インバウンド

“滴滴出行”の日本進出と“第一交通産業”の狙い

中国の“皇包車”による日本では違法の「白タク」行為が話題になっておりますが、同じ中国の配車サービス最大手の“滴滴出行”が“第一交通産業”との連携で日本に進出します。一見してビジネスの動きのように見えますが、その背景には“第一交通産業”の白タク営業の抑止に向けた企業努力が見られます。

“滴滴出行”とは

“滴滴出行”(ディディチューシン)は2009年に創業を開始した北京市に本社を置く中国の大手ライドシェア(相乗り)企業で、中国の400都市の4億人以上のユーザーへ交通サービスを提供しています。同社は「タクシー配車サービス」や「私用車配車サービス」のほか、「ヒッチ(ソーシャルライドシェア)」、「ディディ・ショーファー」、「ディディ・バス」、「ディディ・テストドライブ」、「ディディ・カーレンタル」、「ディディ・エンタープライズソリューションズ」、「ディディ・ミニバス」、「ディディ・ルクゼ」及び自転車シェアリングなどのサービスを提供しています。2016年8月1日に“Uber”の中国事業を買収して、この買収に続き中国のインターネット巨人企業3社(アリババ、テンセント、バイドゥ)全てから投資を受けた唯一の企業となって世界でも最も価値の高いテクノロジー企業の一つとなりました。そして、2016年には乗車回数が1日平均で2,000万回以上となり2009年の創業から6年かけて“Uber”を大幅に上回る世界で最も支配的なライドシェア企業となっています。

“滴滴出行”と“第一交通産業”の連携

日本のタクシー最大手である“第一交通産業”は“滴滴出行”と業務提携し、2018年春に都内や大阪、福岡など5地域のタクシー約2,200台で、訪日中国人向けの配車アプリサービス開始を目指します。これはアプリから出発地と目的地を入力するとタクシーが配車されるというもので、まずは都内で500台を配車出来るようにするとしています。“滴滴出行”の配車アプリは約4億4,000万人の登録者がおり、訪日時にも使えるようにしてほしいとの要望が出ていました。また全国展開している“第一交通産業”のアプリは、各地で異なる料金体系に対応しており、“滴滴出行”も提携メリットがあると判断したとのことです。日本での海外発のライドシェアサービスとしては、過去に“Uber”が進出しましたが、アメリカにおいては「合法白タク」として認知され広まっていたものの、日本では「白タク営業」が禁止されているため東京では「タクシー配車サービス」として運用されています(京都府京丹後市ではバスやタクシー業者が撤退したことから例外的に本国と同じ仕組みで移動弱者向け有償輸送「ささえ合い交通」が運用されています)。それ以外のタクシー配車アプリとしては、“日本交通”が「全国タクシー」を提供しており、この“日本交通”と“LINE”の提携でタクシーをLINEで呼び出せる「LINE TAXI」(呼び出し可能なタクシーは東京都内だけでも22社3,300台以上) が存在しています。このような状況下で“滴滴出行”と“第一交通産業”の提携は、両社にとってどのようなビジネスメリットがあるのでしょうか。“滴滴出行”からすれば、日本はさらに世界シェアを広げるための足掛かりになるとはいえ日本がそれほど利益を出せる市場だとは思っていないはずです。しかし“第一交通産業”にとっては「訪日中国人向け白タクの抑止」という狙いがあるのです。

「白タク」vs「第一交通産業」

“境外包車”の「白タク」はスマホで簡単に予約できて質の高いサービスが受けられ、しかもドライバーとは中国語でのコミュニケーションが可能で、チャーター利用の際にはガイド兼通訳の仕事もこなしてくれます。中国人にとって極めて利便性の高いサービスであり、日本では違法と知りつつも利用する中国人が耐えないわけで、警察が取り締まるにしても職務質問に運転手が「友人を乗せている」と答えればそれ以上の追及は困難であり、手をこまねいているのが実情です。そこで日本のタクシー最大手である“第一交通産業”が“滴滴出行”との連携で自らが先陣を切って「白タク営業」に対しての受け皿になろうというわけです。記者会見した“第一交通産業”の田中亮一郎社長は「同業他社にも配車アプリへの参加を呼び掛ける」と述べており、11月8日付けの広報「中国・滴滴出行との連携について」で「日本国内での訪日中国人向け白タク行為について、滴滴出行を通じて中国当局への規制導入を働きかけます」と意思を表明しており、“滴滴出行”の影響力を重視してのことと思われます。あとは中国語対応の課題もありますが、中国人のプロドライバー育成・確保は可能なのです。日本では外国人の運転免許取得についての除外規定はありませんので、適法に在留している外国人は日本人と同様に1種免許を取得した3年後には2種免許の受験資格が得られます。2020東京オリンピックの頃には相当数の中国語対応のプロドライバーも確保されることでしょう。

ライドシェアは解禁されるのか

“第一交通産業”が白タク営業の抑止に向けて “滴滴出行”と連携するわけですが、“滴滴出行”はそもそもライドシェア企業であり日本における「ライドシェア解禁」も視野に入れているのでしょうか。ライドシェアをめぐっては昨年に地域限定で規制を緩める国家戦略特区で解禁され(対象は過疎地に限られています)、そして今年、政府の規制改革推進会議がライドシェア解禁の検討を始める中でタクシー業界は「タクシーが壊滅することになる」と猛反発しています。政府は2016年3月2日に国家戦略特別区域諮問会議を開催し、訪日外国人観光客などの受け入れに関する規制改革案を提示しました。そのひとつが、過疎地での観光客に対する自家用車を使った有償運送サービスの制度拡充です。具体的には訪日外国人観光客を地方に呼び込むため、特区の認定を受けた区域では有償でのサービス提供を認めるというもので、また、市町村や他のバス・タクシー事業者と事前協議の実施が必要とし、運転者は2種免許保持者や大臣認定講習の受講者などに定めるとしています。すなわち「白タク」行為を禁じている道路運送法に抵触するものではなく、インバウンド対策の一貫として特区の認定を受けた区域でのみライドシェアビジネスを認めるといった趣旨で話は進みそうで、つまり、今のところは本来のライドシェアの解禁とは異なるのです。今後は全面的なライドシェア解禁(白タク合法化)に向けた話に及ぶのか否かが注目されるところです。

いずれにしても今の“境外包車”による「白タク」の横行に対しては政府がしっかりと打開策を打ち出して取り組むべきであり、業界任せにして良いものではありません。

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