ディスプレイの商品、すぐに手元に!?
パソコンやスマートフォン(スマホ)のディスプレイで見ていた商品がすぐに手元に届く時代がもうすぐそこまで来ているのかも知れません。中国のインターネット通販で、“もっと早く、もっと安く”の動きが加速しています。近年の中国では、中国EC(電子商取引)最大手のアリババ集団、2位の京東集団のECサイトをはじめ、さまざまな中国IT企業のECサイトが乱立。差別化、独自性の動きが進み、特に低価格や、配送時間の短さで競い合うケースが目立ち、新たな物流の形も次々と生まれているようです。中国では、これまでSNSを使ったライブ中継による販売などタイムリーな販促が注目を集めていましたが、輸送コストがかかったり物流システムの構築が遅れていたりと配送面の問題点がありました。しかし、ネット通販市場の発達により、ネットユーザーに届く“情報”のスピードに“モノ”のスピードが追い付いてきており、このことは中国向けホームページ制作やECサイト運営のあり方を今後、大きく変えそうです。
スマホで注文、生鮮食品30分で配送
進化する中国のネット通販は、自宅にいながらにして店頭で買い物ができ、購入したものをすぐに受け取れる環境をも作り出しました。2017年7月1日付の日本経済新聞によりますと、上海のベンチャー企業の盒馬(フーマー)鮮生は、野菜や果物、魚介、肉類が並ぶ店舗を倉庫に見立てて、スマートフォン(スマホ)で注文した商品の「30分配送」を実現したといいます。店舗では、ネットで注文された商品を店員が専用端末で確認しながら保冷バッグに投入、天井に張り巡らされたベルトコンベヤーによって配送所へ運ばれ、宅配員が電動バイクで顧客宅へ運ぶそうで、「店舗から5キロメートル以内なら30分配送」を謳っています。フーマーは、昨春に営業を開始して以来、店舗を拡大しており、上海で10店舗を構え、北京にも1号店をオープン。広東省深圳や浙江省杭州にも進出する計画です。
新鮮な野菜生産に参入 京東集団
大手ECサイトを手掛ける中国のIT企業も相次いで生鮮食品など食料品販売に力を入れ始めています。京東集団傘下の「京東到家」は、宅配大手の「達達」と提携。各地の伝統的な野菜市場と組んで、1時間以内に商品を届けるといいます。利用者はスマホで注文でき、一定額以上を購入すれば宅配費用は無料になります。京東集団は、野菜のネット販売だけでなく、レタスや小松菜などの新鮮な野菜の生産にも参入。2017年6月に三菱ケミカルホールディングスと植物工場分野で業務提携しており、北京市や上海市、広州市などで自社の植物工場を建設する計画です。まずは、北京市に約1万平方メートルの工場を建設し、2018年春までに稼働するといいます。アリババ集団も米国でイチゴなどの果物を栽培、販売する「ドリスコルズ」と、ツナ缶など魚介類の販売を手掛ける「チキン・オブ・ザ・シー」の2社と提携することを明らかにしており、BtoCのECサイト・天猫(Tmall)経由で販売する計画です。中国の大手ECサイトの食料品販売参入は、これまで店頭販売が主力だった中国の食料品販売や流通に大きな変化をもたらす可能性が出てきそうです。
越境EC、大量仕入れでコスト軽減 ネットイース
ここまで迅速は配送網の整備などで、中国で生鮮食品など食料品のネット販売が増えていることをみてきましたが、従来中国のネット通販で頻繁に取り引きされていた日用品、ベビー用品などの状況はどうなんでしょうか。こちらの方はといいますと、アリババ集団が11月11日に開催する「独身の日」をはじめとする京東集団の創立記念日(6月18日)セールなどの影響もあり、安売り競争の様相を呈しています。ですが、中国消費者の求めるものは、安ければ何でもよいというわけではなく、海外の有名メーカーの商品の価格をさまざまなECサイトで比較する場面が多くみられるようです。そんな中、頭角を現しているのが、オンラインゲーム事業などを手掛ける中国のIT企業・網易(ネットイース)の海外商品専門ECサイト・「コアラ」で、セール時などは他のECサイトより割安で購入できるといいます。アリババ集団の天猫国際(Tmall Global)が海外メーカーなどの仮想店舗を集めた出店型であるのに対し、コアラは商品を買い取って販売する方式をとります。天猫国際には初期費用や会費、売上げ手数料などの経費がかかりますが、コアラは大量に仕入れた商品を一括して中国へ運んで輸送コストを抑えるなどの経費削減に取り組んでいます。2018年には大型倉庫稼働による大量の商品配送にも対応するそうで、一層の“安売り”が見込まれています。中国では、高級ブランド品に強い「唯品会」などの越境ECサイトが乱立するほか、初期費用がほとんどかからず、在庫リスクもないEC支援サービスが登場するなど、今後ネット上での価格競争のさらなる激化が予想されています。
無人配達車やドローンの研究も進む
中国でネット通販を筆頭に“情報”と“モノ”とを繋ぐ動きが加速しています。現在は、人による配送・宅配が主流ですが、無人配達車やドローンによる自動配送の研究も進んでおり、将来はパソコンやスマホのディスプレイで見たモノがすぐさま手元に届くというサービスも夢ではなくなるかも知れません。中国の人々の“もっと早く、もっと安く”の要望が高まる中、今後中国向けホームページ制作やECサイト運営に携わっていくのであれば、中国の物流の変化をより注意深く注視していく必要がありそうです。