中国政府は検閲システム「グレートファイアウォール」による強固なネット検閲に加えてVPNへの規制も行い、さらに2017年6月1日に“インターネット安全法”を施行しました。6月1日以降、実際にこの法律が適用された事案などの情報が乏しく実態が把握できていないのが実情でしたが、ここへ来て「中国でヤフー検索が利用できない」というニュースが飛び込みました。
ANNニュース“ネット規制強化影響か 中国でヤフー検索できず”
現地在留邦人に戸惑い
時事通信社の報道によると、上海や北京など中国各地で19日ごろから「ヤフージャパン」の検索サービスが利用できなくなり、現地に住む日本人の間で戸惑いが広がっているといいます。中国ではグーグルの検索サービスが使用できないため、多くの日本人がヤフージャパンを利用しており、この事態に対して「仕事に支障を来たしかねない」「党大会まで続くのか」などと懸念の声も上がっているとのことです。中国当局は今年6月に「ネット空間の主権と安全保障の確保」を目的に「インターネット安全法」を施行しており、10月の共産党大会を控えてネット規制を強化しているといわれています。当局の規制をかいくぐって海外の情報にアクセスする手段として多くの日本人が利用するVPNも非常につながりにくい状況とのことです。検索サービス以外のニュースやメールなどのサービスは利用できる状況で、ヤフージャパン広報は「中国で検索サービスが利用できなくなったことは把握しているが、当社のトラブルが原因ではない。状況の推移を見守っていきたい」と回答しています。
規制強化「ネット書き込み実名制」も
中国共産党中央ネット安全・情報化領導グループ弁公室は8月25日に「インターネット掲示板コミュニティサービス規定」を発表しています。ネット掲示板やニュースサイトなどコメント機能を持つウェブサイトやアプリに対する新たな規制で10月1日より施行されるといいます。同規定では、ネット掲示板やアプリの書き込みにおいて、中国の法律に違反する書き込みを禁止し、もし書き込みがあっても速やかに削除するよう規定しています。またユーザー認証については「後台実名制」を導入することを求めており、この「後台実名制」とは、サイトに表示される名称はハンドルネームでも許されますが、サイト側はユーザーの実名を把握することが義務化されるものです。規定では、ホームページやアプリ、動画配信などのサービス提供者は利用者本人の身分を確認のうえ登録しなければなりません。また、ニュースに対するコメント書き込み欄の運営者は内容を先に審査してからアップする仕組みを作ることも義務づけられます。これは、共産党大会を前に党批判につながる言論統制を一層強化する狙いのようです。
10月18日に始まる第19回中国共産党大会では、党規約に習近平国家主席の名を冠した新たな指導理念が盛り込まれ、習近平国家主席が「毛沢東」や「鄧小平」に匹敵する地位を誇示することが有力視されており、今まで以上にネットでの「党批判」の取り締まりが強化されています。党大会の終了までは今後も予告なしにいつ何が起こるかわかりません。