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躍進する“天猫”と越境ECの物流事情

アリババグループが運営する中国最大のECモール“天猫(Tmall)”が香港市場に参入しました。中国の物流サービス“菜鳥連盟(Cainiao)”の支援を受けて、香港消費者に翌日配達サービスを提供し、配達時間が過ぎて荷物が届いていない場合は送料を支払わなくても良いサービスを始めました。そこで“天猫の正体”と“中国への越境ECに係わる物流事情”を探ってみました。

中国最大規模のECモール“天猫”

アリババグループの天猫は7万を超える店舗で会員数6500万人という大規模なECモールです、もともとは“淘宝網(タオバオ)”の一部だったサイト「淘宝商城」を2012年1月に「天猫」に名称を変更し、ドメインを取得して一新させたものです。天猫の特徴は、淘宝網がCtoC(個人間取引)であるに対し、BtoC(企業と個人間取引)であるということで、分かりやすく日本の例で言うと淘宝網が“メルカリ”、天猫が“楽天市場”にあたります。また、天猫での企業出店においては高い出店基準を設けて基準を高めることで偽物や非正規品を排除しており、海外有名ブランドを積極的に出店することで高品質、信頼、安心のブランド力を構築して淘宝網との差別化に成功しました。

天猫に出店するには営業許可が必要

天猫はBtoCモデルのモールサイトなので、出店に際しては法人アカウントの取得が必要で、中国本土で営業許可証、販売ライセンス証明(販売許可証)、商品の商品登録証などを提出して審査を受ける必要があります。また、出店に際しては保証金、年会費、販売金額に応じた手数料を支払う義務が生じます。よくある事例として、日本の登録ではダメなのかと言うことですが、日本での登録許可証では出店できません。中国の商標局にて申請し、受理され、本登録するという流れになるのです。したがって天猫出店に際しては中国で申請して受理されればOKとなるわけで、受理までの期間は2ヵ月~3ヶ月を要します。中国で正式に登録、許可された企業のみ出店が許されるわけです。天猫はこのような制約を設けることで、偽者ではないしっかりした商品を扱うモールであるという“ブランド力”を確立しているのです。

中国での越境ECの物流事情

従来、中国で日本商品を店頭販売する場合は仕入れ価格+関税・運賃・諸費用がかりますが、越境ECで商品を売る場合は、仕入れ価格+行郵税・諸費用となるため“現地で商品を売る場合”と“越境EC”での商品価格を比較すると、商品にもよりますが現地の店頭価格より越境ECほうが安く販売できました。しかし新税制度によって事情は変わりました、行郵税とは中国の個人が海外からの手荷物などに対する税や越境ECで商品を購入するときに課せられる税金ですが、一般貨物の場合は「関税」「消費税」「増値税」に加えて流通分のコストなどが上乗せとなるので、最終的には越境ECで商品を購入した方が安いということになり、これでは不公平ということで新税制度が作られたのです。行郵税は廃止され、越境EC小売輸入商品に対しても貨物の内容に応じて「関税」「増値税」「消費税」を徴収することとなったのです。この新税制度は2017年5月11日まで猶予となっていましたが、いずれにしても中国への越境ECは物流コスト面で旨味を失うことになるわけで、現地に物流センターや倉庫を設置して物流コストと配送日数の削減を図る動きは高まりそうです。

日本の配達サービスの現状

冒頭の天猫の香港消費者への「翌日配達サービス」を言うならば、これは菜鳥連盟の“スマート倉庫配送ネットワーク”により実現しているのです、日本国内では“当日配達ゆうパック”“ヤマトグローバルエキスプレス”“佐川急便の飛脚宅急便”など迅速な配達サービスがあり、バイク便の“マッハ50”とかアドサイクルの“リンク便”といった24時間営業で全国当日配達もあります。そして国内ECではエリア限定ですが1時間以内に届く「アマゾンプライムナウ」とか楽天の最短20分からの「楽びん!」など配達時間に特化したサービスも生まれています。それに対してして越境EC対応では総合物流会社ヤマトグループが中国最大のBtoC直販ECモール「京東全球購」と同社の公式パートナー「FRANK」と連携して、日系企業の中国向け越境EC事業をサポートする“チャイナダイレクトサービス”を展開しており、他にも中国向けとしては“伊藤忠ロジスティクスの中国物流サービス”をはじめ“中国流通王”とか“転送コム”などもあります。

企業が中国への越境ECを展開するにあたっては中国固有の難しさが有りますがその辺に精通した物流パートナーの選択・連携も重要なポイントではないでしょうか、越境ECは国内ECと違い販売能力だけでなく国外での配送能力がカギを握ります。

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