インバウンド

増え続ける訪日中国人観光客とその背景

日本政府は2003年に当時小泉純一郎総理が観光の経済波及効果を見込んで「観光立国懇談会」を発足してビジット・ジャパン事業を開始し、2006年12月に「観光立国推進基本法」が成立、2008年10月に「観光庁」を設置し、2009年7月に「中国個人観光ビザ発給」を開始しました。

中国人観光客の殆どは富裕層

訪日中国人観光客は2014年から急激に増えており、2014年は前年比83.3%増、2015年107.3%増で、長年にわたり高度成長を遂げてきたことからも中国人が経済的に豊かになっているかのように見えます。そこで、国民の豊かさや生活水準を国際比較する上で手掛かりとなるデータの代表格である「各国の一人当たり名目GDP」を確認してみました。

内閣府が毎年末に発表する「国民経済計算年次推計」に掲載される「主要国の一人当たり名目GDP」によると、2015年の中国は8,028ドル、日本は34,522ドル、米国は56,066ドルであり、中国は米国の7分の1、日本の4分の1程度に止まっています。つまり、長年にわたり高度成長を遂げてきた中国ですが、一人当たり名目GDPから見る限りは、中国はまだまだ経済的に豊かとはいえそうにもない数値でした。

中国の場合、経済発展に伴い富裕層と貧困層との格差が著しくなっており、全体的に豊かになったわけではなかったのです。すなわち海外旅行をしている中国人の殆どは富裕層なのです。ではなぜ訪日中国人観光客が急に増え続けているのでしょう。

日本の良さを知った中国人

中国政府が反日教育を熱心に推進し、中国国民は、日本人は極悪非道のワルで「日本鬼子(中国語読みリーベングイズ:日本人を指す最大級の蔑称)」とのイメージを植え付けられて来ました。しかしながら、時を経て、日本を一度でも訪れたことのある中国人は、それまでの日本のイメージは虚構だったことに気が付きます。そして、それが口コミで広がり「日本はそれほど悪い国ではない」となり、徐々に日本を訪れる中国人も増え始めたのです。

そして何時しか、日本観光をする人も増えだして現在に至っている訳ですが、距離的な近さから東南アジアへ行くより飛行機代は安く、ホテルもそれほど高くはないため「旅行費用の安さ」から、それほどの富裕層でなくとも日本旅行は可能なのです。

また、春の桜、夏の花火、秋の紅葉、冬の雪景色と、四季折々の異なる美しい景色を楽しむことができ、日本料理は世界的にも有名で、寿司や刺し身のほか、うどんやお好み焼きなど、さまざまな日本食を楽しむことができることも魅力で、日本への団体旅行ツアーが人気を博しました。そして、帰国すると「日本旅行がいかに素晴らしかったか」を競うようにインターネットで発信し、拡散させているのです。

さらには、日本には多くの免税店があり、サービスが良く、販売されている製品も廉価で品質が良いことから「爆買い」へと発展し、やがて越境ECの進展により、旅行目的も、「爆買い」から体験型観光の「コト消費」へと変化を見せており、アクティビティ体験、自然景観鑑賞、歴史建造物への訪問に加えて、今ではアニメ聖地の訪問もトレンドになっています。

政治と旅行は別問題

中国人の日本旅行は反日感情からか2011年に一度は冷え込みました。そして、今でも政治的な理由で日本に対する憎しみを抱く人が居ることは確かです。しかし、現在の中国人にとっては「政治と旅行は別問題」という考えも有って、日本は嫌いでも日本のアニメは有名であり、幼いころに見たアニメの生活を体験してみたいという思いや、正統な日本料理を食べてみたいという人が多いといいます。

日本旅行をしたネットユーザーの中国でのコメントを見ると、「政治と旅行は別問題で、日本旅行は生活を楽しむためで美食を味わうためだ」「誰が日本を嫌いだと言ったんだ?日本は偽物もスモッグも下水油もないんだ。日本はとてもいいところじゃないか!」「(日本を選んだ)主な理由は、日本人は観光客からぼらないことだと思う。中国国内の観光地ではぼらないところなどない」「日本が嫌いな人は日本に行ったことのない人。日本に行けば絶対に見方が変わる」ということで、政治的背景には反日感情は残るものの「日本はとても良い国だ」との認識が広まっているのも確かなのです。

ピザ発給要件の緩和

日本政府は昨年の5月8日から「日中間の人的交流を拡大し、観光立国実現及び地方創生の取組に資するため」として、中国人に対するビザの発給要件を緩和する措置を講じました。主なものとしては「個人観光一次ビザの申請手続簡素化」「経済力に応じて数次ビザの発給と要件の緩和」があげられます。

このピザ発給要件の緩和により、経済力のある人が数次ビザ(有効期間5年、1回の滞在期間90日)を発給して貰えば何度も日本を訪れやすくなるわけで、数回に分けて北から南まで日本全国を訪れる人も増えることが予想されます。

ところが、旅行を通じて自国の資本が海外に流出することに危機感を抱いていた中国政府は、昨年10月に日本への渡航制限をかけました。しかし、制限したのは団体旅行のみで、個人旅行に関しては制限できなかったことに加え、近年は団体よりも個人旅行を好んでする人が増えていることから、結果的には思ったほど顕著に大きな影響は出ておりません。

訪日中国人観光客の推移

実は中国人の海外旅行ブームは2010年あたりから既に始まっていました。ゆっくりですが日中関係の緊張が和らぐにつれて、もともと日本にも行ってみたかった人たちが日本を訪れはじめ、その人達によって日本の良さが拡散されて、それまで溜まっていたストレスを発散するかのように、2014年から日本旅行が急増して、前述したように日本で「爆買い」が起こったのです。

それまでは、距離が近いことからも韓国人旅行客のほうが圧倒的に多かったのですが、中国人の勢いは止まらず、遂に韓国を追い越して2015年から日本のインバウンドNo.1となっているのです。

訪日中国人の数は2003年には45万人弱であったのが、徐々に増えて5年後の2008年に100万人を超えました。そして2014年からは顕著な伸びを見せて2015年は約500万人となり、2017年も11月には2016年の637万人をえて679万人に達しています。本記事執筆時点ではJNTOの正式な2017年累計値は発表されておりませんが、おそらく700万人には達するものとみられます。

訪日中国人観光客の急増当初は中国人のマナーに関する問題もありましたが、現在では双方の改善意識も高まりトラブルは減少しています。日本経済に貢献してくれている中国人に対し、私達日本人はもっと中国人のことを理解しなければなりません。宜しければ「もっと中国を知るために」もご覧いただければ幸いです。

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