ネットスーパーも中国ECサイト経由
中国では中国IT企業の勢力の前にインターネット関連事業で苦戦を強いられている日本勢ですが、小売業など一部の業種では10年ほど前から中国市場への参入に成功している企業が存在します。手軽さに加え、美味しく、多種多様なファーストフードが楽しめるコンビニ、買い物を楽しみたい人のニーズを取り込んだショッピングモールなど日本企業の小売サービスが支持されているケースもあります。こうした日本企業は実店舗を中心に近年は中国で急増するインターネットユーザーに対応して、ネット事業の強化、ホームページの充実を図っています。しかし、ネットスーパーやネット通販などネット経由の販売は中国企業のECサイトの圧倒的な影響力、便利さから中国のECサイトを経由しての消費者への販売が主流となっています。
おにぎりなど商品情報アップ セブンイレブン
中国の実店舗では、中国国内企業に加え、巨大スーパーマーケットチェーンのウォルマート(アメリカ)やカルフール(フランス)など世界の小売店が進出し、消費者を奪い合っています。そんな世界の小売店が競合する中、最も成功しているといっていいのが、日本のコンビニ・セブンイレブンでしょう。2004年に北京に進出して以来、年々店舗数は増え続け、中国の2015年時点の店舗数は2182店とセブンイレブン店舗数で海外第5位となっています。
2015年度のセブンイレブンのファーストフードの売上構成比は北京が39.1%、成都が41.5%、天津が32%と日本の29.8%に比べ高いのが特徴です。セブンイレブン北京のホームページでも、人気商品のおにぎりやハンバーガーの新商品のほか、おでん、お弁当、プライベートブランド(PB)のお菓子など売れ筋商品の紹介にページの大半を使っています。セブンイレブンは北京など大都市で高密度出店を進め、いつでも、どこでも、できたての美味しい商品を武器に商圏内の消費者の囲い込みに成功しています。消費者が実際にお金を払い、商品を受け取るのは実店舗ですが、ホームページは商品情報の確認といった役割を担っているようです。
期間限定の“お得”情報を発信 イオン
日本の流通最大手のイオングループも中国で総合スーパー(GMS)やスーパーマーケット(SM)、コンビニエンスストア(CVS)など310店舗(2015年度)を展開し成功を納めています。イオン北京・国际商城店のホームページでは、フロアガイドのほか、イベントやセール、カードのポイントデーなどの情報を掲載しています。実店舗、ネット通販で激しい安売り競争が繰り広げられる中国では、消費者の商品や価格を見る“目”は厳しく、ホームページで期間限定の“お得”情報を周知することで、来店のきっかけに繋げています。
このほかにもイオンでは昨年からネットスーパーを導入しています。北京などでのネットスーパー事業が好調で、今後、導入する店舗数を拡大し、本格展開に移行する計画です。イオンの中国のネットスーパー事業は、季節やセールに応じて増減があるものの北京の店舗では弁当や野菜など700品目程度を取り扱います。利用可能地域については、店舗周辺の地域のみ配送を受け付け、京東(JDドットコム、中国インターネット通販2位)の運営するアプリ・京東到家を利用すれば、住んでいる地域からの利用が可能かが表示されます。また、イオンは、アリババグループの運営するECサイト(BtoC)・天猫(Tmall )にも出店しており、実店舗と中国企業の運営するECサイトなどさまざまな販売チャネルを組み合わせることで、より多くの中国の消費者に直接的、間接的にアプローチを強めています。
今回は中国で店舗展開する日本の小売店のホームページやネット事業の事例を見てきましたが、中国で実店舗を展開する際には、ホームページは情報発信や集客などで一定の効果を発揮し、成果を上げているようです。しかし、ネット経由の販売(BtoC)となると、やはり天猫や京東など中国のECサイト経由での販売に頼らざるを得ないのが現状です。中国向けホームページ製作の際には、自社サイトと中国のネットサービスを効果的に使い分け、ホームページと、連携する中国企業のアプリを連動するなどした幅広い取り組みが必要でしょう。