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ネット決済のプラットホーム「網聯」の試験運用開始 これって「誰得」になる?

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「網聯」の試験運用に微信支付(WeChat Pay)や支付宝(Alipay/アリペイ)が参加

「中国支付清算協会」(Payment & Clearing Association of China :PCAC)によれば、2017年3月31日から、「網聯」と呼ばれる「非金融機関決済プラットホーム」の試験運用が開始されたそうです。この「網聯」は中国人民銀行の主導で設立された「非金融機関」のための決済プラットホームで、「銀聨」のネット決済業界版とも呼ばれています。今回の試験運用には中国の主要銀行4行と非金融決済機関の巨頭である阿里巴巴(Alibaba)の支付宝(Alipay/アリペイ)と腾讯(Tencent/テンセント)傘下の「微信支付(WeChat Pay)」、さらには後発組ながら2大巨頭を追走する「京東支付」も参加します。今後逐次参加する商業銀行や非金融機関が増やされ、試験運用終了後は全ての商業銀行や非金融機関が参入する予定です。「網聯」というプラットホームが構築され本格的な運用が開始されることによって、中国のネット決済の世界に何がもたらされるのかを考えていきたいと思います。

「銀聨(Union Pay)」設立から始まった決済電子化の発展史

中国では2002年に「銀聨(Union Pay)」が設立されたところから決済の電子化が始まりました。中国国内の銀行キャッシュカードの協同組織である中国銀聯股份有限公司(銀聯)が設立され、銀行カードの銀行間ネットワークが構築されました。ここで統一されたルールや技術的なスタンダードが確立されて、キャッシュカードの銀行間相互利用と銀行業務の協力体制が確立され、その後の発展を実現しました。2004年には支付宝(Alipay/アリペイ)などの非金融機関による決済システムが登場して、中国の決済業界は新たな発展段階を迎え、中国の消費者の間にオンライン決済、モバイル決済などの決済ルートが浸透しました。当初は参入が容易であったため、多くの非金融機関がこの分野に参入し「銀聨(Union Pay)」のシェアが徐々に奪われていきました。中国人民銀行が本格的に非金融機関の決済業務に対する規制を始めたのは2010年が最初で、「中国人民銀行の許可を取得していない非金融機関と個人は決済業務に従事してはならない」と規定しました。そして、2011年5月に中国人民銀行が主導する形で業界内の自律的組織である「中国支付清算協会」が設立され、自律的な管理を行うようになりました。

「網聯」にによって非金融機関全体の収益性が向上

2016年4月に中国支付清算協会が「網聯」の設立を決定したのですが、これは銀行の共同組織である「銀聨」と同様の役割を果たすだろうといわれています。それは「網聯」が業界の自律的管理を行うだけではなく、非金融機関共通のネットワークとなり、決済プラットホームとしての機能を持つからです。これまで支付宝(Alipay/アリペイ)や微信支付(WeChat Pay)などの非金融決済機関の提供するサービスが、利用者の中国全土にある多様な銀行口座と紐付けされ、銀行口座の残高からスマホの操作だけで支付宝(Alipay/アリペイ)や微信支付(WeChat Pay)のアカウントに入金される仕組みを機能させるには、支付宝(Alipay/アリペイ)や微信支付(WeChat Pay)が中国国内の銀行と個別に交渉した上で提携をし、手数料を支払うことで成立していました。今後は中国国内の銀行がこの「網聯」という共同の決済プラットホームに参加することになるので、非金融機関はひとつひとつの銀行と個々に提携を結ぶことから解放されます。銀行側は非金融機関の資産状況や経営状態、競争力など勘案して手数料を決定していたので、非金融機関の規模が小さくなるにしたがって銀行側に支払う手数料は高くなるといわれていました。つまり、小規模の非金融決済機関は収益性が低く競争力も弱かったのが、今後「網聯」が正式に運用されることになると銀行に支払うコストが抑えられて、非金融機関全体の収益性が底上げされ、業界全体の健全な発展が期待できるというのです。

ハンデのない業者間の競争がスタートすると

「非金融機関全体の収益性が高まり、業界全体の健全な発展が期待できる」というのはいかにも模範解答的な、この仕組みの「胴元」ともいえる中国人民銀行の言い分です。確かに多くの銀行と交渉するコストが軽減され、手数料も業界内で統一されるため、短期的には中小の非金融機関には有利に働くことは予想できます。ところが、長期的に見るとそうなるとは限りません。いったんは「網聯」が運用されることで、規模の大小や経営力にかかわらず同じスタートラインに立って、非金融機関同士のハンデのない競争が始まるのですが、このサービスのビジネスモデルはどちらかというと単純で、各社の提供するサービスには差が生まれず同質化してしまう傾向があるので、結局は利用者との関係性の強弱や、利用範囲の大小などによって優劣が左右されることになります。そのため、長期的に見れば規模の小さい非金融機関は淘汰され、業界で生き残れるのは大手数社になるだろうと見られています。

銀聨(Union Pay)の持つ危機感

銀行連合である銀聨(Union Pay)がモバイル決済分野での支付宝(Alipay/アリペイ)や微信支付(WeChat Pay)などの目覚しい成長に危機感を持っているのは間違いないでしょう。今の中国で、ネットショップでのオンライン決済よりも発展の可能性があると思われているのが実店舗、特に小規模小売店でのモバイル決済です。銀聨(Union Pay)は従来型のカードを利用したPOSレジ分野では圧倒的なシェアを持っているのですが、QRコード利用の分野では出遅れてしまっています。店舗側がQRコードを読み取るスマートフォンやタブレットを用意するだけで簡単に導入できるQRコード決済の急速な浸透の影響を受けて、2016年12月に銀聨(Union Pay)がQRコードによる決済処理を開始する予定があることを発表したのは、まさにその現れであると考えられます。

中国人民銀行は何を問題視していたのか

支付宝(Alipay/アリペイ)や微信支付(WeChat Pay)などの非金融決済機関にしても銀聨(Union Pay)にしても、中国国内のモバイル決済の最大勢力になって中国の消費者を財布を握りたいという思いは同じです。これまで非金融決済機関は、本来ならば銀行間の決済として銀聨(Union Pay)を経由して行われるはずの資金の移動を、非金融決済機関が複数の銀行口座を持つことで非金融決済機関の中で清算処理してしまい、「銀聨」を迂回して消費者から小売店への資金決済を行っていたことを中国人民銀行は問題視していました。ここには銀聨(Union Pay)が手数料が得られないだけではなく、資金の動きや取引状況が把握できないという大きな問題もあったようです。今後は、非金融決済機関は「網聯」を経由して業務を行わなければならないことで、銀行と直接に結びついてしまうこともなくなり、監督管理が強化されるということは重要なポイントです。

結局得するのは誰なのか?

支付宝(Alipay/アリペイ)や微信支付(WeChat Pay)などに対する管理が強まることは、銀聨(Union Pay)のモバイル決済市場での競争に有利に働くことになるでしょう。「網聯」と「銀聨」の共通の胴元である中国人民銀行の狙いは、コントロールされたバランスのとれた競争状態の実現で、両者の発展がどちらかに偏らないようにバランスをうまくとりながら、政策を打ち出していくのではないでしょうか?2017年は中国のモバイル決済市場の変動を左右する重要な時期だといえるでしょう。消費者にとっては、今まで使い慣れたシステムを新しいシステムに切り替えるには何らかの動機付けが必要です。よほどのメリット、あるいは使い続けることのデメリットがない限りは支付宝(Alipay/アリペイ)や微信支付(WeChat Pay)から銀聨(Union Pay)のモバイルに乗り換えることは考えにくいでしょう。そうなると健全な競争状態の実現で得をするのは消費者なのかもしれません。

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