のためになるわけですから、これらのサプライヤーたちはますます商品開発に力を注ぐようになります。この体制にはこういった長所があるわけです。
このプラットフォームは全体の60%ですが、売上高はすでに70%を超えています。サービス売上額が商品売買の売り上げを超えています。サービス売り上げがおよそ4万円とすると、商品売り上げが4万円を少し上回るくらいで、総額は8万円以上になります。7-Elevenは間違いなく小売業者ではなく、製造型小売サービス業であると言えます。
これは7-Elevenの精鋭サプライチェーンが研究する課題です。お話ししていきましょう。
第一に、店舗サプライチェーンの標準化、自動化です。今やすべての設備がシステム化され、すべての在庫もリアルタイムで、いつ完売したかなども分析することができます。例えばお弁当が12時に完売するか、1時に完売するか、この違いがわかるでしょうか?彼らはこの時間の違いをきちんと分析します。これこそが商品管理なのです。
特に発注の時は、彼らは過去4週間の状況を分析してから発注内容を決めます。私たちがスーパーへ行って選んだり、ケータリングをたくさん注文したり、またはオンラインで注文したりするのは、どれも10分くらいで済む発注ですね。
彼らの発注は2人から3人で行います。もしオフィスビルに彼らの店舗があったとすると、まずそこにいくつの会社が入っているのか、それぞれ何人くらいの規模か、どんな食事をとるのかなど、各スタッフが2時間ほど、じっくり分析します。これらはすべてITシステムの中にデータとして記録され、非構造化データと呼ばれます。彼らは毎日、発注を分析することができます。人が賢いというより、このITシステムがとりわけ優れているのです。7-Elevenは90年代に、第一代目IPADと言われる機器をすでに開発していました。もちろん完全なオリジナルで自分たちの手で研究開発したものです。
第二に、サプライチェーンのアップデートニュースや情報の収集です。ここでは情報共有を行います。本部の指令を実行しない店舗があった場合、指令を実行した内容が本部にフィードバックされません。そのフィードバックされなかったという事実を彼らはキャッチします。もし付近で大きな展示会などが開催されていれば、その展示会の内容から、店舗でどんなものが売れるかを分析して、たくさん発注するように店舗に通知したりもします。
そのため、7-Elevenの店舗監督の担当者は、ただの監督ではありえないのです。我々のほとんどは、まだ店舗の環境が良いか悪いかを見るだけにすぎません。
第三に、商品開発から店舗販売までのサプライチェーンのクローズドループです。
第四に、サプライヤーのシステム支援と生産管理です。この両者は完全に同期していなければなりません。彼らは90年代にはこの仕組みを完成させており、現在はもう研究していません。
第五に、共同サプライチェーン内での、サプライヤー情報の共有です。桃をよりおいしく食べる方法を知っていますか?彼らの開発担当者はこれについて研究し、その結果をすぐに店舗に知らせました。そして店舗では消費者に、商品を通じて桃を凍らせると最も栄養が豊富になることを知らせたのです。これこそが価値伝達と言えるでしょう。
ここに7-Elevenとウォルマートの比較を作ってみました。7-Elevenは典型的な製造型小売業ですが、ウォルマートは卸売り型セールス代理会社です。両社の方式は異なりますし、もちろんサプライチェーンも異なります。ウォルマートは商品の補充には、ビッグデータから自動的に再入荷していきます。
ですからアリババの新しい小売業は、IT技術と、DT(Data technology)のビッグデータドライブ業務の変革が、かつてないほど重要になると私は考えています。
7-Elevenが私の目標というわけではありません、7-Elevenに学ぶことで、今後より優れた管理体形が生み出されることを願ってやみません。