求められるのは便利さ?“割高”でもネット利用!?
中国では、店よりネット価格が高い!? 2017年9月2日の日本経済新聞が米国の大学の興味深い調査結果を掲載しました。調査は、マサチューセッツ工科大学が2014から16年に日米中など10ヵ国を対象にネットと実店舗の価格差を比較したもので、ネットのほうが安い日本や米国とは対照的に中国ではネットのほうが高いというデータが示されています。日本では、消費者がネット価格と店頭価格を比較して値切るなど、ネット販売が小売りへの値下げ圧力にもなっており、ネット発で値崩れの原因にもなっていると指摘されています。一方、中国では、2~3%程度割高でもネット販売が支持されているようです。今回は中国のネット販売やサービスの価格を決定付ける要因を探るとともに割高でもネットが受け入れられる背景をみながら、中国向けホームページ制作・運営の可能性を探りたいと思います。
好業績のアリババ、強みはプラットフォーム
中国でネット販売の単価が高い傾向にあるのは、それだけネット関連サービスが他国に比べ支持されていることが背景にあるといってよいのかも知れません。そして、中国のネット関連サービスといえば、ECサービス最大手のアリババグループと、微信支付(WeChat)やネットゲームを提供する騰訊控股(テンセント)といっても過言ではないでしょう。つまり、ネット販売の場合、ネット価格の相場=アリババグループのECサイトである淘宝(タオバオ)や天猫(Tmall)のでの価格といえるのではないでしょうか。ECサービスを柱とするアリババグループの業績は2017年前半も好調で、好業績の理由について、アリババグループは会見などで「プラットフォームの強み」と語っています。では、「プラットフォームの強み」とはどういうことなのかをまずみていきたいと思います。
生活の全てのことがアリババのサイトで完結!?
ここでいうプラットフォームとは、ネットユーザーに影響があり、さまざまな企業と消費者を結び付ける力を持ったサイトとしておきましょう。例えるならば、淘宝(タオバオ)や天猫(Tmall)のように商品を販売したい企業と購入したい消費者を結び付ける場のことです。アリババグループがプラットフォーム上のサービスを充実させるのは、アリババグループのサービスを利用した顧客の消費を一層取り込んでいく狙いがあるようです。アリババグループが特に力を入れているのは、ECを通じた高品質なサービスの提供で、ECサービスへの人工知能(AI)の導入、電子決済サービス・支付宝(Alipay)による迅速かつ確実な決済、SNSや動画を通じたプロモーションの強化、物流網の強化などがあげられます。この中で効果が大きいと考えられるのは、支付宝(Alipay)や独自の物流網ではないでしょうか。支付宝(Alipay)は、実店舗での決済や公共料金の支払いなどでも拡がりをみせています。物流網については、今後、中国国内で24時間、世界各地での取引でも72時間以内に荷物を届けられるようにすることを発表しています。店頭に足を運ばずともショッピングが楽しめて、商品もすぐに届くとなれば、多少割高でも中国の消費者は店頭よりネット販売を選ぶのかも知れません。また、アリババグループは、中国版Twitterといわれる微博(Weibo)、シェア自転車、配車アプリ、動画配信、出前アプリ、生鮮食品配送などさまざまなネット関連サービスに出資しており、ネットユーザーが生活で何か困ったことがあれば、アリババグループのサイトを訪れるようになっている、ということもアリババグループのサービスが支持されている背景にあると思います。
中国ネットサービスは、アリババとテンセントの2強
中国IT業界における有力なプラットフォームといえば、テンセントの手がける微信(WeChat)関連のサービスもアリババグループに匹敵するものではないでしょうか。中国版LINEといわれるチャットアプリ、微信(WeChat)の2017年6月のアクティブユーザーは約10億人に達しており、テンセントではスマホ向けゲームやスマホを通じた動画配信の広告収入が好調です。テンセントは、電子決済サービス・微信支付(WeChat Pay)を提供するほか、中国第2位のECサービス・京東集団に出資、また、アリババグループ同様にシェア自転車や配車アプリ、動画配信、出前アプリなどのネット主要サービスにも出資しています。世界企業の時価総額ランキング(2017年10月上旬)では、7位アリババグループ、8位テンセントが約4000億ドル付xq近で、それほど大差はありません。中国IT業界はアリババグループとテンセントの2強の様相で、検索大手の百度が検索シェアを回復させつつありますが、検索以外の分野では大きな差をつけられています。中国の実店舗でも支付宝(Alipay)や微信支付(WeChat Pay)をはじめネット広告、SNSでの口コミなどで両社とは無縁ではないでしょう。中国ビジネスはアリババグループ、テンセントの便利なサービスや集客力によって生じた利益を両社のプラットフォームを利用する企業やプラットフォームが影響を及ぼす企業で分け合っているといっても過言ではないのかも知れません。
ネット価格は、プラットフォームの利用者が決める!?
さて、前にネット価格の相場=アリババグループのECサイトである淘宝(タオバオ)や天猫(Tmall)での価格といえるのではないか、という指摘をしましたが、物販だけでなく全てのサービスにおいての相場は、アリババグループやテンセントの提供するサービスの価格が基準となっている可能性も考えられるのではないでしょうか。例えば、生鮮食品などの24時間以内の配送は、アリババグループ、テンセントの出資する京東集団がともに目指すところでありますし、配車アプリの相場は、両社が出資する滴滴出行が握っています。アリババグループ、テンセントのプラットフォームが生み出すビジネスが新しいビジネスの相場を決定し、従来の商品やサービスがそれに追随する構図となっている1面もあると思います。アリババグループやテンセントのプラットフォームが商品やサービスの価格を決定できる力を持っているとするならば、市場の原理からいって、それは買い手である消費者を市場であるプラットフォームに呼び込める集客力でしょう。アリババグループが11月11日に行う「独身の日」セールでは、1週間で10億個の宅配需要が見込まれているというほど中国のネットユーザーから注目されており、前にも述べましたがテンセントの提供するチャットアプリ・微信(WeChat)のアクティブユーザーは約10億人に達しています。中国のネット価格は、アリババグループやテンセントのサービスに集うネットユーザーが決めているといったほうがよいのかも知れません。
アリババグループ、テンセントの例をみてもわかるように集客力やサービスの高付加価値化が商品やサービスの単価アップ、新たなビジネス展開に繋がるのであれば、中国向けホームページ制作・運営についても、集客することの意味を今一度考え直さなければならない時期に来ているのかも知れません。どうすればサイトに人が集まるかのヒントは、アリババグループのECサイトのようにどこにいても欲しいものが見つかってすぐに手に入る、や微信(WeChat)のようにタイムリーにメッセージ、画像、動画をやり取りできる、など中国の人々の生活に密着できるような便利なサービス、機能にあるのではないでしょうか。