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越境ECでも知らないうちにライセンス違反?中国語のフォントの利用には注意が必要!

越境ECで中国市場に進出する企業が増える中、フォントのライセンス違反による予期せぬ請求や法的トラブルが深刻な問題となっています。特に、中国語フォント市場で圧倒的なシェアを持つ北京北大方正電子(以下、方正字庫)からの著作権侵害通知が企業活動に大きな影響を与えています。本記事では、方正字庫のフォント著作権問題の最新動向と、越境EC企業が取るべき対策について詳しく解説します。

中国語フォントの著作権問題とは

北京北大方正電子の役割と市場シェア

方正字庫は、北京大学の研究成果を産業化することを目的に設立された企業で、北京大学が100%出資しています。現在、中国語のデスクトップパブリッシング(DTP)システム分野で世界市場の80%以上を占める大手フォントベンダーとして知られています。同社は中国国内の多くのメディアや政府関係機関で利用されており、マイクロソフトのWindowsやアップルのmacOSにも標準搭載されているフォントを提供しています。

フォント著作権を巡る動向

日本ではあまり意識されないかもしれませんが、中国ではフォントの著作権に関する訴訟が頻発しています。特にT-mallやタオバオなどの大手ECサイトを運営する企業に対し、方正字庫から「ライセンスなしでフォントを使用しているため、迅速にライセンス料金を支払うように。支払わなければ訴える」という通知が届くケースが増えています。これは越境ECを通じて中国市場に商品情報を掲載する際に、フォントの著作権遵守がいかに重要かを示しています。

越境ECにおけるフォント使用の実態

P&G社との訴訟事例

方正字庫が著作権侵害で訴えた有名な事例として、2008年から2011年にかけての日用品メーカーP&G社との間で起きた訴訟があります。P&G社はシャンプーのロゴに「飄柔」の書体を使用していましたが、これが方正字庫のフォントの無断使用とされ、著作権法違反で訴えられました。この訴訟は二審まで争われ、最終的には最高人民法院で判決が下されました。裁判の結果、P&G社は147万元(約2,400,000円)の賠償金を支払うよう命じられました。

このケースは、中国市場における著作権管理の厳しさと、大企業でもフォントの無断使用が大きな法的リスクを伴うことを示しています。「飄柔」は中国人なら誰でも知っている定番のシャンプーであり、多くの中国人が利用していますが、そのフォント使用が著作権侵害とみなされたことは、多くの企業にとって重要な警告となりました。

中国のネットショップの事例

济南时报によると近年、ある中国ネットショップオーナーがソーシャルメディアで、自身の店舗が方正字库から未許可のフォント使用を理由に侵害通知を受けたことを明らかにしました。通知では、店舗の詳細ページで方正フォントを使用しているとして、96時間以内に全ての未許可フォントを削除するよう要求され、さもなければ4500元(約75,000円)の賠償金が請求されるとのことです。

サイトには「仿宋体」などを使用しており、特に方正字庫フォントを選んだわけではないにも関わらず、指摘を受けたと言う事例です。また、具体的にどの部分が侵害に該当するのかが明示されておらず、対策を講じることが難しい状況です。時には不透明な警告を受ける人もいるようです。

方正字庫の対応と批判

中国のソーシャルメディア上では、方正字庫の対応についても批判の声が上がっています。一部のネットユーザーは、方正字庫が「フォントハンター」だと呼ばれ権利保護を行い、利益を得ようとしていると指摘しています。方正字库の関係者は、無許可で商用利用を行っているユーザーに対してライセンス料の支払いまたは追加の許可を求めていると説明していますが、具体的な侵害箇所を明示しないまま通知を送ることが問題視されています。これにより、ユーザーはどの部分が侵害に該当するのかを特定することが困難となり、適切な対応が取れない状況が生まれています。

ライセンス違反を防ぐための対策

方正字庫のライセンス方針

方正字庫では、フォントを商用利用する際のライセンス付与に関する方針を公表しています。同社によれば、開発したフォントを「免费字体(フリー書体)」「基础字体(基本書体)」「精选字体(精選書体)」の三種類に分類し、それぞれのライセンス取得に関する規定を明示しています。

さらに、ライセンス付与のタイプやその範囲に応じてライセンス料が設定されています。無償で使用できる「免费書体」に分類されているのは、「方正黒体」、「方正書宋」、「方正仿宋」、「方正楷体」の4種類のフォントのみです。

その他の「基本書体」および「精選書体」に分類されるフォントをビジネスで利用する場合には、すべて有償のライセンスが必要となるため注意が必要です。例えば、Windowsに標準搭載されている「微軟雅黒(Microsoft YaHei)」やmacOSに組み込まれている「蘭亭黒体(Lantinghei)」の著作権は、方正字库が所有しているため、同社の規定が適用されます。つまり、これらのフォントを使用する場合も有償のライセンスを購入する必要があります。

詳しくは方正字库のライセンス方針を参照ください。

フリーフォントの活用とその注意点

コスト削減の観点から、フリーフォントの活用も一つの選択肢です。しかし、フリーフォントにも利用規約が存在し、商用利用が許可されていない場合も多々あります。企業は、フリーフォントを使用する際には、その利用規約を十分に確認し、商用利用が可能かどうかを事前にチェックする必要があります。また、信頼できるソースからのみダウンロードし、ライセンス条件を遵守することが求められます。フリーフォントを適切に利用することで、コストを抑えつつ法的リスクを回避することが可能です。

フォント使用ポリシーの策定

企業内で統一されたフォント使用ポリシーを策定することも、ライセンス違反防止に有効です。ポリシーには、フォントの選定基準、ライセンス取得手順、使用範囲の明確化などを含めることが重要です。これにより、全社員がフォント使用に関するルールを理解し、一貫した運用が可能となります。また、定期的な教育やトレーニングを通じて、フォントの著作権に対する意識を高めることも効果的です。組織全体での取り組みが、ライセンス違反のリスクを大幅に低減させます。

まとめ

中国市場でのビジネス展開において、フォントの著作権遵守は避けて通れない重要な課題です。方正字庫の厳しい著作権管理は、企業活動に大きな影響を与える可能性があります。法的リスクを避け、信頼性の高いブランドイメージを構築するためには、フォントの適切な利用方法と予防策を講じることが不可欠です。企業は、フォント著作権の重要性を再確認し、必要な対策を講じることで、中国市場での成功を目指しましょう。

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