POP MARTとは?

画像出典:POP MART公式サイト
POP MART(泡泡玛特・ポップマート)は、2010年に設立された中国発のトイブランドです。同年11月に北京で初の店舗をオープンして以来、急成長を遂げ、2022年には海外展開を本格化。現在では韓国、日本、アメリカ、シンガポールなど23か国・地域に進出し、海外売上は全体の約10%を占めるまでに拡大しました。
「トレンドを創造し、幸せを届ける」をミッションに掲げ、POP MARTは多くのデザイナーと協力して独自のIP(知的財産)を開発。若者に愛されるトイ製品を次々と生み出し、単なる商品ではなく、驚きやコレクションの楽しさを提供するブランドとして世界的に認知されています。
中国潮流玩具文化の開拓者としての「POP MART」
潮流玩具(デザイナーズトイ)とは?
近年、中国では「潮流玩具(デザイナーズトイ)」と呼ばれる新しいトイ文化が急速に成長しています。潮流玩具とは、アート性やデザイン性が高く、大人も楽しめるコレクターズアイテムとして人気のトイ製品のことです。従来のおもちゃが主に子ども向けであるのに対し、潮流玩具は10代後半から30代の若者や大人をターゲットにしているのが特徴です。
潮流玩具文化の中国市場
統計によると、中国における潮流玩具(デザイナーズトイ)の市場規模は現在約345億元(約6700億円)に達しています。その中でも、特に「ブラインドボックス」と呼ばれる、箱を開けるまで中身が分からない仕組みの製品が人気で、全体の28%を占めています。

出典:无限品牌博物馆:泡泡玛特经营案例分析
この市場は2017年から2021年の間に年平均122%という驚異的な成長率を記録しました。また、潮流玩具市場全体の年平均成長率(CAGR)は33%と非常に高い水準を維持しています。さらに、2028年までには市場規模が1300億元(約2兆5000億円)に達すると予測されており、今後も急成長が続く見通しです。
ビジネスモデルと成功の秘訣
ブラインドボックス戦略と手価格帯
POP MARTは、独自のビジネスモデルを武器に急成長を遂げています。その中心にあるのが「ブラインドボックス形式」です。この形式では、箱を開けるまで中身が分からないという仕組みが、購入者に開封時のワクワク感を提供します。また、特定の箱にしか入っていない「レアキャラクター」を含めることで、収集意欲を刺激し、リピーターを生み出す仕掛けとして機能しています。

価格設定も成功の要因の一つです。ブラインドボックスは1個50~100元(約1,000~2,000円)と手頃な価格帯で、若年層でも気軽に購入しやすい点が特徴です。一方、希少性の高い限定版やレアキャラクターは、数万円で取引されることもあり、コレクターズアイテムとしての価値を高めています。このように、手軽さと高い付加価値を両立させた価格戦略が、POP MARTのブランド力を支えています。
販売方法の革新
POP MARTは、販売方法の多様化に成功した企業です。その代表例が、自動販売機「ロボショップ」です。ショッピングモールや駅などの高トラフィックエリアに設置されたロボショップは、消費者に手軽で便利な購入体験を提供しています。これにより、店舗を持たなくても広範囲な消費者にリーチできる効率的な販売モデルを確立しました。

画像出典:大衆点評より自動販売機「ロボショップ」の様子
POP MARTはオンライン販売にも力を注いでおり、公式ウェブサイトや小紅書(RED)、ミニプログラム、中国の主要ECプラットフォームであるタオバオやジンドン(JD.com)を活用して商品を展開しています。特に、オンライン限定商品や期間限定コレクションの提供により、ファンの購買意欲を高めることに成功しています。また、韓国、日本、アメリカをはじめとする23か国以上で販売チャネルを拡大し、積極的に海外展開を進めることで、グローバル市場におけるプレゼンスを確立しています。
マーケティング戦略の成功要因
POP MARTの成功を支えるもう一つの柱が、SNSを中心としたマーケティング戦略です。同社はWeiboや小紅書(RED)、Instagramなどのプラットフォームを活用し、若者向けに洗練されたプロモーションを展開しています。特に、インフルエンサーやKOL(Key Opinion Leader)とのタイアップによるプロモーションは、ブランド認知度を大幅に向上させる効果を発揮しています。
また、POP MARTは消費者コミュニティを形成することにも注力しています。公式アプリやSNSを通じて、コレクター同士が交流したり、自分のコレクションを披露する場を提供することで、ファンのエンゲージメントを高めています。さらに、ポップアップストアや展示会などのイベントを定期的に開催し、顧客が直接商品を体験できる機会を創出しています。
今後の展開と成長戦略
1. 新しいキャラクターとIPの開発
POP MARTは、人気キャラクター「Molly」「Dimoo」「Labubu」を基盤に、新たなIPの開発を積極的に進めています。外部アーティストとのコラボレーションを拡大し、個性あふれるキャラクターを次々と生み出し、新鮮な驚きを提供しています。また、消費者の収集欲を刺激するキャラクター設計やストーリーテリング要素がファンを惹きつける重要なポイントです。さらに、アニメ化やコラボグッズ展開といったエンターテインメント領域への進出も視野に入れ、IPを軸にさらなる成長を目指しています。
2. グローバル市場での拡大
POP MARTは、韓国、日本、アメリカなど23か国以上で展開し、グローバル市場での存在感を強めています。特に、東南アジアやヨーロッパなどの新規市場進出を計画中で、地域ごとの文化やニーズに合わせた商品展開を行っています。たとえば、日本では特定キャラクターの限定コレクションを展開し、ファン層を拡大。一方、東南アジアでは若い市場向けに価格帯を調整するなど、細やかな戦略が成長を後押ししています。これにより、POP MARTは世界的なブランドとしてさらに飛躍を遂げる見込みです。
3. デジタル領域への挑戦
POP MARTは、デジタル技術を活用した新たな市場への挑戦を進めています。特に、オンライン販売の強化に加え、メタバースやNFT(非代替性トークン)の分野に注力。消費者がデジタル上でキャラクターやトイを体験・収集できる新たな価値を提供しようとしています。例えば、仮想空間でのキャラクター展示や購入体験の実現、NFTを使った希少性の高いデジタルアイテムの販売を模索中です。こうしたリアルとデジタルの融合は、若い世代へのアプローチをさらに強化するでしょう。