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“特色ある社会主義”が新時代に入った中国の“超監視社会”

10月24日、5年に1度の中国共産党大会が終わりました。習近平総書記は第19回党大会報告で「長期にわたる努力を経て、中国の特色ある社会主義は新時代に入った。これは、中国の発展における新たな歴史的位置付けだ」と語り中国の歴史的位置付けを明らかにしました。しかし、その裏には“超監視社会”があるのです。

新時代に入る中国

習近平総書記の「中国の特色ある社会主義が新時代に入った」というのは、中国が改革開放以来40年近くの発展を経て、経済力・科学技術力・国防力など総合国力で世界のトップレベルに入り、国際的地位がかつてなく高まっていることを指すのでしょうか。しかし「国の発展の状況から見ると、発展の不均衡・不十分という問題が依然存在し、日増しに高まる人々のニーズを完全に満たすことが難しい」という声があるのも確かです。また、党幹部の一人は「新たな歴史的位置付け」とは「社会の主な矛盾の解決に尽力し、中国の特色ある社会主義がより強大な生命力を現わすようにすることだ」と指摘しています。そして、中国共産党規約において「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」を党の行動指針に盛り込むことが全会一致で決定され、最後に習総書記は熱烈な拍手に包まれながら党大会を終えました。これまで指導者名を冠した政治思想が党規約に盛り込まれていたのは“毛沢東”と“鄧小平”の2人のみであり、習近平総書記は歴史的な指導者に並び立つ権威を得たと言えます。また、党規約改正では「あらゆる活動を党が指導する」との文言も追加され、党が“政治や経済にとどまらず教育や文化も含めた社会全体への統制を強める”方針であり、改革派の学者らには「毛沢東時代に逆戻りしたようだ。統制強化で社会が発展するとは思わない」との否定的な意見もあるのですが、この「特色ある社会主義思想」の裏には“超監視社会”(後術)があり、改革派の学者らは公のもとに声を上げられないのが実情です。

中国最高指導部7人(チャイナセブン)

25日に中国共産党中央委員会第1回総会が開催され、党最高指導部人事が決定されました。 最高指導部の政治局常務委員「チャイナセブン」は
“習近平”総書記(64歳)
“栗戦書”党中央弁公庁主任(67歳)
“趙楽際”党中央組織部長(60歳)
“李克強”首相(62歳)
“韓正”上海市党委員会書記(63歳)
“汪洋”副首相(62歳)
“王滬寧”党中央政策研究室主任(62歳)
の7人が起用され、習氏と李氏以外の5人は新任で政治局員からの昇格です。また、新指導部の全員が60歳を超えており、ポスト習世代といわれる50代の政治家の名前はありませんでした。今回の最高指導部人事で最大の焦点は、慣例に従い習氏の後継候補を常務委員に選出するか否かでした。2007年に胡前総書記の2期目が始動した時は、当時50歳代の習氏と李氏を次世代指導者として常務委員に起用しましたが、しかし今回は次世代の後継候補は入らず、習氏は2022年の次回党大会後も何らかの形で最高指導者に残る可能性をちらつかせ、党内の求心力を高める狙いとみられます。また、共青団派の“胡春華”広東省党委書記(54歳)と、習氏の側近の“陳敏爾”重慶市党委書記(57歳)の最高指導部入りが取り沙汰されていましたが、習氏は結局、自らの続投を視野に、後継候補と目される人物を最高指導部に置かない道を選択したとみられ、さらに習氏は盟友の“王岐山”党中央規律検査委書記(69歳)の常務委員留任を望んでいましたが、「68歳定年」を破ることへの反対意見を無視できず、習思想を党規約に盛り込んで権威付けを図ることなどと引き換えに、“王岐山”氏留任を断念したようです。

中国の”超監視社会”の実態

10月21日に放送の「新・情報7daysニュースキャスター」にて中国の監視社会の実態が報じられていました。ネット上の言論統制は顕著で、今年8月には1,000件以上のブログが閉鎖され、10月からはネット上のコメントの書き込みにも実名登録が必要になりました。そして来日中の中国人にインタビューしても「あまり政治の話はしたくない。庶民は政治より生活安全が最重要ですから」「庶民としては自分の生活が良ければいい。他の政治的なことには関心ありません」と皆一様に「政治の話はしたくない」と言うのです。3年前に来日して中国の“超監視社会”を描いた漫画を出版している中国人漫画家の孫向文さんは「中国人は世界中どこに行っても中国共産党に監視されています」と語り、同窓会のグループを10人で始めたのが、いつの間にか11人になっており、その11人目が誰かはだれにも分からないといいます。それは当局の監視役が密かに入り込んでいたのです。

官民合わせて約1億7,000万台のカメラ

中国の監視カメラの設置数は世界でもトップクラスで、官民合わせて約1億7,000万台のカメラが設置されています。2014年の監視カメラの世界の出荷台数は約1億台で、その8割が中国向けでした。

    街を歩いていると、わずか10メートルの間に何台ものカメラがあり、もはや街中に死角はないと言われています。

    民間による監視カメラ映像の公開

    屋内でも数多くの監視カメラが設置されており、飲食店での「市民のケンカ」をカメラが捉えていたり、「手術室でのケンカ」など監視カメラの映像がリアルタイムで公開されているのです。

    インターネットセキュリティ会社「スイディ」では、約1万5,000台の監視カメラから見たい映像を自由に選ぶことができ、その映像は飲食店やダンス教室、街角やオフィスと多岐にわたっています。こうしたカメラは主に民間で設置されたもので、音声も聞くことが出来、見ている人はコメントも投稿できるのです。

    政府のAI監視システム「天網」

    中国政府が力を入れているAIを駆使した監視システム「天網」は、監視カメラが捉えた通行人の性別や年代、服装、さらに車の年式や車種などを瞬時に識別できます。

    例えばある歩行者を見ると「男性」「成人」「半そで」「長ズボン」と表示されます。

    そして、この映像を警察などのデータベースと連動させることもでき、犯罪者など、登録してある人物をカメラが捉えると、瞬時に顔認証を行い、一致率を表示し、即座に警報が鳴ります。実際に指名手配者を検挙した例もあります。

    交差点では、顔認証システムが信号無視の摘発に使われており、監視カメラが通行人の信号無視を捉えると、すぐさま警察のデータベースと照合して違反者を特定し、交差点脇の巨大モニターに、顔の画像や名前など、個人情報が表示されてしまいます。

    公園のトイレまで顔認証でチェックされているといい、いたるところで監視されているのです。中国政府はこのAIを駆使した監視システムは治安維持のためとしていますが、その裏には「反政府的な人物の監視」ということもあるといわれています。

    日本のあるメディア関係者が“ある人物”にインタビューするために中国のを訪れた際には、その人物が訪れる先々には“公安”と思われる者が見張っており、さらには日本のメディア関係者も、終始2人に尾行されていることに気付いてこちらから訪ねると、そ知らぬ顔で一般人を装い去っていったといいます。果たして、このような“超監視社会”は社会主義の一環といえるのでしょうか。

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