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“スカイライン・クリーニング”北京の看板撤去騒動

中国の北京市政府が景観改善という名目で、1万枚規模に上る大型の商業看板を撤去しました。これは昨年10月の中国共産党大会で打ち出した党の「統制強化方針」に沿ったものだといい、習近平国家主席の意向を忖度(そんたく)して忠誠を示そうとする地方指導者の狙いが透けて見えると、市民からは疑問の声が上がったとのこと。

北京の「スカイライン・クリーニング」

北京の街が1月の寒風にむざんな傷をさらしています。林立する高層ビルの壁にはシミのような汚れがにじみ、小さなレストランが並ぶ商店街の壁には、ちぎられたような針金や電線があちこち飛び出しています。これは、昨年11月27日に北京市が出した「スカイライン・クリーニング」の大号令がもたらしたものなのです。

目印がなくなり、道に迷う人が続出

「スカイライン・クリーニング」と呼ばれる指示は「12月末までに2万7000枚にのぼる基準違反の看板や広告を取り外し、空とビルの美しい境界線を北京に取り戻せ」というものでした。翌28日にはさっそく、北京の各地にクレーン車が現れて撤去作業を開始しました。小さな商店では竹の足場を組んで手作業で看板をはがす様子が見られ、費用は自己負担だといいます。

間もなくして副作用が現れました「○○ホテルはどこでしょうか?」。ビルもホテルもレストランも看板を外した結果、目印がなくなった街で道に迷う人が続出したのです。景観面でもあちこちに看板が外された跡が残っており、かえって見栄えは悪くなっています。

相次ぐ批判に政策ミスを認める

知識人たちは「経済的には何の意味もなく、社会的には混乱を招くだけだ」と一斉に反発して、党機関紙の人民日報へ疑問を投げかけました。そして12月7日に同紙電子版に掲載された論評記事のタイトルには「美しいスカイラインとは、人心に向かって延びるものだ」とあり、低層の商店の看板まではぎ取っている施策を「実情を無視してはいないか?」と批判したのです。

この記事の掲載は世論の反応を確認するためだったのでしょう。北京市は翌8日には撤去の一時停止を決定し、新たに出された通知は「冬季の作業は危険だ」という言い訳がましい説明のあとに「多くの人がビルの識別ができなくなった」ことも理由として挙げました。事実上、政策ミスを認めたわけで、一部では看板をかけ直す動きも出ています。

習国家主席の判断

内部事情を知る党関係者は、反発の声があまりにも多いため、最高指導部まで情報が届けられて最終的には習国家主席が判断したのだと語ります。「スカイライン・クリーニング」を指揮したのは北京市トップの「蔡奇」党委員会書記でした。蔡氏は、福建省や浙江省で地方勤務時代の習氏に長く仕え、2016年秋に北京市ナンバー2の代理市長に抜てきされて、2017年5月には書記に昇格し、10月の共産党大会で党トップ25の政治局員へと異例のスピード出世を遂げました。「スカイライン・クリーニング」は、かつて蔡氏が市長を務めた浙江省杭州市でも実施したことがあるとのこと。

蔡書記采配の空回り

北京市関係者によると、職場での蔡氏は習氏が示した方針を繰り返し強調し、手持ち無沙汰にしている職員をみると「何をやっている!ぶらぶらしないで働け!」と発破をかけるといい、上に忠誠を尽くし、大胆な手法で課題解決にあたるという評価は、習氏の好みにぴたり符号するのです。実績が多くない分、成果を出そうと張り切っているのかもしれません。

ただ、空回りが目立ち批判を浴びているのは「スカイライン・クリーニング」だけではありません。北京市は昨年、違法建築物の撤去を大がかりに進めましたが、住宅や職場が強引に取り壊され、10万人とも言われる出稼ぎ労働者が行き場を失いました。年末に北京で火事が相次ぐと「住まいを失った人による放火ではないか」とささやかれ、結果として社会を不安定化させたことは間違いありません。

見方を変えても不安は残る

景観の改善や違法建築物の摘発など、蔡氏が取り組んだ目標自体は悪くありません。大胆な方策を取り、問題が判明したら政策転換するというのは一つのやり方でもあるのですが、一党独裁体制は判断を誤ったときに修正が利きにくいと指摘されます。今回は共産党が世論に耳を傾けて「自浄作用」を示したという見方ができなくもありませんが、たまたまのことかも知れません。

こうした手法に不安はぬぐえません。外部からのチェックが働かない状況下では、党の「自浄作用」がいつも利くとは限らず、ミスを認めて修正できるかはあやしいものであり、厳しい統制が敷かれる中で正しい情報が届くのかどうかも疑問です。

24日に開幕する北京市の人民代表大会初日の会議では「陳吉寧」代理市長が演説するとみられますが、慣例として書記は発言しないところですが、蔡氏も出席するといいます。「スカイライン・クリーニング」や「住民追い出し」など、北京市を騒がせた一連の政策について当局から何か言及はあるでしょうか。

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