中国での通販と言えば十一月十一日「独身の日」にアリババがたった一日で一兆円を超える売上を記録したのが日本でもニュースになった事と思います。また京東は創業日である六月十八日に大規模な値引きキャンペーンを行う等、中国での通販の普及の度合いは私達の予想をはるかに上回るものです。
「カルフール」から「一号店」へ
通販が普及するまでの週末と言えば、カルフールなどの大型スーパーにお米やペットボトルの箱買いな
ど多くの人が食料品の買出しの為に行列を成していました。しかし通販の普及と共に、上記の様な重いものや日持ちのする物はまず買いに行くという事が激減しました。上海などの大都市ではテナント料の高騰もあり立地の悪いスーパー等は店を畳む所も出てきて、それがまた通販への依存を呼び、なかには一袋のお菓子でも通販で購入すると言う人達も現れてきました。
実店舗はショールーム?
中国では食料品だけでなく家電もまた通販が主流になっているようです。十数年前には上海の中山公園という繁華街にまるで日本の秋葉原の様に大型家電販売店が集中しました。「蘇寧」「国美」「永楽」等の中華系資本にとどまらずアメリカ資本の「ベストバイ」も上陸し大変な賑わいをみせました。しかし現在では週末でも人影はまばらで、購入しているはごく僅かのようです。むしろ店に来る目的は、家電は食料品に比べ高価となる為、ネット上の情報だけでなく実際に見て確かめたいという人の方が多いかもしれません。家電に限らず衣料品等でも実店舗はショールーム代わりにして購入は全て通販でというライフスタイルは珍しくないようです。これも店舗をもたないでも出来る通販の低価格が生み出した現象といえます。
通販の普及の決め手はサービスの良さ?
日本人が中国へきてまず驚かされるのが商道徳の無さや粗悪なサービスではないでしょうか?さすがにおつりを投げてよこす様な事は少なくなりましたが、そんなサービスに満足出来ないのは中国人にとっても同じ様です。そんな中国でここまで通販が普及したのは、そこに今までに体験出来なかったサービスが存在するからかも知れません。どの通販業者も売主の評価制度の信憑性を重視しており、売主の評価が購買の最優先事項になっているかも知れません。評価が低いとまず販売は望めない為、どの売主も高評価を得る為に必死になります。チャットでの回答は日本と比べ物にならないくらい速く、どんな時でも親しみをこめてネットスラングである「亲亲」と顧客を敬ってくれます。昔は商店での買い物と言えば喧嘩をしているかのような値切りがつき物でしたが通販には必要なく、自分の思ったものと違う等の理由でも返品に応じてくれる事がほとんどで、今までにないアフターサービスがそこにはあります。
今後の課題は宅配業者
これは日本と同様の問題と言えますが、激増する取引量に対して宅配業者が正常に対応できるかと言う問題があります。中国ではまだ宅配業者間の競争が激しく、多くの出稼ぎ労働者が電動自転車に荷物を山積みにしてその低コストを支えていますが、今後もそれを維持し続けれるかが通販の更なる成長の鍵となるでしょう。ただ中国では再配達をする事が少なく不在でもマンションなどでは玄関先に置いて行く事がほとんどです。治安の面からいつも不思議に感じるのですが、靴や自転車などを盗まれたと言うのはいまだに多いものの、何故か宅配物を盗まれたと言う話はあまり聞きません。これは通販の普及が生み出した新しいモラルなのでしょうか?