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2016年「独身の日」セールでのユニクロ爆売れを読み解く

今回の話題の中心はユニクロ

2016年11月11日の天猫(T-mall)の「独身の日」セールで一番ホットな話題となったのはユニクロの「爆売れ」でしょう。セール開始からわずか2分53秒後で売上が1億元(約16億円)を突破したとか、11日の午前中には天猫(T-mall)のEC旗艦店にあった1879種類の全アイテムてが品切れになってしまったとことなどが大きく報じられ、ネット上でも話題になりました。今年の「独身の日」セールでのユニクロの新たな取り組みは、オフラインの実店舗でも天猫(T-mall)と同等の割引をしたことと、ネットで購入した商品を実店舗で受け取るという仕組みであったと理解されています。また、この他にも爆売れの要因として考えられているのが、中国の方言をカバーしたラップ調の動画配信によるPRや、微博(Weibo/ウェイボー)を使った割引プロモーションなどの取り組みです。

ユニクロの行動原理

「独身の日」セールでユニクロが採った行動をもう一度振り返ってみましょう。まず、オフラインの実店舗でもネット上の天猫(T-mall)と同等の割引をしました。それから、ネット上の天猫(T-mall)で注文した商品をオフラインの実店舗で受け取れるようにしました。さらに、ネット上のショップの商品が売り切れたときの対応ですが、ユニクロは当日の午前中には、「天猫(T-mall)のEC旗艦店の商品が品切れとなったので、購入を希望する人は最寄の実店舗へ行って欲しい」という内容のコメントを微博(Weibo/ウェイボー)の公式ページで発表しました。これらの動きに一貫しているのは、実店舗とオンラインショップとを融合させようという行動原理です。午前中で売切れてしまったとことが想定外だったのかどうかについてあれこれと憶測を呼んではいますが、そこを詮索しても本質的なことは見えてはきません。どうしても売り上げの数字ばかりが大きな話題になりがちですが、この一大イベントにおいても量から質への転換が行われているのです。「独身の日」の大規模なセールが行われるようになって今年で8年目になりますが、ネットショップと実店舗の関係も、当初の顧客を奪い合うという対立から、相互に価値を高めあう融合の構図へと変化を遂げてきています。

    Eコマースが消える?

    阿里巴巴(Alibaba)集団の馬雲会長は10月に杭州で行われた雲栖大会(The Computing Conference)で、阿里巴巴(Alibaba)集団の本業がEコマースであるにもかかわらず「Eコマースはまもなく消えてしまう、阿里巴巴(Alibaba)集団では2017年からはEコマースという言い方はしない」という発言をしています。Eコマースという表現は消え「新しいリテール」という概念になるというのです。オフラインの企業はオンラインの領域へ入り込み、オンラインの企業もまたオフラインの領域に参入するので、必然的に実店舗とオンラインショップの融合が起こり、「新しいリテール」はオフラインとオンラインと物流機能とがうまく結合して初めて実現すると説明しています。そして「新しいリテール」における物流の本質的な目的は、より速く届けることを目指すのではなく、在庫をゼロにすることであると指摘しています。

    阿里巴巴(Alibaba)集団とユニクロの関係

    日本国内では客離れが進むユニクロにとって中国は最も重要な事業戦略地域と位置づけられています。ユニクロは2002年9月に上海1号店を開店し、その後中国でEコマースを展開し始めましたが、ユニクロと阿里巴巴(Alibaba)集団とは早い時期から戦略的パートナーとなっています。ユニクロ中国のEコマースの責任者は阿里巴巴(Alibaba)集団の出身で、このためなのか阿里巴巴(Alibaba)集団が取り組む最先端の新規プロジェクトのパートナーとしてユニクロに声がかかることがしばしばあるようです。2016年の天猫(T-mall)の「独身の日」セールを阿里巴巴(Alibaba)集団は「新しいリテール」ビジネスの出発点であると位置づけています。実店舗とオンラインとの融合というのは言葉にすると簡単ですが、実現のためにはそれを支える物流体制の確立が不可欠です。2016年の天猫(T-mall)の「独身の日」セールではユニクロの一連の動きによって阿里巴巴(Alibaba)集団が実店舗とオンラインとの融合を実現する体制が構築されていることを内外に示したのではないでしょうか。

    実店舗とオンラインとの融合を支えるクラウドとビッグデータ

    阿里巴巴(Alibaba)集団は2013年に中国の新しい物流網を構築するために「菜鳥網絡科技有限公司」を設立しました。阿里巴巴(Alibaba)集団は、国内2000の都市で受注後24時間以内に商品を届けられるスマートロジスティクス網の構築を目指していて、この菜鳥網絡科技有限公司はビッグデータ物流プラットフォーム企業と位置づけられています。2016年の「独身の日」セールでの天猫(T-mall)の総売上高は1207億元、およそ1.9兆円に達しました。これだけの取引を処理するために天猫(T-mall)はどのようなテクノロジーを活用しているのでしょうか?全体を支えるのが阿里巴巴(Alibaba)集団のクラウドサービスである「阿里雲」で、ピーク時には每秒17.5万件の処理を行いました。決済処理サービスの支付宝(Alipay/アリペイ)でもピーク時には毎秒12万件の取引を処理しています。受注した商品は配送しなければなりません。菜鳥網絡科技有限公司が天猫(T-mall)から受け取った配送指示は6.57億件に上りました。さらに2016年は実店舗とオンラインとの融合ということで、実店舗への配送も同時に行われたわけです。菜鳥網絡科技有限公司は阿里巴巴(Alibaba)集団の持つビッグデータを活用し、独自のアルゴリズムで最適な配送経路を設定しています。ビッグデータ予測とクラウドコンピューティングの活用により、事前の注文予測とそれに基づく商品の分配作業を行うことが可能となり、注文の集中する地域に商品をあらかじめ配置しておくことで、受注後ただちに最寄りの倉庫から発送準備ができ、リソースを大幅に節減できます。クラウドとビッグデータの活用によって実店舗とオンラインとの融合が実現されたのです。

    「IT」から「DT」へ

    阿里巴巴(Alibaba)集団は数年前から、IT(情報技術)時代からDT(データ技術)時代への転換を事業戦略として打ち出しています。馬雲会長もDTという言葉を頻繁に使うようになっています。阿里巴巴(Alibaba)集団は巨大なECビジネスを運営することで1000万以上の売り手と3000社以上の物流会社と4億5000万人もの消費者を結びつけています。天猫(T-mall)とアリペイ(支付宝)を通じて個人消費データを収集していて、収入から家族構成、いつ何をどれだけ買っているかといったことまでもすべて把握し集積しているのです。中国の13億人の消費市場ではデータを制するものが市場を優位にリードする可能性が高く、阿里巴巴(Alibaba)集団は「ECの覇者」から「データの覇者」への転換を目指しているのかもしれません。

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