中国 中国テクノロジー

「春節」を前に顔認証メガネで旅行者を監視する中国

顔認証技術においては日本のNECの技術が世界No.1を誇っていましたが、今では中国で顔認証技術の利用が盛んになっています。そのことは先月の掲載記事「中国の監視社会で利用が広がる顔認証」で紹介しておりますが、また新たな動きがあったので紹介いたします。

顔認証メガネで容疑者を逮捕

中国河南省の鄭州市、駅では鄭州鉄道警察が顔認証メガネを使用して旅行者を監視しており、中国共産党の機関紙「人民日報」が「グーグルグラスに似たメガネは、今年初めに公表されたもので、すでに7人の容疑者の特定に貢献した」と報じています。

この「顔認証メガネ」は北京の“LLVisionテクノロジー”が開発したもので、当局のデータベースとリンクさせて、人ごみに紛れている容疑者を特定するものです。「顔認証メガネ」のシステムは、開発元のLLVisionテクノロジーが行ったテストでは1万人のデータベースから0.1秒で顔を特定したといい、人間の能力を遥かに超えた優れものです。

前述のように「顔認証メガネ」の導入により、現在までに様々な容疑者を特定しており、中国では鉄道での旅行には身分証明書が必要ですが、あるメディアの報道では、偽の身分証明書を使って旅行しようとした26人が検挙されています。

顔認証で監視を強める中国当局

中国当局の犯罪防止プログラム「スカイネット」計画では国内各地に監視カメラが設置されており、さらに今後も増える見通しで、これらの監視カメラの多くはAIが搭載されて顔認証技術を備えています。この「顔認証メガネ」の導入も「スカイネット」計画の一環と思われます。

中国では警察の捜査以外でも本人確認に顔認証を使う場面が増えており、銀行がATMに採用したほか、レストランやホテルなど様々なシーンで活用されており、便利な半面、知らないうちに顔認証で監視されることを懸念する声もあります。

メガネ型カメラはかなり以前から商品化されて多種多様の製品が販売されており、それに顔認証を組み合わせる発想はさすがに監視大国ならではのことと言えそうです。しかし、顔認証システムで監視する当局は、「顔認証に対抗するモノの存在」を承知しているでしょうか。

顔認証 vs プライバシーバイザー

サングラスなどで顔を物理的に隠すのではなく、メガネをかけるだけで顔認証を阻害することでプライバシー侵害を防止するメガネ型プライバシーバイザーなるものの存在をご存じでしょうか。これは、日本の国立情報学研究所が開発した、カメラの「顔認識」を阻害する世界初のメガネ型デバイスで、何と2015年に商品化されているのです。

初めに作られたのは近赤外線を利用したもので、これに使われる近赤外線のLEDは、人間の目には見えませんが、カメラの撮像デバイスを通してみると、光って見えます。顔の検出は、目の部分や鼻のある部分を暗いと見る、または鼻のある部分を明るいと見るという特徴があります。顔の暗い部分を中心に光源を配置する事で、顔検出の特徴量を破壊し、顔検出を失敗させるわけです。

現在の顔認証技術では「顔」を検出・認識すればサングラスをしていても骨格など様々な要素の組み合わせで認証しますが、「顔」が見つからなければ意味をなしません。顔を物理的に隠す従来対策に比べ、この技術はメガネを付けるだけなので、人対人のコミュニケーションを阻害せずに顔認証によるプライバシー侵害を防止できます。

ただこの方法は、人間の視覚と撮像デバイスの分光感度特性の違いを利用しているので、赤外線に反応しないカメラでは他の手法を使う必要があります。そこで、考えられたのが外光を反射する素材を用いて外光を白く光らせる、または外光を吸収するというパターンで顔検出の特徴を崩します。そこで、光を反射・吸収する素材で顔検出を不能にするプライバシーバイザーが「めがねのまち さばえ」を掲げる福井県鯖江市の企業によって商品化されたのです。

先のプライバシーバイザー(写真)はプロトタイプですが、現在では普通のメガネと全く見分けがつかぬほどに改善されています。

詳細についてはふるさとクラウドファンディング「FAAVO」のプロジェクト、および、福井・鯖江めがね 総合案内サイト「 JAPAN GLASSES FACTORY 」をご覧ください。

もうすぐ中国の春節です。大移動する旅行者たちはこの「顔認証メガネ」で監視されるわけですが、中国の人々は日本の「プライバシーバイザー」の存在を知っているでしょうか。中国国民の間で「プライバシーバイザー」が流行りだしたら、中国当局はどのように反応するでしょう、政府間交渉で日本に販売中止を求めてくるやも知れません。そこまで考えるのは大袈裟でしょうか。

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