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オグルヴィ 創業70年にしてブランドロゴ変更 背後にある戦略転換とは?

2018年6月6日、世界最大手の広告代理店のひとつであるオグルヴィ・アンド・メイザー(以下、オグルヴィ)は、創設以来70年間使用してきたおなじみのブランドロゴを一新。同社の「Re-founding(再創設)」に付随した新たなビジュアルアイデンティティとして、新デザインのブランドロゴとブランドカラーを発表しました。果たして、この戦略は吉と出るのでしょうか?今回は、同社の今後に与える影響を分析してみましょう。

新しいロゴの効果

まずは、新しいロゴの効果について、考えてみます。

これは、SDiの観点からしても、「アピール力」と「キャッチ―さ」の2点で評価すべきでしょう。

ロゴとは、ブランドのイメージを構築し、維持するためのもの。まずはブランドを認知してもらい、ブランドを理解してもらうことが目的にあります。ブランドロゴは、唯一無二の、一度見たら忘れないようなデザインで、なおかつ、ブランドの核心的なイメージをしっかり伝えるものであるべきです。

このほどオグルヴィが新しいロゴを打ち出した理由にはまず、デジタル媒体での露出を考慮した点が挙げられるでしょう。

例えば、フォーシーズンズホテルやジョニーウォーカー(ウィスキー)、MINI(自動車)、Logitech(PC周辺機器)など、世界で多くの大手企業やブランドが、また、「海底撈(火鍋チェーン)」、「魅族(電気機器)」など多くの中国国内企業が同様に、ブランドロゴをよりシンプルなものに変更しているのもそうした事情によるものと推察できます。

オグルヴィは従来、非常にユニークでインパクトのある手書きの署名をロゴに据えていましたが、今回のイメージ転換ではシンプルかつ普遍的なフォントを採用し、「グローバル・ネットワークの機敏性や協業性を表現した」としています。もちろん、デジタルデバイスを通じた見映えにより対応したかたちでもあるでしょう。メディアを取り巻く環境が激変する中、ブランドを率いる新世代のリーダーたちには、手書きの持つ風合いや美しさを解するセンスは持ち合わせていないのかもしれません。世代間で越えがたくなった美意識の溝が、今回の新ロゴ発表に繫がった最大の理由なのではないでしょうか。

また、大手企業がブランドロゴを変更すると、よく消費者側に「新旧のロゴはどちらが好きか?」というアンケートがとられますが、これはあまり意味のあることとは言えません。ロゴを変更した背景にある意図を見ずして、デザインそのものの良し悪しを論じても意味がないですし、第一、ロゴを変更したばかりのタイミングでこのようなアンケートを行っても、多くの消費者が「従来のロゴがよかった」と回答するであろうことは明白だからです。誰もが愛着を感じている従来のロゴと、なじみのない新しいロゴでは比較の対象にはなりません。新しいロゴが広く浸透してから初めて、正しい評価が下せるのではないでしょうか。

プロモーション戦略の観点から言えば、プロモーションの本質は、「価値の創造」と「認知の確立」であり、ロゴはそれらが集約されたものといえます。オグルヴィの新旧ロゴを分析すれば、同社の戦略の変遷をたどることができるでしょう。

創業70年以来、オグルヴィが採用してきたブランドロゴは創業者であるデイヴィッド・オグルヴィ氏の手書きの署名でした。これは最も簡潔かつ直接的に同社のクリエイティビティを表現したものであり、創業以来ずっと守られてきた核心的価値観でもありました。

オグルヴィの掲げるクリエイティビティ -事実を語る-

「時速60マイルで走るこの新型ロールスロイスの車内で、最もうるさかったのは電子時計の音だった」―これはかつてデイヴィッド・オグルヴィ氏がロールスロイスのために生み出した名キャッチです。

事実とディテールを語って消費者にアピールする、これは同氏の創作に最も顕著なコンセプトです。彼は、飾り立てた“文学的な”キャッチに否定的な立場でした。

オグルヴィの掲げるクリエイティビティ -調査し、分析する-

その「事実」を強固に裏付けるものが、徹底したリサーチです。

もともとマーケティング畑出身のオグルヴィ氏は、「広告とは事実を伝えるものであり、その内容を練るよりも、リサーチし、分析を重ねることがまず重要である」としています。その名著「『売る』広告」からは、現在でも広告業に従事する者なら大きな啓示を受けるものでしょう。

徹底したリサーチを重んじるこのようなポリシーが実を結んだ例として、大手化粧品メーカー・ヘレナルビンスタインの広告があります。「毛穴からキレイに」という画期的なキャッチは、綿密なリサーチによって生み出され、製品の爆発的なヒットにつながりました。しかし、膨大な時間と労力を要するこのような“近道なき”手法は、現代では敬遠されがちです。

オグルヴィの掲げるクリエイティビティ -真の創意-

「あなたの生み出した広告が真のクリエイティビティにもとづいたものでなければ、それは夜に航海する船のように、誰の目にも留まることはないだろう」。これは、オグルヴィ氏が残した金言のひとつです。そして、「30年経っても色あせることがないのが、真のクリエイティビティである」とも述べています。

オグルヴィ氏が惜しみなく絶賛したというマルボロの広告は、それまで女性的なイメージをもたれていたフィルターつきのたばこを、カウボーイのイメージと結びつけることによって、大々的なイメージ転換に成功しました。このように、真のクリエイティビティとは、練りに練ったアイディアによって、ブランドの核心、ブランドの魂を的確に表現することなのです。

従来のオグルヴィのブランドロゴはまさに、こうした指針のまさに象徴だったといえるでしょう。これこそが彼らの核心的価値であり、クリエイティビティであり、不変の強みであったはずです。

ただし、時代の変遷とともに、広告業界の主戦場は紙媒体やテレビから、インターネットというインタラクティブな媒体に移りつつあります。広告の媒体も手法も限りなく細分化していく中で、従来の成功モデルがそのまま通用する時代ではもはやありません。

このほどオグルヴィが新しいロゴを発表したことは、従来のコンセプトに固執することなく、時代の変化に合わせた手法でより大きな飛躍を求めたものでしょう。しかし、現段階では、新しいロゴデザインにはその点が存分に表現されていないように思います。

ブランドの「Re-founding(再創設)」の一環として、「グローバル・ネットワークの機敏性や協業性を表現した」というロゴ。しかし、「機敏性」や「協業性」といったタグづけは、そもそもオグルヴィのブランド戦略にとって優れたチョイスだったのかどうか。これらの文言は、我々消費者がこれまでオグルヴィに対して抱いてきたイメージとあまりにもかけ離れていて、唐突な印象は否めません。

これまで築いてきた同社のカラーとは一貫性を感じないため、ゼロから新たなイメージづくりが求められるのではないでしょうか。単純にデジタル化時代に足並みを合わせたというだけでは、ブランドの価値をより高めるストーリーとしては、その語り口はあまりにビジネスライクで情感に欠け、さらに補足を必要とするもののように感じられます。

まとめ

新しい時代の消費者に届けるものとしては、ローコストでハイパフォーマンスなオグルヴィの新ブランドロゴ。ただし、新たなブランドの価値を確立する前に、創業70年にわたって高い認知度を誇ったロゴデザインを一新したのは正しかったのか? オグルヴィの次の一歩が見えない現段階では、まだ何とも言えません。

この変化の激しい時代、ブランド戦略の微調整が必須なのは言うまでもありませんが、新たな時代のニーズをブランドの歴史や伝統と融合させる時、それこそ、デイヴィッド・オグルヴィ氏が説いた「調査、分析」がものを言うのではないでしょうか? 進化を求めつつも初心を忘れない姿勢があってこそ、顧客の期待に応えることになるのではないでしょうか?

[原文 : http://www.opp2.com/85742.html]

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