「中国のキャッスレス社会」は今ホットな話題

2017年5月2日に人民日報の海外ニュース版とも言える「環球網」の微信(WeChat)の公式アカウントが「日本で削除された人気スレッド:中国人は日本人を遅れているとこっそり笑うのか?」という記事を発表したのですが、それが中国で非常に話題になっています。今回はこの記事から見えてくるキャッシュレス社会を支えている隠れた事情や、ニュースの伝わり方から見えてくるものを徹底解説していきます。

発端は「2ちゃんねる」を見た中国人

「環球網」の微信(WeChat)の公式アカウントに発表されたのは、「法国培根」というハンドルネームを持つ日本在住の中国人が、中国のQ&Aサイトである「知乎」に書き込んだ投稿を転載したものでした。「法国培根」さんは「知乎」に「日本に関心があるけれど退屈な文章には反発を感じるのなら読んでほしい」と銘打って、日本事情をちょっと斜に構えて独自の視点で紹介するコラムを連載しています。他にもなかなか面白い記事が掲載されています。「法国培根」さんのコラムには「4月29日の朝、日本のネットオタクたちがどんなことに関心を持っているかを知ろうと思い、いつものように「2ちゃんねるまとめ」を見ていたところ、「凄い勢いで進む中国のキャッシュレス社会、既に想像の遥か上に到達」というスレッドを発見し、さら注目すべきはこのスレッドには800を超えるコメントが寄せられていた。Twitterでも3万以上リツイートされていて、Twitter検索で検索ワードに「中国」と入力するとサジェスト機能によって自動的に「キャッシュレス社会」と表示されるまでになっていて驚いた」と書かれています。この2ちゃんねるのスレッドは削除されてしまったのですが、「法国培根」さんはそのことにも触れていて、自分のコメントの部分以外は元の2ちゃんねるのスレッドに書かれたことをそのまま忠実に中国語に翻訳しています。このコラムで「法国培根」さんは、最後に「これまで2ちゃんねるやTwitterを長年見てきたが、日本のネットオタクらがこれほどまでに中国を賞賛しているのは初めて見た」とまとめています。

「環球網」が転載しさらに・・・

「環球網」ではこれをそのまま転載したのでは、仕事をしたことになりませんから、「法国培根」さんの書いた元のタイトルを新しいタイトルに改めて、さらにリード文を書き加えています。その結果なのかどうかはわかりませんが、何と言っても権威があり、それなりの影響力を持つ「環球網」の記事ですから、中国のネットで注目が集まり、それをさらに多くの中国国内のメディアが転載したりSNSやブログなどで取り上げられて波紋が広がり今ではホットな話題になっています。さらには日本でも、元の「法国培根」さんの記事のほうではなく「環球網」の記事を元にした日本語記事が出回っています。そんな日本で出回っている記事のタイトルは「これまで中国をけなしてきた日本のネット民が、中国を大絶賛し始めた!その理由は?―中国ネット」となっていて、「凄い勢いで進む中国のキャッシュレス社会、既に想像の遥か上に到達」という最初の2ちゃんねるのスレッドからはニュアンスが変わってきています。最初の2ちゃんねるのスレッド→「法国培根」さんのコラム→「環球網」のタイトルとリードの付いた転載→それを元にした日本語記事→それを日本の主要メディアも転載・・・とまるで「伝言ゲーム」のような様相を呈しているのです。

中国では分析や議論が深まった

「環球網」の記事に対する中国の多くのネットユーザーの反応や分析は理性的で冷静だと言えるでしょう。確かに「中国のほうが進んでいる」とか「日本人は中国を見下すのをやめて、急に自分を卑下するようになった」という意見もあるのですが、今回の「環球網」の記事をきっかけに、「なぜ日本や欧米ではスマホを利用したモバイル決済が広まらないか」、あるいは「なぜ中国でキャッシュレス社会が進行しているのか」を分析した記事が多く見られるようになっています。「中国ではこれほどキャッシュレス社会が進んでいるのに銀行の窓口での待ち時間の長さが日本や欧米以上なのはなぜ?」というような疑問も投げかけられていました。一般にキャッシュレス化が推し進められる理由として指摘されるのが、1.治安の向上、2. 店舗の効率化による経済の活性化、3. 消費者の利便性向上、4. 貨幣発行管理コストの削減、5. マネーの流れの透明化、といったことなのですが、中国でも大体これらに沿った見方が支配的のようです。欧米ではスマホが普及する前にクレジットカードや小切手の文化が根づいてしまっていたのに対し、中国ではクレジットカードや銀行のキャッシュカードが普及する前にスマホ決済が定着した結果今の状況になったという見方がされています。中国でキャッシュレス化が欧米や日本よりも進んでいる理由として支付宝(Alipay/アリペイ)と微信支付(WeChat Pay)の存在とその背後にある阿里巴巴(Alibaba)と腾讯(Tencent/テンセント)との熾烈な争いを指摘する人が多い中で、それ以外にも「隠れた功労者」がいるという分析があるのでそれを紹介してみましょう。

キャッシュレス社会の隠れた功労者は?

一人目の隠れた功労者は、「中国招商銀行」だというものです。「中国招商銀行」は1987年に深圳に設立された商業銀行で、中国が計画経済から市場経済に移行する時期に誕生した銀行です。先行する中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行に比べ支店数では大きく水を開けられていたため、業務の電子化にリソースを集中し全国をカバーする情報ネットワークを作り上げました。1995年にはいち早くキャッシュカードの発行を開始し、一つの顧客番号で普通預金、定期預金、外貨預金などを管理するシステムを構築したのです。さらにキャッシュカードにショッピングや光熱費の支払い機能までプラスした今のモバイル決済の原型を作り出しました。「中国招商銀行」がリードする形で中国の銀行業務のIT化が進められ、キャッシュカードとオンラインバンクをこの業界のスタンダードにしたのです。中国のキャッシュレス社会の進展にはスマホを活用した技術が果たした役割は非常に大きいことはいうまでもありませんが、銀行業務のデジタル化がそれを支えていることを見落としがちだというのです。

TVとキャッシュレス社会の関係?

二人目の功労者は「CCTV( 中国中央電視台)」です。スマホが普及しだしたからといってすぐに中国の人たちがモバイル決済を使いだしたかというとそうではありませんでした。例えば、微信支付(WeChat Pay)という新しい技術を利用してもらうには、それを誘引する「動機づけ」と「学習と」が必要です。微信支付(WeChat Pay)の紅包(お年玉/ご祝儀)機能は2014年ごろから徐々に知られだしたのですが、これが広まったのは2015年の春節以降と言われています。世界で最も視聴率が高いと言われるCCTV( 中国中央電視台)の「春節晩会」という番組の中で紅包(お年玉/ご祝儀)がばらまかれたことから、人々がこの紅包(お年玉/ご祝儀)をゲットするために先を争うように自分の銀行口座と微信支付(WeChat Pay)とを紐付けしてこの機能を利用し始めたのです。腾讯(Tencent/テンセント)がいくら巨大であると言っても全国津々浦々まで微信支付(WeChat Pay)を普及させ、実際に利用にまで結びつけるにはそれなりの時間とコストが必要ですが、それをCCTV( 中国中央電視台)が番組を通して一挙に成し遂げてしまったというのです。

日本の出来事が中国経由で伝わってくる

今回のケースは、日本の出来事を中国人が中国語で発信し、それが中国の大手メディアに取り上げられ、それを日本のメディアが日本語に加工し、さらにそれを日本の大手メディアが転載して発信し日本に伝わりました。このような情報の流れはこれからどんどん増えてくることが予想されます。その場合「伝言ゲーム」のような流れの中で、微妙にバイアスがかかったり、肝心な部分を省略してしまったり、翻訳の過程でニュアンスが変わってきてしまい、論点が変わる可能性がある点には注意が必要でしょう。今後、日本の出来事であるにも関わらず、中国のネットユーザーが「一次情報」により近い情報を得られるのに、日本のネットユーザーは「二次情報」しか得られていないという現象が徐々に増えてくるのかもしれません。

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