インバウンド

アパホテル問題、中国観光局のボイコット呼び掛けから見えたチャイナリスクの意味

アパホテル炎上問題からリスク管理を考える

日本のホテルチェーン・アパグループが運営するアパホテルの問題が中国はもとより日本国内でも話題になり大きな波紋を読んでいます。事件の発端はご存知のとおり、アメリカ人と中国人を名乗る2人が2017年1月15日に、アパホテルの客室に置かれていた同グループの元谷外志雄代表の著書「本当の日本の歴史 理論近現代史学Ⅱ」について、中国版Twitter「微博(Weibo/ウェイボー)」に、「中国人はこの事実を知った上で宿泊するかどうか決めるべき」というコメントと動画を投稿したことから始まりました。そしてこの動画の再生回数がわずか2日間で6800万回を超え、シェアは60万以上、「いいね」は32万以上、コメントは2万9000以上も投稿されたのです。投稿の中には「客観的なリポートをありがとう」とか「このホテルには泊まらない」などの声が寄せられているようです。「人民日報」国際版の「GlobalTimes(環球時報の英語版)」の報道では、中国の大手旅行会社がアパホテルの予約受け付けを停止したそうです。また、アパホテルの公式サイトがダウンしてしまい、ネット上からは予約ができない状態が続いているようです。ここでは、この騒動から読み取れる対中ビジネス的な視点でのリスク管理について考えてみたいと思います。

発端は1本の投稿からだった

今回の騒動は、微博(Weibo/ウェイボー)への動画投稿がきっかけでしたが、投稿者に「未必の故意」の意識があったかどうかはここでは議論はしません。しかし、その発端は「1本の投稿」というごく小さな偶発的な出来事であり、今後も似たような騒動が起こらないとは限りません。ですから、中国とのビジネスに従事する立場にある人は、常にこういった「リスクの必然性」を意識しながらビジネスを展開することが求められるでしょう。特に微博(Weibo/ウェイボー)に動画投稿機能が追加されたことで、KOLの活躍と同様、より生々しいリアリティのある情報伝達が可能になっていて、それもこれまで以上に情報が急速に伝播する要因のひとつになってきているのです。では対中ビジネスを展開する日本の企業家が心に留めておかなければならないこと、それはどのようなことなのでうしょうか?

「チャイナリスク」は不確定要素?

まず「中国をどのように見るか?」ですが、教科書的な定義ですが、「中国は敵ではなく友人なのですが、かといって日本を手放しで賞賛したり、日本に肩入れしてくれる味方ではない」という認識が必要です。また、日中両国は地勢的には海を隔てて隣り合うという動かしようのない位置関係にあります。経済的にも中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、中国への国別の直接投資額では日本は第3位であり、中国への進出企業数は第1位です。このように、日中間の経済関係は緊密かつ相互依存的となっていて、将来もその関係は変わらないでしょう。ですから、日中両国は将来に向けて永遠の友好と平和な関係の構築に向かわざるをえないのです。日中相互の経済活動の発展も、友好的で平和な両国関係があって初めて成立します。しかし忘れてはならないのは、過去に日本は中国を侵略し、多くの災いをもたらした事実があることは否定できず、両国間の友好にはわれわれ日本側は特に気を使い、常に慎重であることが求められます。日中間で問題が起きると、すぐに政治・外交カードが「経済」に優先して切られたり、政経不可分の原則が往々にして全面に押し出されるイメージがあります。そして、それが日本側からは、不確定要素としての「チャイナリスク」と受け止めらている傾向がありますが、実は全く捉えどころのないものとも言い切れないのです。

日中間の「3つのT」を理解する

中国には、日中関係で譲れない3つの原則があります。それは「3つのT」と呼ばれるもので、「Taiwan」(台湾問題への干渉)、「Territory」(領土問題)、「Textbook」(教科書問題、歴史認識)の3つです。「3つのT」は日本にとっての「チャイナリスク」の特殊性でもあるので、中国との付き合い方をわかりにくくしてしまっている側面もあるのですが、中国と関わるビジネスを展開する企業はこの「3つのT」を深く理解し、その上で慎重な言動が求められます。今回のアパホテルの問題は、この「3つのT」のうちの、日本の民間企業が引き起こした「Textbook」の問題に属すると言っていいでしょう。一般論ではありますが、この「Textbook」問題では中国の人たちの感情を刺激し傷つけることにはなりますが、実利的な意味での利害得失は起こってきません。ですから、原則的には国家間の外交問題にまで発展したり、日中間の経済活動が断絶するという段階まで発展するとは考えにくいのです。しかし、これが「Taiwan」や「Territory」の問題になると、中国当局としては国の主権に関わる問題として捉え、外交攻勢をかけたり、経済制裁や民間レベルでの交流活動の停止まで発展することが起こってきます。今回のアパホテルの騒動に対する中国側の反応がどうであったかというと、中国国家観光局が1月24日に、外国旅行を取扱う業者や旅行予約サイトにアパホテルを利用しないよう求めました。そして、アパホテルの関連広告の取り下げを求め、さらには、旅行客にも利用を控えるよう呼びかけています。また、中国外交部報道官が、「日本の一部勢力が歴史に直視することを拒否するのみならず、否定と改ざんまで企てている」というコメントを発表しましたが、だからアパホテルにどうしろとまでは言及していません。日本では「日本の一企業の問題に政府が口を挟むのはどうよ?」という論調も見られますが、アパホテルへの対応は、あくまでも民間の旅行業者や中国の国民に下駄を預けている(判断を任せている)ことからみても、この問題を中国当局が3つ目の「T問題」と捉えて反応していると見てよいのではないでしょうか。ただ、注意すべきは中国の消費者には、この「3つのT」の間には段階的な対応の差はなさそうです。

安全と水はタダだった日本側の抱える課題

日本側には、中国ビジネスのリスクの特徴や日中の文化の違いに対する認識不足があると言われています。日本人特有の「リスクに対する認識」の甘さ、リスクの兆候を読み取る意識の欠如などの問題も指摘されています。「3つのT」の意味をきちんと理解せずに、不用意な発言や行動をとってしまうのは絶対に避けるべきでしょう。また、中国で何が起こっているのかを正確に把握することは非常に重要です。特に中国の微博(Weibo/ウェイボー)には日ごろからアンテナを張っておくべきでしょう。中国で起きた問題が日本で報道されて、ようやく事態の重大さを知るのでは対応としては遅すぎます。迅速な状況の把握があってこその適切な対応です。一刻を争う状況なのに、中国の出先から日本国内に伺いを立てていて、そうこうしているうちに対応が後手に回ってしまうケースも見られるようです。

迅速な対応の取れる体制が求められる

これは中国のSNSに限ったことではありませんが、ネット上で炎上してからようやく対応するのでは多くの場合手遅れで、対応が早ければ、場合によってはネガティブな情報であっても、いわゆる「神対応」で、トラブルの発生を逆に自社のアフターサービスや顧客重視のPRにつなげることも可能になります。そのような対応を可能にするには、中国現地に広報とリスク管理部門を置いたり、また、中国国内のメディアやSNSのオピニオンリーダーと見られる人たちの関係構築まで構築できればそれが理想的なのでしょうが、そのような体制が取れなくても、自社のブログのファンや協力者などとの関係を日ごろから構築しておき、いざという場合のスピーディーにリスク対応ができるルートを確保しておくことは有効でしょう。最低でも日ごろから、企業情報や商品情報あるいは企業活動に、中国の消費者にとって「よき隣人である」あるいは中国にとって「よき企業市民」であるというメッセージを込めて、情報の発信をし続けるということも非常に重要なことだと思われます。

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