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<中国No.1>火鍋チェーン海底撈のビジネス戦略と世界進出成功の秘訣



海底撈(ハイディラオ)の成功とビジネスモデル

はじめに

海底撈(ハイディラオ)は、中国の火鍋チェーンとして世界的に知られ、急成長を遂げています。特に近年、日本市場でも注目度が高まっており、多くの顧客から支持を集めています。

本記事では、海底撈がなぜこれほどの成功を収めることができたのか、そのビジネスモデルや成功要因、中国での歴史や他の火鍋チェーンとの違い、さらには上場の経緯について詳しく解説していきます。

【1】海底撈とは?—会社概要とブランドの誕生

創業者の張勇(チャン・ヨン)が1994年に四川省の成都で創業した海底撈は、もともとは小さな火鍋店でした。創業当初から、海底撈はお客様に特別な体験を提供することを重要視しており、スタッフの細やかな気配りや顧客サービスを徹底的に重視していました。

その後、顧客の口コミや高い評価を得て、海底撈は急速に店舗数を拡大し、2018年9月26日に香港証券取引所(HKEX)に上場しました(株式コード:6862.HK)。さらに2022年には、もともと海底撈の一部だった特海国際が独立し、同じく香港証券取引所に上場しています(株式コード:9658.HK)。

特海国際は現在、海外市場での事業運営を担う独立した企業として成長を続けており、世界で3番目に大きな中華料理ブランドであると同時に、国際市場においては中国最大の中華料理ブランドとなっています。

2025年現在では、中国本土に1,332店舗、香港・マカオ・台湾に23店舗、海外ではアジア、北米、ヨーロッパなど13カ国に合計73店舗を展開しています。

日本においては、東京、大阪、千葉、神奈川など主要都市に合計7店舗を展開しており、特に都市部の若年層やビジネス層から人気を博しています。高品質な食材と独特なサービススタイルにより、日本市場でも存在感を増しています。

【2】海底撈の歴史:中国での成り立ちと他の火鍋店との違い

小さな火鍋店からスタート

海底撈(ハイディラオ)は、1994年に四川省の省都である成都で小さな火鍋店として誕生しました。創業者の張勇(チャン・ヨン)は、資金や特別な技術もない中でのスタートでしたが、「顧客が求める以上のサービスを提供する」という考えを貫き、徐々に口コミで注目を集めるようになりました。

開業当初から、顧客への気配りやスタッフの心地よい接客態度を徹底しており、「食べる体験」だけではなく「過ごす体験」を提供するという斬新なコンセプトが話題となりました。

他の火鍋店との違い—「極めて高いサービス精神」

当時の中国の火鍋店は、サービスを重視していない店舗が多く、単に食事を提供するだけというスタイルが主流でした。その中で海底撈は、お客様が待っている間に無料の飲み物やスナックを提供したり、待ち時間を楽しめるようなゲームやネイルサービスを提供したりと、他とは全く異なるサービスを展開していました。

また、食事中もスタッフが顧客の好みに細やかに配慮し、味や辛さを調整したり、食材の新鮮さを徹底的に追求したりと、「お客様の満足感」を何よりも重要視した運営を続けました。このような顧客第一の徹底したサービスが差別化要素となり、多くのリピーターを生むことになりました。

アルバイトからCEOに—海底撈の人材登用エピソード

海底撈の人材活用は、他のチェーン店には見られないユニークなエピソードも数多くあります。その中でも有名なのは、現在CEOを務める楊利娟(ヤン・リージュエン)氏のエピソードです。

楊利娟氏は1995年、17歳でまだ1店舗しかなかった海底撈にアルバイトとして入社しました。当時は配膳スタッフという最も基本的な役割からのスタートでしたが、彼女の勤勉さと高いサービス精神を見込んだ創業者の張勇氏が、徐々に重要なポジションへと引き上げました。

長年にわたって会社のあらゆる部署で経験を積み、ついにはCEOに抜擢された楊利娟氏の存在は、海底撈の「従業員を大切にし、能力を正当に評価して昇進させる」企業文化を象徴する出来事となりました。

急成長を支えた革新的サービス

海底撈は店舗数を着実に増やし、中国全土で話題となりました。その背景には、スタッフへの積極的な教育研修制度や明確なキャリアパスを提供するなど、スタッフが自発的に最高のサービスを提供できる仕組みを整えていたこともあります。

このような革新的なサービスと徹底した品質管理によって、他の火鍋店とは一線を画すブランドとして中国全土で確固たる地位を確立しました。

【3】海底撈の上場とその成長

2018年 香港証券取引所に上場

海底撈は、2018年9月26日に香港証券取引所(HKEX)に上場を果たしました(株式コード:6862.HK)。この上場は中国の飲食業界においても大きな注目を集め、企業としての信頼性やブランド力を一段と高める重要な節目となりました。

上場時の公募価格は1株あたり17香港ドル(約323円)でしたが、市場からの評価は非常に高く、取引初日には株価が2倍以上の38香港ドル(約722円)まで高騰しました。この成功により海底撈は莫大な資金調達に成功し、国内外での新規出店やサービス改善に向けての投資を加速させました。

※換算レートは1香港ドル=19円として計算(参考値)

2022年 特海国際の独立と上場

さらに2022年、海底撈の海外事業部門を担っていた特海国際が独立し、同じく香港証券取引所(HKEX)に上場しました(株式コード:9658.HK)。

特海国際は、海外市場における海底撈ブランドの運営や火鍋ベース製品の製造・販売を行う企業であり、現在では世界第3位の中華料理ブランド、国際市場では中国最大の中華料理ブランドとしての地位を確立しています。

上場の意義とその効果

二度にわたる上場は、海底撈グループにとってブランド力の強化のみならず、財務基盤の強化や企業価値の向上という面でも非常に大きな意義を持ちました。

特に資金調達が容易になったことで、世界各地への積極的な店舗展開、テクノロジーを活用した店舗運営の効率化、そして従業員の教育研修制度のさらなる充実などが可能となり、グループ全体の成長を加速させる結果となりました。

【4】海底撈の海外進出—グローバル展開の成功事例

積極的な海外市場への進出

海底撈は、中国国内での成功を基盤として、積極的に海外市場への進出を推進しています。現在、アジア、北米、ヨーロッパを中心に13カ国以上で73店舗を展開し、各地で高い評価を得ています。

特にシンガポールやマレーシアなどの東南アジア市場では早期に進出し、現地の食文化や嗜好に合わせたサービスを提供したことで、大きな成功を収めました。

現地化(ローカライズ)戦略の徹底

海底撈の海外進出における成功要因の一つが、徹底した現地化(ローカライズ)戦略です。例えば、アメリカ市場では比較的辛さを抑えたマイルドなスープを提供したり、東南アジア市場では地元の食材を積極的に取り入れたりするなど、各地域の文化や食習慣に柔軟に適応しています。

また、海外の店舗においても、海底撈ならではの顧客サービスを維持しつつ、現地のスタッフに対して十分なトレーニングを行い、質の高いサービスを提供できるよう徹底しています。

特海国際による海外事業のさらなる強化

海底撈の海外進出は、2022年の特海国際の独立および上場により、さらに戦略的に進化しています。特海国際が担う海外事業の専門性が高まったことで、ブランドとしての国際的な競争力を強化しています。

現在、特海国際は国際市場において中国最大の中華料理ブランドとしての地位を確立しており、海底撈ブランドはますます世界的な認知度を高めています。

日本市場での展開

日本市場においても、東京、大阪、千葉、神奈川といった主要都市に7店舗を展開しており、高品質な食材と独自のサービススタイルで多くの日本人消費者の支持を集めています。特に都市部の若者やビジネスマン層に好評で、日本国内でも着実に知名度を高めています。

【5】海底撈のビジネス戦略の今後の展望

競争激化への対応と差別化戦略

飲食業界の競争が世界的に激しくなる中、海底撈はさらに明確な差別化を図ることが求められます。顧客に寄り添った高品質なサービスを維持しつつ、新たな付加価値の創造が鍵となります。今後は、健康志向のメニューや環境に配慮した店舗運営など、時代のニーズに応える施策を積極的に導入していくと考えられます。

テクノロジー活用による店舗運営の効率化

海底撈はすでにテクノロジーを活用した店舗運営に積極的ですが、今後はさらにAIやロボティクスなどの先進技術を活用した効率化が予想されます。これにより、人手不足問題の解決だけでなく、顧客満足度のさらなる向上やコスト削減を実現する可能性があります。

また、オンライン予約システムやスマートオーダーなどデジタルプラットフォームの充実を図り、顧客との接点を拡大し、利便性を向上させることも期待されます。

海外市場でのさらなる拡大

海底撈は特海国際と連携しながら、海外市場でのさらなる拡大を目指しています。特に欧米市場や新興国市場など、これまで未開拓または規模が小さかった地域への積極的な進出が見込まれます。各市場での成功体験をもとに現地化戦略を深化させ、グローバルブランドとしての地位を確立していくでしょう。

人材育成と企業文化の強化

海底撈が今後も継続的に成長するためには、従業員の教育研修制度のさらなる強化と、スタッフのモチベーションを高めるキャリアパス制度の整備が重要です。アルバイトからCEOにまで登りつめた楊利娟氏のような例が示すように、従業員が成長し、能力を発揮できる企業文化の醸成が重要なポイントとなります。

海底撈の今後の展開は、飲食業界だけでなく、顧客サービスやビジネスモデルに関心のある多くの企業にとって重要な指標となるでしょう。

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