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新媒体プラットフォームの影響力とユーザーの動向
中国のインターネット市場は急速に成長し、多様化しています。特に新媒体プラットフォームは、ユーザーとのインタラクションが強化され、個別化されたコンテンツの需要が高まっています。中国のネットユーザーは、情報収集やエンタメだけでなく、ライフスタイルに密接に関わるコンテンツを求めており、企業やブランドにとってもこのトレンドに対応することが重要です。
中国の新媒体プラットフォームは、情報消費のスタイルに革新をもたらし、ユーザーの関心を集めるコンテンツの形態も進化しています。特に典型的な代表として、抖音(Douyin・中国版TikTok)、微博(Weibo・ウェイボー)、小紅書(RED)、快手(Kuaishou・かいしゅ)、哔哩哔哩(Bilibili・ビリビリ)などのプラットフォームは、各々が独自の特徴とユーザー層を持ち、企業やブランドにとってはターゲットマーケティングを行う上で欠かせない存在となっています。本記事では、中国のモバイルインターネット業界に関するデータとインサイトを提供するリサーチ会社「QuestMobile(クエストモバイル)」の統計データを基に、これらのプラットフォームがどのようにユーザーのニーズを捉え、どんなコンテンツが支持されているのかを探ります。
中国新媒体プラットフォームの成長分析:ユーザー数の推移

抖音(Douyin・中国版TikTok)の成長を牽引
2022年から2024年にかけて、抖音(Douyin・中国版TikTok)の月間平均アクティブユーザー数は着実に増加しています。2022年1-10月の6.88億人から2024年1-10月には7.86億人に達し、その成長幅は顕著です。この成長は、若年層を中心としたユーザー層と、エンターテイメントコンテンツの多様化が要因と考えられます。特にショート動画の人気が高まり、広告収益の増加に寄与しています。
微博(Weibo・ウェイボー)の安定した成長
微博(Weibo・ウェイボー)は、2022年から2024年にかけて着実に増加していますが、成長率は抖音(Douyin・中国版TikTok)に比べてやや緩やかです。2022年1-10月の4.79億人から2024年1-10月には4.86億人へと微増しています。これは、微博(Weibo・ウェイボー)のポジションが「ニュースと情報発信」に特化しているため、特定のジャンルに依存したユーザー層のニーズを反映している結果といえるでしょう。
快手(Kuaishou・かいしゅ)の成長鈍化
快手(Kuaishou・かいしゅ)は、2022年1-10月の4.21億人から2024年1-10月には4.39億人に増加していますが、その成長は他のプラットフォームに比べて鈍化していることがわかります。この変化は、抖音(Douyin・中国版TikTok)との競争や、新たな差別化要素の必要性が影響していると考えられます。
哔哩哔哩(Bilibili・ビリビリ)の堅実な成長
哔哩哔哩(Bilibili・ビリビリ)は、特にオタク文化や若者文化に強い影響を持つプラットフォームとして着実にユーザー数を増加させています。2022年1-10月の1.89億人から2024年1-10月には2.16億人に達し、安定した成長を遂げています。新しいコンテンツの導入とコミュニティ重視の戦略が功を奏しているといえます。
小紅書(RED)の急成長
小紅書(RED)は、特に若年層と女性ユーザーに強い人気を誇り、2022年から2024年にかけて急速に成長しています。2022年1-10月の1.62億人から2024年1-10月には2.14億人に増加し、その成長率は目覚ましいものがあります。EC機能とインフルエンサーコンテンツの組み合わせが、他のプラットフォームとの差別化要因となっていると考えられます。
高価値ユーザー規模と占有比率の比較分析:新媒体プラットフォームにおけるユーザー層の特性

2024年10月のデータによると、各新媒体プラットフォームにおける高価値ユーザーの規模と占有比率は、プラットフォームごとに顕著な差が見られます。高価値ユーザーとは、月間オンライン消費能力が2000元以上、かつ端末価格が2000元以上のユーザーを指し、企業にとっては重要なターゲット層です。
まず、小紅書(RED)は、0.88億人の高価値ユーザーを抱え、占有比率は39.7%と非常に高い数字を記録しています。このデータから、小紅書(RED)のユーザー層は比較的高い購買力を持ち、特に高価値商品への関心が強いことがわかります。次に、微博(Weibo・ウェイボー)は1.56億人の高価値ユーザーを有し、占有比率は33.3%と非常に強い影響力を持っています。微博(Weibo・ウェイボー)は、情報発信やコミュニケーションが重要なプラットフォームであり、特に高価値商品を購入する層が活発に活動していることが示唆されます。
抖音(Douyin・中国版TikTok)は、1.65億人の高価値ユーザーを抱え、占有比率は19.9%であり、規模としては最大ですが、占有比率は比較的低めです。これは、ユーザー数が多いため、全体に占める高価値ユーザーの割合が他のプラットフォームより少ないことを示しています。
快手(Kuaishou・かいしゅ)と哔哩哔哩(Bilibili・ビリビリ)は、それぞれ0.7億人の高価値ユーザーを持ち、占有比率は15.5%と32.6%となっています。特に哔哩哔哩(Bilibili・ビリビリ)の高価値ユーザー占有比率は、他のプラットフォームと比較してかなり高いものの、ユーザー数は相対的に少ないため、ターゲット層としての影響力は小紅書(RED)や微博(Weibo・ウェイボー)には及びません。
総じて、小紅書(RED)と微博(Weibo・ウェイボー)が高価値ユーザーに関して非常に強い占有比率を誇り、購買力のあるユーザー層をターゲットにするマーケティング戦略において重要な役割を果たすことがわかります。
コンテンツタイプ別ユーザー浸透率の分析:新媒体プラットフォームにおける消費傾向

2024年10月のデータに基づくと、典型的な新媒体プラットフォームにおける異なるコンテンツタイプのユーザー浸透率には、消費者の関心がどのコンテンツに集まっているのかが鮮明に示されています。上位に位置するコンテンツタイプは、エンターテイメントから実生活に関連する情報まで、多岐にわたります。
まず、映画・テレビが62%で最も高いユーザー浸透率を記録しており、エンターテイメントコンテンツが依然として強い人気を誇ることが分かります。次いで、グルメ(60%)や音楽・ダンス(59%)が続き、食文化や音楽、ダンスなどの趣味に関連するコンテンツも多くのユーザーに消費されています。これらのコンテンツは、視覚的に楽しめる要素が強く、ユーザーの積極的な関与を引き出しやすい特徴があります。
さらに、三農(農業、農村、農民)(58.5%)やスポーツ・フィットネス(58%)といった実生活に直結するテーマも高い浸透率を示しており、特に農業やフィットネスに対する関心が高まっていることが伺えます。これは、現代の消費者が自己改善や生活向上を意識しているため、実用的なコンテンツへの関心が高まっていることを示しています。
一方で、文字を用いたデジタルコンテンツ(57.8%)や健康(57%)、旅行(57%)といった情報提供型コンテンツも堅調な人気を誇り、情報を深堀りしたいユーザーのニーズに応えています。特に、健康や旅行に関するコンテンツは、ライフスタイルの選択肢として関心を集めており、実用的かつ魅力的な内容が求められています。
最後に、ファッション・コーディネート(55%)や教育(53.2%)、ショートドラマ(53%)がランクインしており、特にファッションや教育は、個人のライフスタイルやスキルアップを目的としたコンテンツとして根強い人気を持ち続けています。
このように、各コンテンツタイプのユーザー浸透率を見てみると、エンターテイメントから実生活に役立つ情報に至るまで、消費者の多様化した関心を反映した内容が求められていることが分かります。
プラットフォーム別ユーザー浸透率と成長トレンド分析:コンテンツタイプ別の特徴と消費傾向

抖音(Douyin・中国版TikTok)のコンテンツ浸透率と成長傾向
抖音(Douyin・中国版TikTok)では、ユーザー浸透率のトップ5に音楽・ダンス(79.0%)、映画・テレビ(76.6%)、健康(75.4%)、グルメ(75.2%)、ファッション・コーディネート(73.7%)がランクインしています。これらのコンテンツは、視覚的に楽しめる要素が強く、エンターテイメント性やライフスタイルに関連するテーマがユーザーに支持されていることが分かります。前年比成長では、無形文化遺産が25.7%の成長率を記録しており、伝統的な文化に対する関心の高まりがうかがえます。次いで、購買欲を喚起する「种草(zhòng cǎo)」が17.1%、ライフスタイルが15.8%と続き、ユーザーの消費傾向が反映されています。
快手(Kuaishou・かいしゅ)の浸透率と成長の特徴
快手(Kuaishou・かいしゅ)におけるユーザー浸透率のトップ5は、三農(農業、農村、農民)が78.3%で最も高く、続いてグルメ(77.3%)、映画・テレビ(76.8%)、お笑い(76.7%)、健康(75.6%)がランクインしています。特に三農関連コンテンツの人気が高く、農業や農村に関心が集まっていることが特徴的です。前年比成長では、無形文化遺産(20.0%)、「种草(zhòng cǎo)」コンテンツ(18.6%)、アニメやマンガなどの二次元コンテンツ(18.4%)が顕著に増加しており、若者層をターゲットにしたコンテンツの需要の高まりを示しています。
微博(Weibo・ウェイボー)のユーザー浸透率と成長領域
微博(Weibo・ウェイボー)のユーザー浸透率では、映画・テレビ(40.2%)、芸能人(32.4%)、音楽・ダンス(32.1%)、旅行(27.6%)、ニュース(27.5%)がトップ5に入っており、エンターテイメント系のコンテンツが主流を占めています。特に芸能人関連や音楽・ダンスに強い浸透率が見られ、ネット上でのエンタメ消費が顕著です。前年比成長では、音楽・ダンス(5.7%)や映画・テレビ(5.6%)がわずかながら成長しており、ユーザーが求めるコンテンツの安定的な支持が感じられます。
小紅書(RED)のコンテンツ浸透率と購買意欲の高まり
小紅書(RED)では、グルメ(68.7%)、ファッション・コーディネート(60.4%)、美容メイク(60.4%)、健康(58.8%)、映画・テレビ(55.7%)がユーザー浸透率のトップ5を占めています。特に、ライフスタイルや消費意欲に関わるコンテンツが人気で、女性ユーザー層が活発に参加しています。前年比成長では、購買意欲を刺激する「种草(zhòng cǎo)」コンテンツ(10.7%)や母子関連(10.6%)が大きな伸びを見せており、消費者の購買行動に影響を与えるコンテンツの重要性が増しています。
哔哩哔哩(Bilibili・ビリビリ)のゲームとフィットネスの成長
哔哩哔哩(Bilibili・ビリビリ)では、ゲーム(53.9%)、フィットネス(36.1%)、旅行(35.8%)、スポーツ(33.5%)、音楽・ダンス(20.8%)がトップ5にランクインしており、特にゲーム関連コンテンツの浸透率が高いです。また、フィットネスやスポーツといった体を動かすコンテンツも人気を集めています。前年比成長では、ゲーム(7.3%)、旅行(6.2%)、フィットネス(5.7%)といったジャンルが大きな成長を遂げており、健康志向やアクティブなライフスタイルを反映したコンテンツの需要が増していることがわかります。
このように、各プラットフォームで人気のコンテンツタイプや前年比成長を見ると、ユーザーの関心や消費傾向が異なることが理解できます。それぞれのプラットフォームが持つ特徴に合わせたコンテンツ戦略が、今後ますます重要になっていくと予測されます。
まとめ
中国の新媒体プラットフォームは、ユーザー層の多様化とコンテンツの進化に伴い、企業やブランドにとって重要なマーケティングチャネルとなっています。抖音(Douyin・中国版TikTok)や微博(Weibo・ウェイボー)、小紅書(RED)など、それぞれが持つ独自の特徴とユーザーニーズに対応した戦略が必要です。特に、高価値ユーザー層やコンテンツタイプ別の消費傾向を理解することは、効果的なターゲットマーケティングにおいて不可欠です。今後も、新しいトレンドに対応する柔軟なアプローチが求められます。