OTA(オンライン旅行代理店)の全貌と主要プレイヤー
OTA(オンライン旅行代理店)は、インターネットを活用して旅行関連の商品やサービスを提供するプラットフォームです。これにより、消費者は航空券、宿泊施設、レンタカー、ツアーなどの予約を簡単に行うことができます。中国のOTA市場は、大手企業がシェアの大部分を占めています。これらのOTAは、特にモバイル端末を介した予約が普及しており、ユーザーに利便性を提供しています。市場の集中化が進み、大手が競争優位を持つ一方で、新興企業も急速にシェアを拡大しています。
OTAとは?
OTA(Online Travel Agent)の全称は「オンライン旅行代理店」です。インターネットを通じて、ユーザーが旅行に関する商品を予約できるプラットフォームを提供しています。OTAの主要なサービスには、航空券、宿泊施設、ツアー予約などが含まれ、特に中国市場においては携程(Ctrip)や美団(Meituan)、同程(Tongcheng)などが代表的な存在です。これらのOTAは、旅行の計画から予約、支払い、アフターサービスまでを一貫してサポートしており、利便性が高いため、多くのユーザーに利用されています。
携程(Ctrip)をはじめとする中国の主要OTA
携程(Ctrip)は中国最大のOTAとして広く認知されています。国内外のホテル予約、航空券、ツアーパッケージなどの広範なサービスを提供しており、豊富な在庫と強力な販売力を背景に、多くの旅行者に利用されています。また、携程(Ctrip)はグローバル市場への進出も積極的に行い、海外でもそのプレゼンスを拡大しています。美団(Meituan)、同程(Tongcheng)なども市場で大きなシェアを持ち、旅行業界の競争が激化しています。
中国のOTA市場シェアとその集中化
2021年のデータによると、携程(Ctrip)、美団(Meituan)、同程(Tongcheng)、去哪儿(Qunar)、飛猪(Fliggy)など、主要な5大OTA企業が中国のOTA市場の約93%を占めています。このことから、中国のオンライン旅行市場は非常に集中していることがわかります。この集中化が、消費者にとって便利で統一されたプラットフォームを提供し、さらに市場を支配している要因です。

データー出典元:Fastdata
中国の主要旅行サイトとその特徴
中国のOTA市場をリードする主要な旅行サイトには、携程(Ctrip)、飛猪(Fliggy)、美団(Meituan)、同程(Tongcheng)などがあります。これらのサイトの共通点は、いずれも中国のOTA市場のリーダーであり、そのコア製品は「全場面、全品目をカバーする」いわゆる「ワンストップサービス」の特徴を持っています。中国の高度に発展したモバイルインターネットのソフトウェアとハードウェア環境を基に、中国の消費者は主にモバイル端末を通じてサービスを利用しており、その特徴は海外に比べて顕著です。そのため、消費者の「ワンストップ消費」の傾向もより一層強調されています。これらのOTA主流プラットフォームのホームページは、ほぼ全てがホテル、航空券、鉄道券、観光などの大きなカテゴリに分かれており、レンタカー、ビザ、空港送迎などの細分化されたサービスも含まれています。これにより、アプリ内で複数のカテゴリが相互に転換され、消費者が「ワンストップ」で旅行の予約を行えるようになっています。このため、上流のリソースや下流のマーケティング分野に対する浸透が進んでいます。
携程(Ctrip) – 36.3%の市場シェアを誇る業界のリーダー
2021年のFastdataデータでは、携程(Ctrip)が市場シェア36.3%を占めており、1999年にオンライン旅行市場に参入した上海携程商務有限会社に所属しています。携程(Ctrip)は、国内外の60万軒以上のホテルの予約ができるという強みを持ち、数十年にわたる航空券・ホテルのリソース蓄積や、強力な販売および履行能力により、プラットフォームの規模効果を継続的に強化しています。宿泊予約、交通チケット、観光業務、ビジネス旅行管理業務などを提供し、海外市場が新たな成長点となっています。
美団(Meituan) – 新興OTAの台頭
美団(Meituan)は2012年に旅行部門を開始し、美団系の流量を活用して安定した収益化を進めています。Fastdataの2021年データで市場シェア20.6%で2位の美団は、主にローカルサービスを強化している点が特徴で、地元の飲食店やサービスの口コミ情報と連携しています。これにより、ユーザーに対してより身近で便利な旅行情報を提供し、旅行者のニーズに合ったサービスを提供しています。また、美団は美団エコシステム内で集客力を発揮し、流通ネットワークを活用して安定した成長を実現しています。
同程旅行(Tongcheng Travel)
同程旅行(Tongcheng Travel)は2004年にオンライン旅行市場に参入し、微信(WeChat・ウィーチャット)エコシステムの流量を活用しています。同程ネットワークテクノロジー有限会社(Tongcheng Network Technology)に所属しており、2023年と2024年のOTAプラットフォームの流量統計では、同程旅行は重複を除いたユーザー数が最も多いプラットフォームとされています。2022年8月までのデータによると、同程旅行の微信小程序(WeChatミニプログラム)は、設立以来10億人以上の重複を除いた訪問ユーザー数を記録しました。
去哪儿旅行(Qunar)
去哪儿旅行(Qunar)は2005年にオンライン旅行市場に参入した北京趣拿情報技術有限会社(Qunar)に所属しています。2023年にはAppのダウンロード数が何度もAppleのアプリストアで1位を記録しました。去哪儿旅行(Qunar)は、100社以上の航空会社と9000社の旅行代理店と深い協力関係を築き、より低価格、より広範囲なカバー、より良いサービスを提供しています。現時点で、世界68万以上の航空路線、320万軒のホテル、100以上の国や地域のビザサービス、100万本以上の旅行ルート、2万件以上の観光地のチケットなど、リアルタイムで検索・予約が可能です。さらに、24時間対応の鉄道チケット販売や、レンタカー、空港送迎などの地上交通サービスも提供しています。
飛猪(Fliggy) – アリババグループのOTA
飛猪(Fliggy)は、アリババグループが運営するOTAで、航空券やホテル予約を中心としたサービスを提供しています。特に「双11(ダブル11)」などの大型セールイベントでは、飛猪(Fliggy)は大きな成果を上げており、2023年には顧客数の急増を達成しました。アリババの広範なネットワークを活用することで、消費者に対して効果的なプロモーションを行い、ユーザーの獲得を加速しています。飛猪(Fliggy)は、特に若年層の消費者に人気があり、独自のサービスやブランド活動で差別化を図っています。

※「美団(Meituan)」は統計対象外となっているため、ここには含まれていません。
この表は、2023年8月から2024年8月までの主要旅行サービスプラットフォームにおける重複を除いたユーザー規模の変化を示しています。
データー出典元:QuestMobile
航空券予約サイトの種類と特徴
航空券予約サイトには、航空会社の公式サイト、第三者アプリ、チケット代理店など、複数の選択肢があります。
航空会社公式サイトの利用とそのメリット
航空会社の公式サイトやアプリでの航空券購入は、安心して利用できる最大のメリットです。公式サイトでは、航空会社が直接提供する情報に基づいて予約ができるため、トラブルのリスクが少なく、顧客サポートも専門的で迅速です。しかし、公式サイトは操作性が不便であり、時には割引が少ない場合もあります。航空券購入において、ユーザーはコストパフォーマンスと利便性を天秤にかけて選択する必要があります。
第三者アプリを使った航空券予約の利便性
2019年第2四半期の中国オンライン航空券予約市場のデータによると、主要な第三者アプリのシェアは次の通りです:
・携程(Ctrip):36.37%
・去哪儿旅行(Qunar):19.78%
・飛猪(Fliggy):15.34%
・その他:28.51%
データー出典元:易观(イーグアン)分析
これらのアプリの利点は、操作が簡単で、さまざまな航空会社や便を一度に比較できる点です。ただし、価格体系が複雑であり、一般のユーザーには理解が難しい場合もあります。
携程(Ctrip)や去哪儿旅行(Qunar)などの第三者アプリを利用すると、非常に簡単に航空券を予約することができます。これらのアプリでは、複数の航空会社を比較したり、さまざまな価格帯から選ぶことができるため、ユーザーにとって非常に便利です。これにより、ユーザーは自分にとって最適な選択肢を素早く見つけることができます。しかし、これらのアプリは価格体系が複雑なこともあり、理解しにくい点があることがデメリットとして挙げられます。
チケット販売会社 – 価格が安くなる仕組み
旅行代理店やチケット販売会社は航空会社と提携しており、航空会社から販売の権限を得ています。これらのチケット販売会社は、携程(Ctrip)や去哪儿旅行(Qunar)と似たような役割を果たしていますが、特に国際線のビジネスクラスなどでは、携程のチケットよりも6~7割の価格で提供できる場合があり、価格面での大きなメリットがあります。ただし、チケット販売会社の中には信頼できない業者も存在するため、しっかりと信頼できる業者を選ぶ必要があります
中国の旅行サイトを活用したインバウンド集客の方法
中国の旅行サイトを活用したインバウンド集客は、非常に効果的な手段です。携程や飛猪、同程などのOTAは、中国国内で広く使用されており、これらのプラットフォームを通じてターゲット層にダイレクトにアプローチできます。インバウンドマーケティングでは、これらのOTAを活用して特定の地域や観光地のプロモーションを行い、割引キャンペーンやパートナーシップの提案を通じて集客を図ります。また、ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活用や口コミマーケティングが特に効果的であり、中国の消費者はレビューや評価を重視する傾向があります。
OTAを活用した広告掲載とターゲティング
中国のOTAを活用すると、ターゲットとなるユーザーに向けた精密な広告配信が可能です。例えば、携程(Ctrip)や美団(Meituan)では、ユーザーの過去の検索履歴や行動データを基に、旅行に関連するプロモーションを最適化できます。これにより、日本の観光地を訪れる予定の中国人旅行者に効率的にアプローチすることができます。
SNSやコミュニティとの連携
小紅書(RED)やQyer(チョンヨー)、マフォンウオ(Mafengwo)などの中国のSNSや旅行コミュニティを活用することで、旅行者に対して情報を直接提供し、口コミを通じて集客することができます。これらのプラットフォームでは、ユーザーが旅行の体験をシェアし、他の旅行者に影響を与えるため、効果的な集客ツールとなります。
グローバルショッピングとOTAの連携
OTAでは、旅行とショッピングの統合サービスを提供しており、特に携程(Ctrip)やアリババ系のプラットフォームは、ショッピングと旅行を組み合わせたサービスを提供しています。これにより、旅行者は旅行先でのショッピングも一括で計画でき、より効率的に旅行を楽しむことができます。このような統合的なアプローチにより、集客力を強化することが可能です。
まとめ
中国のOTA市場は、携程(Ctrip)、美団(Meituan)、同程(Tongcheng)、去哪儿(Qunar)、飛猪(Fliggy)といった大手企業が中心となり、市場シェアの大部分を占めています。これらのOTAは、モバイル端末を活用したシームレスな旅行予約体験を提供し、消費者の利便性を向上させています。インバウンド集客においては、OTAを駆使したプロモーション活動が非常に効果的で、ターゲット層に直接的にアプローチできます。今後、これらのプラットフォームはさらに進化し、新しいマーケティング手法やサービスを提供していくことでしょう。
中国OTA市場の今後の展望
中国のオンライン旅行市場は今後も成長が続くと予測されています。特に、携程(Ctrip)、同程(Tongcheng)といった大手OTAが市場のシェアを握っている一方で、美団(Meituan)や飛猪(Fliggy)などの新興企業も急速に台頭しています。今後のポイントは、これらの企業がどのようにしてモバイルユーザーのニーズに応えるか、またどれだけグローバル市場への進出を加速させるかです。特に、インバウンド観光の回復に伴い、外国の観光地に向けたマーケティング活動や、モバイルアプリを通じた効率的な集客戦略が鍵となるでしょう。
インバウンド集客の成功のために
中国からのインバウンド集客を成功させるためには、中国市場に特化したOTAやSNSを活用することが欠かせません。特にOTAを利用して、ターゲット層に対して特別なキャンペーンやプロモーションを実施することが重要です。加えて、口コミやレビューを重視する中国の消費者特性に合わせて、ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活用も効果的です。これらの戦略を取り入れることで、より多くの中国人観光客を引き寄せることができるでしょう。
OTAと旅行業界の革新
OTAは、単なる旅行予約にとどまらず、今後はさらに多機能化していくと考えられます。旅行者のニーズに合わせた一貫したサービス提供が求められる中で、OTAはホテル予約、航空券購入に加えて、レンタカーや観光地チケットの購入、現地ツアーの予約など、多岐にわたるサービスを展開しています。また、AI(人工知能)やビッグデータを活用したパーソナライズドサービスの提供が進んでおり、これにより消費者体験がさらに向上するでしょう。