中国銀聯(チャイナ・ユニオンペイ)の海外決済部門、銀聯国際(ユニオンペイ・インターナショナル)は「シンガポールと香港でQRコード決済を導入する」と発表しました。そもそもQRコード決済市場は「支付宝」と「微信」が90%以上のシェアを占めていました、そこへ中国銀聯が参入したわけです。そこで中国銀聯のQRコード決済の動向を探ってみました。
中国銀聯のQRコード決済動向
中国銀聯は5月27日に40余りの商業銀行と共同でQRコードを使った電子決済システム「雲閃付(QuickPass)」を運用すると発表しました。銀聯の決済サービス「雲閃付」のQRコード決済商品が登場し、銀聯カード保有者は銀行アプリを通じた雲閃付のコード読み取りによって支払いができるようになるといいます。現在このサービスに対応する銀行は40行を超えて中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行といった全国規模の商業銀行が含まれます。また商業銀行約60行がサービスに対応するための試験を急ピッチで進めており、年内にはその他の主要銀行も基本的にすべて対応可能になる予定だと言われています。そして更に6月2日から香港とシンガポールでも展開すると発表したのでした。
中国銀聯のQRコード決済への思惑
中国銀聯の狙いはズバリ“業界基準”です、「支付宝」と「微信」のQRコード決済は様々な支払いシーンで利用されており、決済アプリケーション仕様はある程度まとまっています。しかし、セキュリティーに関する規定は「支付宝」と「微信」それぞれの社内ルールで運用されているため業界としての規範はまだありません。そこで銀聯はこの隙間を埋めるべく、“中国銀聯二次元コード決済セキュリティ規範”と“中国銀聯二次元コード決済アプリケーション規範”の2つの仕様を提案して業界基準とする意向なのです。銀聯は「支付宝」と「微信」のQRコード決済に市場を食われないように中小加盟店に対して多様な決済手段を提供し、既存のカード決済にQRコードを加えてアクワイアリング銀行に提供するのです。
QRコードを狙った犯罪“QR泥棒”
中国ではQRコードを狙った犯罪“QR泥棒”が問題になっています。「カネの動くところには犯罪者も集まる」と言われますが、QRコードが中国人の財布の代わりになりつつあるということで、そのあまりの普及ぶりに目を付けてQRコードを狙った「QRコード強盗」が増えているのです。多い手口は、犯罪者が自分で作った偽のQRコードを正規のコード上に重ねて貼り付けて利用者の情報を抜いたり、支払いをさせたりするやり方です。2017年に入ってから広東省では1450万ドルがQRコード強盗によって盗まれたと報じられています。強盗被害が出る理由は「QRコードが目では本物かどうか見分けがつかない」ことにあるといいますが、そんな懸念があっても中国人にとってQRコードの勢いは収まる気配がありません。
そもそも“QRコード”って何なのか?
ポスターや商品ラベルの隅に表示されている“QRコード”。日本では食品成分表示の閲覧やキャンペーンの応募などで以前から幅広く活用されています、最近はLINEで友達を追加したり飛行機の搭乗券代わりにできたり、人々の生活に広く浸透しています。このQRコードとは1994年に株式会社デンソーの一事業部(現・デンソーウェーブ)が発表した“2次元バーコード”で、QRコードという名前は”クイック・レスポンス”に由来した高速読み取りにこだわり抜いた開発のコンセプトが込められています。仕様をオープン化して誰もが自由に使えるコードとしたことや、2002年以降QRコードの読み取り機能を搭載した携帯電話が発売されたことで一般に広まり、現在では名刺や電子チケットなど世界中で利用されるコードとなりました。2012年には総合的なデザイン推奨の制度であるグッドデザイン賞を受賞し、普及の方法や使われ方までの価値が認められています。ちなみに、マーケティング支援サービスのドゥ・ハウスが2014年に発表した「QRコードに関する調査」によると、日本国内における女性の認知率は9割を超えており、約7割に使用経験があるという結果が出ています。もともとは工場での生産管理用だったものが一般に普及した”日本生まれの技術“だったのです。
スマホなどのモバイル端末はこの10年で劇的に性能が良くなっています。カメラの性能や画面の解像度も申し分ないモバイル端末が世界中に普及して十分なインフラが整った現在、QRコード決済の手軽さはいずれグローバルスタンダードとしての地位を築くのではないでしょうか。