「年貨」は中国人のDNAに組み込まれている

中国のEコマースのセールというと11月11日の「独身の日のセール」が知られています。その驚異的な売り上げや熱狂ぶりは日本でも話題になっています。しかし中国人にとって最も大切な祝日は春節(旧正月)です。中国には「年貨」といって、春節の前に、春節には欠かせない食品や装飾品などの年越し用の買い物をする習慣があります。「独身の日のセール」はEコマースの世界で最近になって作られたイベントですが、春節前の「年貨」商戦は、昔から中国に根付いている伝統文化のようなものです。中国では春節前になるとオフラインの実店舗が「年貨」商戦を繰り広げ、多くの消費者が買い物をしています。地方から都市部に出稼ぎに来ている人たちが、一年間働いて稼いだお金で帰省のためのお土産をたくさん購入し、それを抱えて列車や長距離バスに乗り込んで故郷に帰るというのは、ちょうど日本でも、年末になると東京のアメ横や築地が、京都では錦市場が年越し用の商品を買い求める人で溢れかえる様子がニュースで報道されるのと同様に、今でも中国の春節前の風物詩といっていいかもしれません。

「独身の日のセール」よりも大きな商機

Eコマースが中国で急速に浸透し、スマホで買い物をするのが当たり前になり、中国人の消費習慣を変えつつあるのですが、伝統的な「年貨」商戦もこの影響を受けて「Eコマース化」が進んできています。その規模がどれくらいあるかというと、阿里巴巴(Alibaba/アリババ)のデータでは、2016年の春節期間中の淘宝(タオバオ)、天猫(T-mall)などの阿里巴巴(Alibaba/アリババ)傘下のプラットホームで「独身の日のセール」の実績と比較すると、春節期間中の「年貨」商戦の一日あたりの平均注文数は4億2000万件に達していて「独身の日のセール」の総注文数が6億5700万件であったことと比較しても、この規模が決して小さくないことがわかります。また、「年貨」のEコマース化によって購入する品目にも変化が見られます。年貨というとこれまでは食品や衣類が中心だったのですが、Eコマース化によってレジャー用品やデジタル機器類、海外製品などにその中心が移ってきています。空気清浄機やロボットクリーナー、iPhone7、iPad mini 2などに人気があるようです。この時期はEコマースにとっても大きな商機なので、阿里巴巴(Alibaba)のプラットホームでは「年貨節」や「春節も無休」というキャッチフレーズで大型セールを開催しています。阿里巴巴(Alibaba)のライバルである中国第二位のECモール京東(JD.com)でも「京東を持って帰省しよう」「よい商品に休みなどない」というキャッチフレーズでセールを行っています。

物流はEコマースの足腰

Eコマースではビッグデータがその頭脳であるならば、物流は足腰に例えられるのではないでしょうか。「独身の日のセール」では大量の消費が短期間に集中するのですが、「年貨」商戦では「独身の日のセール」の小型版が約半月間も連続するわけで、それに対応する中国の宅配業者の負荷はピークに達します。また、その物流を支えているのが地方や農村から都市部に出稼ぎに来ている労働者であるという実態があります。「年貨」商戦では、「独身の日のセール」には主要戦力であった労働者の多くが春節を故郷で過ごすため帰省してしまうという問題が起こってきます。この時期は従業員の休暇取得だけではなく離職率も高まるそうです。「独身の日のセール」でも中国の物流体制の脆弱さやクオリティが話題になりましたが、「年貨」商戦では人手不足と配送のピークの時期とが重なるという、中国の物流業界にとってはまさに正念場になります。Eコマースでどれだけ売り上げが伸びても、「年貨」商戦の商品の大部分が消費者が春節用に購入する商品ですから春節に手元に届かなければ意味がありません。配送を支えるマンパワーの確保が、物流業界はもとより中国のEC業界の大きな課題になっているのです。

物流のサービスは二極化?

物流業界ではこの正念場を乗り切るためにいろいろな対策を打ち出しています。阿里巴巴(Alibaba)集団の物流プラットフォームとして中国の主要物流会社と共同で設立した物流会社・菜鳥網絡科技有限公司では、この期間に対応するために約30万人の人員を確保しているそうです。世界最大の物流ビッグデータを駆使し、最適な在庫や人員を各地の最先端のインテリジェント機能を持つ物流基地に配置することで春節期間を乗り切るとしています。京東(JD.com)は全国88の主要都市では春節の期間も通常配送を行うとしています。同時に出店者に対しては、1月20日から2月8日までの期間に発注を受けた商品は必ず2月8日までに発送することを求めています。家電小売大手の蘇寧も全国308の都市で通常通りの配送体制を維持すると発表しています。特別ボーナスを出したり、冬休み中の外国人留学生を雇用して配送に当たらせる物流企業もあるようです。これら自前の物流体制を持つプラットホームが軒並み春節中も通常営業するのに対し、それ以外の多くの物流会社はおおむね1月25日頃から10日間前後を休業日とするか営業するとしても通常の体制ではなく、荷物の受付や配送を停止したり減らしたりしています。この時期には道路の渋滞もありますし、天候の急変もあるかもしれません。数日の遅延は許容範囲かもしれません。

阿里巴巴(Alibaba/アリババ)が春節にこだわるのは?

Eコマースでの春節の「年貨」商戦は2015年に阿里巴巴(Alibaba/アリババ)が始めたといわれています。阿里巴巴(Alibaba/アリババ)が「年貨」商戦を開始し、春節中の通常配送を打ち出したために、阿里巴巴(Alibaba/アリババ)を追いかける京東(JD.com)もこれに付き合わざる得ませんでした。春節の「年貨」商戦を通じてライバルに揺さぶりをかけるとともに、中国国内の物流企業にイノベーションを促すインパクトを与えていることは見逃せないでしょう。馬雲氏は「独身の日は都市のネットユーザーのためのものであり、「年貨」商戦は農村のためのものである」という興味深い発言をしています。そして、この「年貨節」の目的は、「農村で生産される商品を都市に流通させることで、農村に収入をもたらし農民の生活を豊かにすることである」と述べています。馬雲氏は今後10年の戦略の一つとして「農村の都市化」をいう目標を掲げています。大都市は飽和状態とも言われる中国のEコマースですが、これからのターゲットになっているのは農村であり、それを実現させるためには農民層が豊かになる必要があるわけです。その一方で物流をいかに効率化しても「ラスト・ワンマイル」は必ずしもよい待遇とはいえない農村出身の労働力という実情があります。Eコマースで農村を豊かにし、同時にEコマースを最前線で支える農村出身の労働者も豊かにするソリューションがあるのか?馬雲氏はどんな「解」を用意しているのか注目されます。

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