618ショッピングフェスとは、京東(JD.com)の創業日である6月18日にちなんで始まった、中国EC業界最大級の年中ショッピングイベントです。現在では天猫(Tmall)や拼多多(Pinduoduo)、抖音(Douyin)など、主要なECプラットフォームも同時期に大規模キャンペーンを展開し、年間を通じて最も重要な販促の一つとなっています。日本企業にとっては、中国市場の反応を測る絶好の機会でもあります。
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目次
1. 2025年618ショッピングフェスはどうだったのか?今年の全体像を総括
1-1. フェス期間と参加プラットフォームの特徴
2025年の618ショッピングフェスは、5月20日ごろにプレイベントがスタートし、6月18日をもって本番が終了しました。京東、天猫、拼多多、抖音、小紅書などが参加し、各社が異なる戦略を展開。特に注目されたのは、ライブ配信と時間限定割引を組み合わせたリアルタイム施策で、「見ながら買う」購買体験が広がった点です。
京東は配送スピードと信頼性を強みに、家電・IT製品を中心に「即日配送+長期保証」など安心感を打ち出しました。拼多多は地方市場に最適化された価格戦略を推進し、農村部や中小都市の消費者から大きな支持を得ています。天猫は中高価格帯ブランドに注力し、KOL活用による高付加価値販売を強化。抖音・小紅書では短尺動画とレビューによる“衝動買い”誘発型コンテンツが成果を上げました。明確なプラットフォーム戦略の差別化が際立った年といえます。
1-2. 売上と注目カテゴリ──何が売れたのか
健康家電、美容機器、アウトドア用品などが売れ筋となり、まとめ買いや高額商品の割引活用が目立ちました。日本ブランドではスキンケア用品や衛生用品が安定した人気を誇り、SNSで話題になった製品はフェス期間中に爆発的な売上を記録。お得感と安心感の両立が消費者の心を掴みました。
象印の高機能炊飯器、無印良品の収納グッズ、パナソニックのスチーマー美顔器などが、小紅書や抖音を通じたKOCレビューの拡散により注目されました。またアウトドアカテゴリでは、地方都市のファミリー層向けに家庭用キャンプ用品が人気。全体として、“高単価・高評価・話題性”を兼ね備えた商品が成果を出しています。
1-3. 消費者行動の変化──“分散購買”が加速
初日に集中していた爆買いは姿を消し、フェス期間を通じて分散的に最安タイミングを狙う行動が顕著となりました。AIによる価格変動、時間限定クーポン、事前予約特典などの複雑な割引ロジックにより、企業側にはリアルタイム対応力が求められる構造にシフトしています。
2025年の特徴は、複数プラットフォームを横断しながら検討・購入するユーザーが増加した点です。京東で性能を調べ、拼多多で価格を確認し、抖音でレビューを見て購入する、という“マルチ接点”型購買行動が一般化しました。価格だけでなく、配送・信頼性・レビューの信ぴょう性など、あらゆる要素が意思決定に影響を与える中、企業には横断的なブランドプレゼンスの構築が求められています。
2. 地方都市ユーザーの躍進──新たな主役の登場
2-1. Tier3〜Tier5の購買力が前年比大幅増
2025年の618ショッピングフェスでは、Tier3以下の地方都市からの注文数が前年比で20〜30%増加。特に安徽省・河南省・湖南省など中部地域の購買活動が顕著でした。拼多多では農村ユーザー比率が過去最高を記録し、価格志向+情報接触の拡大がその背景にあります。
拼多多は下沈市場向け特設ページを設置し、低価格かつ大容量の商品に特化したプロモーションを展開。一方、京東は地方倉庫を活用した翌日配送を推進し、物流強化で信頼性を確保しました。“安くて早い”構造が、地方層の購買を加速させています。今後、この市場の攻略が中長期的なカギとなります。
2-2. 地方ユーザーが支持した商品・ブランド
地方ユーザーは価格だけでなく実用性・耐久性を重視し、家族で使えるかという視点が重要です。売れ筋には、健康家電・大容量洗剤・シンプル設計家電などが並び、信頼性の高い日本ブランドへの支持が目立ちました。
具体例としては、花王の洗剤やライオンのハンドソープなどのまとめ買い商品が拼多多・京東超市で好調。また、アイリスオーヤマの電気ポットやシャープの除湿機など、高齢者世帯にも使いやすい製品が注目されました。生活に根ざした“安心感+コスパ”が評価される市場です。
2-3. 拼多多・京東のローカル戦略が的中
拼多多と京東の地方戦略は今年のフェスでも成功しました。拼多多は地域別クーポン+共同購入を前面に打ち出し、地方消費者の価格感覚にフィット。京東は「京東到家」とローカル倉庫網でスピードと安心を提供し、地方都市での信頼性を獲得しました。
拼多多では“工場直送モデル”を拡充し、中間マージンを省いた商品供給を強化。さらに、地域密着型プロモーション動画が農村層に好印象を与えています。京東はテレビ広告や電話注文キャンペーンなど、非デジタル層への訴求も展開。“地方対応力”が今後の差別化要因となるでしょう。
3. KOCと動画レビューが牽引した購買決定
3-1. KOLよりも「信頼できる生活者の声」がCVに直結
KOL(Key Opinion Leader)による大規模ライブ配信は依然として一定の影響力を持っていますが、2025年の618ショッピングフェスでは、KOC(Key Opinion Consumer)の存在感が一段と増しました。日常的でリアルな使用感を伝えるレビュー動画が共感を呼び、購買決定(CV)に直結する動きが広がっています。抖音や小紅書では、派手さより“本音と共感”が拡散されやすい傾向です。
特にZ世代・ミレニアル層の間では、“自分に近い生活者の声”を参考にする動きが主流になりつつあります。小紅書では無加工・等身大の動画投稿がアルゴリズム上も優遇されており、企業側はKOC施策を仕組み化する必要があります。影響力から信頼力へという価値転換が明確に進んでいます。
3-2. 小紅書・抖音で話題になった日本製品
618ショッピングフェスでは、小紅書や抖音でKOCが紹介した日本製品が多くの話題を集めました。たとえば、スキンケアの毛穴ケアセットや象印の炊飯器、パナソニックのスチーマー美顔器などが、“使ってみた”投稿をきっかけに売上を急増させました。
小紅書では、生活の中で使われている様子が伝わる動画が人気で、無印良品の収納ケースやニトリのインテリア用品なども自然に拡散。抖音では購入リンク付きレビュー動画が直接CVを生む構造が強化されており、“静かに売れる日本製品”の評価がより定着しました。
3-3. 日本企業が今から始めるべきKOC戦略
中国市場で成果を出すために、日本企業が今から取り組むべきは、KOCによる自然な発信を促進する仕組みづくりです。たとえば、商品にレビュー投稿用のQRコードを同封したり、投稿者向けインセンティブを設けることで、生活者視点のUGC(ユーザー生成コンテンツ)を増やせます。
さらに効果的なのが、KOC養成プログラムや継続レビュー型の体験キャンペーンです。ブランドが直接、信頼できる生活者と長期的に関係を構築することで、“共に育つマーケティング”が実現します。また、小紅書では企業アカウントのコメント返答やタグ設計も評価対象になるため、見える形での運用が成果に直結します。
4. まとめ:次は“双11”へ──今年の学びをどう活かすか
4-1. フェスのデータを資産化して再活用する
618ショッピングフェスで得られた販売データ・広告効果・レビュー内容などは、次の“双11”や年間販促戦略に直結する重要な資産です。たとえば、売れた商品カテゴリや地域別アクセス傾向、時間帯ごとのCV率などを整理・可視化することで、次回以降の打ち手に再活用できます。
また、プラットフォーム横断で比較できる指標設計が重要です。小紅書・抖音・拼多多など、異なる特性を持つメディアでのパフォーマンスを定点観測し、PDCAを回す体制を構築することが、再現性のある戦略につながります。
4-2. 「信頼」や「ストーリー」で戦う販促へ
価格訴求が強い中でも、ブランドの信頼性や物語性が購入の決め手となる傾向は強まっています。商品の開発背景や日本企業ならではの品質管理、生活者に寄り添う設計思想などを伝えることで、価格競争を超えた選ばれる理由が生まれます。
とくにKOC施策との連動が重要です。“共感されるストーリー”をKOCが語ることで、ただの製品紹介ではなく、ライフスタイルの一部として拡散されていきます。短期的なキャンペーンよりも、中長期で構築されるブランドイメージが、今後の成果を左右します。
4-3. 継続的に勝てる中国戦略の視点とは
618や双11といった大型イベントで成果を出すには、単発的な広告施策ではなく、構造的な強みの構築が不可欠です。具体的には、現地ニーズに合わせた商品開発、ローカライズされたカスタマーサポート、KOCネットワークの育成などが重要です。
また、京東や拼多多など各プラットフォームにおけるレビュー設計、配送体験、商品説明の最適化なども継続的にチューニングすることで、“いつでも買いたい”という信頼感につながります。イベント頼みではなく、常時購入されるブランド作りが、中長期的な成功のカギです。


