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阿里巴巴(Alibaba/アリババ)と腾讯(Tencent/テンセント)の泥沼バトルの先にあるのは?

淘宝(タオバオ)のアフィリエイトが騒ぎの発端

淘宝(タオバオ)でのアフィリエイトは中国では非常に広く行われていて、多くのネットユーザーが副業として数百元から数千元の小遣い銭を稼いでいると言われています。これは淘宝(タオバオ)や天猫(T-mall)で売られている商品をブログや微信(WeChat)、QQなどで宣伝して、自分の宣伝を通じて商品が売れたら一定の報酬を得るという仕組みで、「淘宝客」と呼ばれています。「淘宝客」を運営するのは、阿里巴巴(Alibaba/アリババ)傘下の阿里媽媽(Alimama/アリママ)という広告プラットホームです。

アフィリエイトリンクがブロックされた?

最近、微信(WeChat)やQQに貼られる「淘宝客」のアフィリエイトリンクが開けない現象が起きていると一部のネットユーザーから指摘されていたのですが、2017年5月21日、ついに阿里媽媽(Alimama/アリママ)が「微信(WeChat)公式アカウント」で、「淘宝客が微信(WeChat)やQQで正規の方法で行っているリンクによるプロモートがブロックされ開くことが出来ない。このような現象に遭ってしまったアフィリエイターには、微信(WeChat)やQQにクレームを申し立てるよう提案する」というコメントを発表し、大きな話題になりました。実際には以前からリンクのブロックは始まっていて、現在でも全てのリンクがブロックされているわけではなく、完全なブロックを実現するまでには少し時間が必要なようです。これまでは、微信(WeChat)やQQに貼られたリンクをクリックするとその商品を販売している出店者のところに移動し、ショッピングができたのですが、現在ではそのリンクを一旦コピーしてブラウザーのURL欄に貼り付けて移動するか、一種の暗号のようなテキストを利用するしか方法がなくなっています。このような事態は「淘宝客」のアフィリエイターにとっては成果報酬を得る際の障壁になるわけですから無関心ではいられません。

    やられたらやり返す バトルは繰り返される

    これまでにも、阿里巴巴(Alibaba/アリババ)と腾讯(Tencent/テンセント)との間にはお互いを意識したバトルが何度もありました。腾讯(Tencent/テンセント)側の微信(WeChat)の勢力がまだ十分大きくなかった頃は、阿里巴巴(Alibaba/アリババ)の側が、微信(WeChat)から淘宝(タオバオ)の商品やショップへのリダイレクトを無効化したことがありました。2013年11月には阿里巴巴(Alibaba/アリババ)側が、微信(WeChat)上のリンクから淘宝(タオバオ)へアクセスしようとすると、強制的に淘宝(タオバオ)のモバイルアプリをダウンロードする画面へ遷移するようにしたのです。しかし、微信(WeChat)が多くの利用者を得るようになると、今度は微信(WeChat)の側が淘宝(タオバオ)へのリダイレクトを無効化するように変わりました。2015年3月には、腾讯(Tencent/テンセント)側がブロックを行い、微信(WeChat)上の天猫(T-mall)や淘宝(タオバオ)へのリンクをクリックすると、「阿里巴巴(Alibaba/アリババ)では微信(WeChat)からの閲覧をブロックしています」というメッセージを表示させる措置を採りました。この措置に対して、阿里巴巴(Alibaba/アリババ)側は「微信(WeChat)のショッピングの安全上の問題を解決するよう希望する」というコメントを出し、これを受けて腾讯(Tencent/テンセント)側では仕様の変更を行いました。2017年3月には、「淘宝客」アプリのアップデートが行われ、微信(WeChat)やQQからリダイレクトが可能になっていたのですが、それから3カ月も経たないうちに今度は微信(WeChat)とQQのアプリがアップデートしたことで、「淘宝客」のアフィリエイトリンクが開けなくなるという今回の事態に至ったのでした。

    このバトルを問題視することはないという意見も

    微信(WeChat)と淘宝(タオバオ)の間では、これまでにもアプリのアップデートの度に支付宝(Alipay/アリペイ)が微信(WeChat)で使えなくなったり、天猫(T-mall)や淘宝(タオバオ)で微信支付(WeChat Pay)が使えなくなったりと、泥沼バトルが繰り広げられ、何かと話題になってきました。しかし、このようなバトルは正常なビジネス上の競争であって、過去には阿里巴巴(Alibaba/アリババ)と百度(Baidu /バイドゥ)との間にも似たような争いがあったし、腾讯(Tencent/テンセント)の動きも阿里巴巴(Alibaba/アリババ)の動きもいずれも間違ったことをしているわけではない、という意見もあります。

    2017年バトルはますます激化する

    従来は阿里巴巴(Alibaba/アリババ)はEコマースの領域、腾讯(Tencent/テンセント)はゲームやSNSの領域と棲み分けが出来ていたのが、両者の業務範囲が拡大するにつれ、互いの業務が重なり合い、衝突が生じているのです。今両者が特に激しく争っているのが、Eコマースとモバイルペイ、金融、クラウドサービスの分野で、2017年には両者が衝突する領域はさらに増えると予想されています。両者が単にシェアを争うという段階はもはや過ぎ去り、互いに生きるか死ぬかの生存を賭けた争いの段階に入っているという分析もあるようです。

    阿里巴巴(Alibaba/アリババ)は頭打ち?

    阿里巴巴(Alibaba/アリババ)と腾讯(Tencent/テンセント)とが中国最大のプラットホームである状況は2017年も続くでしょう。阿里巴巴(Alibaba/アリババ)の握るトラフィックやユーザーは、商品を購入したいという動機に基いて行動しているので、ユーザーがプラットホームに向かう目的は単純で、商品購入後どこか他のプラットホームに流れるという動線を形成しにくいと言えます。それに対し、腾讯(Tencent/テンセント)の場合はプラットホームへのアクセスは社会的なコミュニケーションが動機なので、最初の目的であるSNSというプラットホームからニュースやゲーム、ショッピングなど他のプラットホームに向かわせることが容易で、「見込み客」から「購入客」へのコンバージョン率も高くなるといえます。

    「ソーシャルコマース」への転換が進む?

    このようにインターネットのプラットホームにとってはトラフィックとユーザーの争奪こそが勝利の鍵になるのですが、ネットユーザーやEコマースの出店者らが阿里巴巴(Alibaba/アリババ)と腾讯(Tencent/テンセント)との争いに巻き込まれ、翻弄されているのは事実です。しかし争いが収まるのをただ待つだけかというとそうでもなさそうです。Eコマースの出店者らにとっても、トラフィックが売上の鍵となるという意味で重要です。もし阿里巴巴(Alibaba/アリババ)と腾讯(Tencent/テンセント)との争いが激化し、両者が覇権争いに没頭し、淘宝(タオバオ)の出店者やSNSのユーザーを顧みないようなことが続くと、淘宝(タオバオ)の出店者がソーシャルメディアとEコマースを組み合わせて販売促進を行うようになり、「ソーシャルコマース」への転換が進むという予測もされているようです。

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