世界企業番付で中国企業が躍進
「フォーチュン・グローバル500(Fortune Global 500)」はアメリカの経済誌「フォーチュン」が毎年発表する世界企業番付で、世界で高く評価されている企業はどこなのかを示したランクと言えるものです。2016年の「フォーチュン・グローバル500」にランクインした中国企業の数110社とアメリカに次いで多く、日本の52社を大きく上回っています。また、上位5社のうちの3社が中国企業であり、ここにも中国企業の勢いが窺えます。20年前の1996年には、このランキングに入った中国企業は3社だけでしたが、この20年間でアメリカ企業の数は162社から134社に減少していて、「フォーチュン・グローバル500」の中国企業の数がアメリカ企業の数を超える日もそう遠くはないだろうと見られています。
京東(JD.com)のランクインは快挙!
さて、2016年に発表されたランキングで最も注目を集めたのは、京東(JD.com)が中国のIT企業として初めて366位にランクインしたことでした。多くの中国のネットメディアは「京東(JD.com)のランクインは新局面を切り開いた」とか「これまでランクインしていたのは大型の国有企業が多かったが、民間のIT企業がランクインしたことは中国のインターネット業界の発展ぶりを反映している」というように、高く評価しています。また、「初のランクインでいきなり300位台に入ったというのは、京東(JD.com)の実力を示している」というメディアの論評も見られました。
京東(JD.com)は「BAT」よりも強いことになる?
しかし、一部のネットユーザーの間からは、京東(JD.com)がランクインしたのに、中国3大IT企業である「BAT」(百度(Baidu /バイドゥ)・阿里巴巴(Alibaba)・腾讯(Tencent/テンセント))がどこもランクインしないのはなぜだろう?という疑問の声が上がりました。京東(JD.com)は中国で第2位のECモール「京東商城」を運営する企業ですが、その時価総額は約6兆円で、時価総額30兆円を上回る阿里巴巴(Alibaba)や腾讯(Tencent/テンセント)からは大きく引き離されています。また、京東(JD.com)は創業以来13年間赤字を続け、2016年になってようやく黒字化したのですが「長年に渡って赤字を続けているのに倒産しないのはナゼ?」という書き込みがQ&Aサイトにも多く見られるほど、毎年の「赤字」は有名です。「フォーチュンは、経営者の奥さんの”美貌”も加味してランキングを決めたのでは?」といった書き込みも見られました。では、なぜ京東(JD.com)がランクインしたのに「BAT」はランクインしなかったのかですが、それは「フォーチュン・グローバル500」が売上高と営業外収益とによってランキングを行っているからです。京東(JD.com)と阿里巴巴(Alibaba)はいずれもオンラインのショッピングモールを運営していますが、そのビジネスモデルには大きな違いがあります。京東(JD.com)では自らが仕入れた商品を販売していて、京東商城での取引額がそのまま売上に計上されるのに対して、阿里巴巴(Alibaba)の天猫(T-mall)や淘宝(タオバオ)では商品の売上額ではなく、出店者から得られる手数料や広告料、技術料などしか売上に計上されないのです。
ビジネスモデルに合わせた評価基準も必要に
「フォーチュン・グローバル500」は企業の実力を表す指標として中国では一番浸透していると言ってもよく、中国のマスコミやネットメディアは毎年熱心に報道してきています。中国では、「フォーチュン・グローバル500」は「世界500強」と呼ばれ、「究極のランキング」とまで言われています。フォーチュン誌が世界最大のビジネス誌であることは事実ですが、中国の人たちの「フォーチュン・グローバル500」に対する思い入れは、日本とはかなり温度差があるようです。中国で「フォーチュン・グローバル500」が注目を集める理由として、中国人は「大きなものが好き」という伝統が関係しているのかどうかはわかりませんが、売上額や生産量など「量」が絶対的な価値基準として共有されているからだと言えそうです。今回の京東(JD.com)が「BAT」に先駆けてランクインした結果を受けて、「フォーチュン・グローバル500」のことを「世界500強」と呼ぶのは、企業の競争力や収益力の強さを表現していると誤解を招く恐れがあるので、これからは「世界500大」と呼ぶべきだという意見も出され、ビジネスモデルに合わせた指標による企業の評価や収益力による評価を行おうという動きも出始めているようです。