日本では、外出の際に重宝するスマホアプリとして「Google マップ」がお馴染みです。中国ではGoogleドメインが規制されていて使用することができません。そこで中国で使われているのが、中国のインターネット検索エンジン最大手、百度(バイドゥ)の「百度地図」です。この百度地図は、果たしてGoogleマップに「勝るとも劣らない、使い勝手の良い地図アプリ」と言えるのでしょうか。その実力を探ってみました。
Google マップの中国版は存続している
中国ではGoogleドメインが規制されているため、Googleマップを利用することはできません。しかし、中国版がまったく存在しないわけではありません。Googleマップは現在もサービスが継続しており、外国に滞在している中国人が利用できるように提供されていると考えられます。
仕組みを調べてみると、Googleマップでは国のドメインが自動的に選択され、その国の現地語で場所の名前が表示されるようになっています。使用する言語を変更したい場合は、左上のメニュー(三本線)から希望する国の言語を選択すれば良いです。
すなわち、Googleマップの母体はあくまでひとつであり、各国版が個別に存在しているわけではありません。なお、この言語変更機能はパソコン版のみで利用可能なようです。
Google マップは中国で使えるか?
地図アプリのトップシェアを誇るのはGoogleマップであり、その利用率は世界の約半数とも言われています。世界中で的確な情報を提供してくれるGoogleマップですが、これを現在の中国で使ってみるとどうなるのでしょうか。
地図アプリに求められるのは情報の豊富さと正確さです。しかし、まず問題になるのが、中国ではGoogleドメインが規制されているという事実です。この規制を回避するにはVPNサービスを利用するしかありません。ところが、VPNを経由してGoogleマップを使うと、スポットの位置がずれて表示される問題が発生します。また、地図の表示が大雑把なため、都市部ではある程度使えるものの、農村地域では実用的とは言えません。そのため、利用の際には十分な注意が必要です。
百度地図のインストールと問題点
日本人が中国を訪問した際に困るのは、規制のためにGoogle系アプリが使えないことです。「郷に入れば郷に従え」という中国の有名なことわざにあるように、モバイル地図アプリは百度地図を利用する必要があります。
iPhoneの場合は、App Storeから百度地図を入手することができます。しかし、“百度”の公式サイトからのダウンロードには注意が必要です。アプリをダウンロードする前に、非公式なインストーラが強制的にダウンロードされることがあるためです。これが不要な権限の要求や広告表示、関連アプリのインストール促進、さらにはバックグラウンドでの通信やデータ収集につながる可能性があります。したがって、セキュリティとプライバシーを確保するためにも、App Storeからのダウンロードをおすすめします。Androidを利用している場合はGoogle Playストアや端末メーカーの公式アプリストアを通じてダウンロードすることが推奨されます。
さらに、百度地図のアプリをインストールすると電池消耗が早くなる場合があります。スマホのバッテリー利用状況を確認すると、百度地図アプリが必要以上に通信を行っているようです。これは単なるプログラムのバグである可能性もありますが、安全性を考える場合は、ブラウザから百度地図を利用する方法があります。この方法であれば、ブラウザにブックマークしておくことで簡単に起動することができます。
百度地図の使い勝手はどうか
百度地図の使い勝手はどうでしょうか。ルート検索を試した結果は合格です。ダイレクト検索と周辺検索があり、場所が分かっていればダイレクト検索を利用することができます。検索ワードの対応範囲も広く、住所だけでなく、店舗名やビル名でも検索が可能です。
ダイレクト検索を行うと、住所と距離が表示されます。そして「到这去(ここへ行く)」をタップすると、ルート検索結果が表示されます。移動手段は車、公共交通機関、徒歩、自転車から選ぶことができます。
公共交通機関を選んだ場合、Googleマップと同様にダイヤに合わせた検索をしてくれるため、渋滞やアクシデントがない限り、表示された通りに目的地に到着できるようになっています。
また、百度の日本法人は百度地図上に店舗情報を登録することで、訪日中国人観光客を支援するサービスを行っています。例えば、中国語で店名を表示して予約やクーポンの受信ができるようにするなど、増え続けるインバウンド観光客を取り込む取り組みを行っています。例えば、百度地図で「一兰拉面」と検索すると、一蘭ラーメンの店舗が表示され、電話番号や店内の様子などの情報が分かるようになっています。
百度地図とGoogleマップの機能比較
百度地図とGoogleマップには大きな違いはありませんが、オフライン地図を使用する際の勝手が少々異なります。百度地図は都市や省ごとに全体の地図データをダウンロードする仕組みですが、Googleマップはエリアを指定した後、その該当エリアのみの地図データをダウンロードする仕組みになっています。
百度地図が備えている機能には、ルート検索のほか、コンパスモード(進行方向に合わせて地図が回転する機能)、道路状況表示、衛星写真、3D表示、ストリートビュー、そして上述のオフライン地図などがあります。これらの機能は基本的にGoogleマップと変わりません。
百度地図はGoogleマップと比較しても、機能や使い勝手の面で遜色がないと言えます。ただし、日本人の目線では、中国語専用であることが使い勝手に制約を与えるため、「Googleマップに匹敵するものの、やや不便さを感じる」と評価されるかもしれません。一方で、中国人にとっては「勝るとも劣らない、使い勝手の良い地図アプリ」であることは間違いないでしょう。