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中国人民銀行のフィンテック委員会設立の狙いは?中国FinTechの動向を徹底解説

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中国人民銀行がフィンテック委員会設立を発表

2017年5月15日、中国人民銀行は、中国でも近年急速に発展を続けるフィンテック(FinTech)業務の研究と課題調整を推し進めるために「フィンテック委員会」を設立するという声明を発表しました。この声明の内容を分析しながら、中国のフィンテックの動向を解説していきます。

発展目覚ましい中国フィンテック

中国のフィンテックの発展はめざましく、2016年4月に発表された世界のフィンテック関連のベンチャー企業をランキング化した「Fintech 100」においても、上位50社に中国企業が7社ランクインしていました。上位には1位にZhongAn社(衆安保険)が、4位に趣分期(Qufenqi.com)、11位に陸金所(Lufax)がそれぞれランクインしています。1位のZhongAn社(衆安保険)は、2013年に上海で設立されたインターネット専業の損害保険会社で、阿里巴巴(Alibaba)集団、腾讯(Tencent/テンセント)、中国平安保険集団から出資を受けています。ビッグデータ解析技術を活用することで、保険商品の設計から保険の自動引受や保険金の自動請求を行い、細かなデータを基にしたマーケティングやリスクマネジメントを行っています。4位の趣分期(Qufenqi.com)はスマートホンやノートパソコンなどのネット販売を行っているのですが、商品購入の際に支払総額が確定すると、そこで購入者が頭金の額や、分割払いの支払い期間を選択できるシステムになっていて、割賦販売を行うとともに、学生や若いホワイトカラー層をターゲットに小口金融業務を行っています。11位にランキングされた陸金所(Lufax)はインターネットを通じて借り手と貸し手を結びつけるP2Pの融資仲介を手掛ける企業で、お金を借りたい人が貸したい人から金融機関の仲介なしで資金調達ができる新たな手段をウリにしています。ビッグデータを活用することで、どの銀行よりも迅速かつ低料金で借り手と貸し手とをつなぐサービスを提供し急成長しています。

フィンテックは両刃の剣?

中国人民銀行はフィンテックに対しては一応は肯定的な見方を示していて、「テクノロジーよる金融の革新であると同時に金融の発展に新たな活力を注入するもの」だと位置づけています。しかし、その一方でフィンテックには金融に新たなリスクをもたらす可能性があるとも指摘しています。そのリスクは具体的には、フィンテックによって金融リスクが不可視化されてしまったり、資金の流れが商業銀行を迂回してしまったり、フィンテックによって一部の取引が監督官庁の規制の網から漏れてしまうといったことです。中国人民銀行としては、フィンテックをコントロールしながらうまく活用していきたいと考えているようです。

フィンテック委員会設立の目的は?

それでは、今回のフィンテック委員会設立の目的は具体的にはどのようなことなのでしょうか?声明の中で中国人民銀行は、フィンテック委員会の果たすべき役割として次の3項目を上げています。1つ目は、フィンテックの発展が通貨政策や金融の安定、決算システムなどの領域にどのような影響を与えるのかを調査し、中国のフィンテックの発展戦略と政策指針の策定を行うことです。2つ目は、委員会の設立によって国内外の交流・協力をこれまで以上に深化させ、中国の国情に合ったフィンテックによる新たな管理システムを確立させることです。3つ目として、「RegTech」の応用・実践を進め、積極的にビッグデータ、人工知能、クラウドコンピューティングなどのテクノロジーを金融監督の手段として活用し、複数の業界や市場に跨るような複雑に交錯した取引の金融リスクの判別や予防、解消能力を向上させることとしています。

中国人民銀行が「RegTech」を取り上げたロジック

ここで特に注目すべきなのは、中国人民銀行が「RegTech」という概念を取り上げたことです。「RegTech」とは、規制(Regulation)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、2015年ごろからイギリスやアメリカで使われ始めました。「RegTech」が意味するのは、複雑化・高度化が進む金融規制に対応するためのITによるソリューションです。リーマンショック以降、世界的に金融規制が強化・拡大の方向へと転換し、金融機関はこれまで以上にスピード感をもって複雑な規制に対応することが求められています。その結果、金融機関が監督官庁からの規制に対応するための人件費や事務経費のコストが莫大なものに増大してしまい、その対策として、ITによってコストを削減しようという発想から生まれたのが「RegTech」です。今回の声明では、中国人民銀行は監督官庁の側であるのに「RegTech」を活用していくことを表明しました。金融機関がRegTechを使うようになれば、当然のことながら監督官庁の側もそれに応じてRegTechを活用していかなければならないというロジックです。金融機関が人工知能や機械学習、ビッグデータなどを活用しRegTechを始めている状況で、監督官庁が金融機関に対して十分な監督を行うにはRegTech自体をコントロール下に置きたいというのが、今回中国人民銀行がフィンテック委員会を成立させた狙いの一つではないでしょうか。

フィンテックと従来型金融の共存共栄が重要

中国では企業の融資需要や個人顧客の消費貸借や財テク需要が高まっている中で、金融システムが未成熟なためにこれらの需要を十分満たしておらず、フィンテックの発展の余地が非常に大きいと言われています。中国のフィンテック分野は、現行の金融サービスの改善よりも、個人向けの新たなサービスの創出のケースが多く見られます。また、中国では利用者のニーズを把握しているIT企業やEC企業がフィンテックを牽引するケースが多いという特徴があります。フィンテックには従来型金融に比べ、低コストで効率が良いという優位性があるので、中国人民銀行がしっかりとコントロールしないと従来型金融機関が淘汰されてしまうという危惧もあるようです。最近のある調査では、約80%の金融機関が一部の業務がフィンテック企業に取って代わられてしまう可能性が高いと考えていて、特に銀行業に限るとその割合は95%に達するという結果が出ています。フィンテックがビッグデータや人工知能などを活用する以上、最終的には多くのデータを保有するところが有利に競争を戦えることになります。従来型金融と新興勢力であるフィンテックとの均衡を図ることもフィンテック委員会設立の狙いの一つでしょう。

中国人民銀行は永遠に不滅!

中国人民銀行がフィンテック委員会を設立するという声明を出す少し前に行われた中国金融学会で「将来科学技術が十分に発展すれば、AIに中国人民銀行や中国銀行業監督管理委員会、中国証券管理委員会などの行っている監督業務を行わせることが可能になる」という発言がなされました。この発言をしたのは、元中国人民銀行研究局局長という監督官庁の立場を代表する金融界のビッグネームなのですが、この発言に対して、中国を代表する投資銀行・中国国際金融有限公司(CICC)の総経理が「中国人民銀行の政策はどんなに人工知能が発達しても予測不可能なほど複雑怪奇なので、中国人民銀行は永遠に不滅だ」と応酬したそうです。フィンテックによって金融のビジネスモデルとテクノロジーの革新を図りながら、従来型金融機関の業務内容や収益構造にも変革を促したいという中国人民銀行の思惑がどのような進展を見せるのか、中国人民銀行がRegTechを活用することで、その政策がより「複雑怪奇」なものになり、そのような環境の下で中国のRegTech業界が底上げされ、国際的競争力を強めるのか、今後の中国のフィンテックの動向が注目されます。

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