インバウンド

WAmazingの無料SIMカードサービスを徹底解説

目次

スマホアプリで無料SIMカード受け取り

2017年2月1日からWAmazing社と成田国際空港は、台湾・香港からの訪日外国人観光客向けに、5日間無料で使えるSIMカードを配布するサービスを開始しました。このサービスは、事前に無料の「WAmazing」アプリをダウンロードして会員登録したユーザーを対象にするもので、日本に到着後、成田空港第1・第2・第3ターミナルビルの国際旅客到着出口付近に設置された「無料SIMカード受取機」にアプリ内のQRコードをかざすとSIMカードを受け取ることができます。このSIMカードを自分のスマートフォンにセットすればですぐに利用ができます。SIMカードの利用は1日500MB以内、5日間までは無料です。データ通信量の追加購入や利用期間の延長もアプリ内の操作で可能です。

WAmazingは不便や不満から価値を創造するサービス

日本のインバウンドで課題となっているのは、 Wifi 環境などの無料通信インフラの整備や、言語由来による移動困難の解消だと指摘されています。訪日外国人旅行者の多くが日本のインターネット環境を不便だと感じていることがデータで明らかになっています。総務省と観光庁が2016年1月にまとめた「訪日外国人旅行者の国内における受け入れ環境整備に関する現状調査」によると、訪日外国人旅行者が旅行中に困ったこととして最も多かったのは「無料公衆無線LAN環境」の不備でした。空港やホテルなどでは無料Wifi が利用できるけれども、一歩街へ出るとまだ十分な通信環境が整っていないのが現状です。また、訪日前に利用するつもりであったのに、利用できなかったものとして最もギャップが目立ったのが「SIMカードの購入」でした。28.6%の人が訪日前にSIMカードの購入を予定していたのに実際に利用した人は13.2%にとどまっていました。訪日外国人旅行者の無料インターネット通信に対するニーズからタクシー手配、ツアー予約、決済までをワンストップで解決するアプリが「WAmazing」なのです。

私をスキーに連れてって

WAmazing社の提供する「WAmazing」アプリには日本国内でのタクシー配車、観光タクシーの予約手配と決済機能が備わっています。[WAmazing]は東京ハイヤー・タクシー協会が提供するタクシー配車アプリ「スマホdeタッくん」と連携していて、訪日外国人旅行者は[WAmazing]から都内のおよそ1万2500台のタクシーの配車依頼ができます。また、都内最大級のタクシーグループである「チェッカーキャブ無線同組合」とも提携し、アプリから「訪日外国人旅行者対象<雪国行き>観光タクシー」を利用できます。訪日外国人旅行者の「日本の雪」に対する関心は高いもののスキー場の多くが公共交通が発達していないエリアにあるため、利用を促進するためには交通アクセスの困難性を解消しなければならないという課題がありました。この観光タクシーを利用すると東京都内のホテルから目的のスキー場までドア・ツー・ドアで行くことができます。群馬県の谷川岳天神平スキー場まで行くプランでは、都内のホテルを朝7時半に出発して帰着時間は16時ごろ、料金は1台4名乗車の場合一人当たり1万3073円です。今後も四季に応じて日本の魅力を体験できる観光タクシー商品がこのアプリから利用できるようになる予定です。

WAmazingの狙いは?

WAmazing社では、このアプリを訪日外国人旅行者と国内観光業界とを結びつけるプラットフォームと位置づけています。プラットフォームにならない限りは、ネットサービスは数年で衰退してしまうとも考えているようです。「WAmazing」は訪日外国人旅行者向けの交通、宿泊、飲食、買い物といった多種多様なサービス事業者と連携することでコンテンツを充実させ多くの利用者を呼び込み、訪日外国人旅行者と国内観光事業者をマッチングさせ、事業者から送客手数料を得るビジネスモデルです。オンライン旅行サイトの送客手数料は約10%と言われています。同時に、基本サービスを無料で提供してユーザーを集め、プラスアルファの機能やサービスによる追加課金で収益を上げるビジネスモデルの「フリーミアム」でもあるのです。スキー場まで旅行者を送り届ければ、そこからウエアや板のレンタル、レッスン、リフト、クロスカントリースキーのツアーなどの付帯サービスの利用が派生してきます。「WAmazing」はSIMカードの利用を無料にして何度も利用してもらい固定利用層になってもらうことを狙っていると思われます。政府は2020年の訪日外国人旅行者数の目標を4000万人に設定していますが、「WAmazing」をその時点で500万人つまり訪日外国人旅行者の8人に1人が利用するプラットフォームにするのが現段階での目標だそうです。

SIMカードはIoTデバイス

もうひとつ注目すべきなのは、この「WAmazing」のSIMカードのモバイルネットワークを提供しているのがソラコム(SORACOM)という点です。ソラコムはモバイル通信とクラウドを直結した「IoT/M2Mシステム」のための通信プラットフォームです。ですからSIMカードを通じて訪日外国人旅行者の旅行中の行動プロセスの把握が実現できます。成田国際空港ではWAmazing社との提携によって、無料SIMカードサービスで空港自体の利用者満足度を向上させることができるだけでなく、旅行中の消費行動を把握することで、訪日外国人旅行者が帰国時に空港内でお土産を買うシーンで適切なマーケティングを行うことが可能になります。「WAmazing」の利用によって蓄積される旅行者の交通手段や立ち寄り先、消費行動などのビッグデータは非常に価値の高いものになるでしょう。ユーザーの利用状況に合わせたパーソナライズされたSIMカードの提供も検討されているようです。当初は香港と台湾に居住する観光客をターゲットとしているので、アプリの言語は中国語(繁体字)のみですが、今後は他の言語でも展開していくこと、また、成田国際空港以外の空港でも「SIMカード受取機」を設置することが予定されています。「インバウンドとフリーミアム」や「インバウンドとIoT」の融合といった新たな「ハイブリッド型インバウンドビジネス」を展開する「WAmazing」の今後の動向が注目されます。

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