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最新の免税規定見直し:現行制度の課題と新制度の展望

現行の免税制度とは

免税制度の概要と目的

免税制度は、訪日外国人観光客が日本で購入した商品やサービスに対して消費税を免除する仕組みです。この制度の主な目的は、訪日観光客の購買意欲を高め、観光産業を活性化させることにあります。観光立国を目指す日本にとって、免税制度は重要な政策ツールの一つです。例えば、観光客が家電やお土産を購入する際に税負担が軽減されることで、旅行中の消費が促進されます。免税制度は、日本国内での消費を後押しし、地域経済の活性化にも寄与する点が評価されています。

現行制度の仕組みとその課題

現在、日本の消費税免税制度は、訪日外国人観光客が免税店で商品を購入する際、パスポートなどを提示することで消費税を免除される仕組みです。この制度は訪日観光客の購買意欲を高める目的で導入され、多くの観光客に利用されています。商品は「一般商品」と「消耗品」に区分され、それぞれの免税条件が設定されています。一般商品には金額の上限はありませんが、消耗品には購入上限額として50万円の制限があります。

しかし、この制度にはいくつかの深刻な課題があります。特に、購入時点での免税適用が悪用され、商品を国内で転売し利ざやを得る不正行為が多発している点が問題視されています。2022年度の税関調査では、1億円以上の免税品を購入して出国した374人のうち、税関で購入品を確認できたのはわずか15.2%(57人)にすぎませんでした。その57人のうち56人は国外への持ち出しを確認できず、本来なら消費税を支払う義務がありましたが、55人は納税せずに出国しました。この結果、滞納額は18.5億円に達しており、制度の信頼性が大きく損なわれています

返金方式の導入とその狙い

こうした状況を受け、政府・与党は免税制度を現行の「購入時免税方式」から「返金(リファンド)方式」へ移行する方向で調整を進めています。この方式では、訪日観光客は商品購入時に消費税込みの金額を支払い、その後、出国時に空港や港の税関で購入品の国外持ち出しが確認されると、消費税分が返金されます。返金は、事前に登録されたクレジットカードへの振り込みや現金での支払いが想定されています。

返金方式は欧州などで一般的に採用されている方法です。この方式を導入することで、商品が国内に留まる不正行為を未然に防ぎ、税収の漏れを防ぐ効果が期待されています。同時に、訪日観光客の利便性も考慮されています。消費税の返金が確実に行われることで、訪日客の信頼が高まり、購買意欲がさらに向上することが期待されます。

新制度の具体的変更点

2026年度から導入予定の新制度では、次のような変更が予定されています。

  • 購入時免税から返金方式への移行:従来の購入時に消費税が免除される仕組みを廃止し、出国時に税関での確認後に返金する方式に変更します。この変更により、国内での転売を抑止し、制度の透明性を高めます。
  • 免税品区分の撤廃:現行制度では「一般商品」と「消耗品」の2つの区分が存在しますが、これを撤廃し、一律の基準で商品を扱うことで手続きを簡素化します。
  • 購入上限額の廃止:化粧品や食品などの消耗品に設けられている購入上限額(50万円)を撤廃します。これにより、高額商品の購入が可能となり、観光客のニーズに対応できます。
  • 特殊テープ使用規定の廃止:開封防止用に義務付けられている特殊なテープの使用を廃止し、免税店の事務的な負担を軽減します。
  • 税関での確認プロセスの強化:税関での購入品確認が不可欠となるため、管理システムの改修が行われます。これにより、持ち出し確認の精度が向上し、不正利用の抑止がさらに強化されます。

実施スケジュールと展望

政府は2023年末に与党の税制調査会で詳細を詰め、税制改正大綱に新制度を盛り込む予定です。2024年度から2025年度にかけて免税販売管理システムの改修を進め、2026年度に新制度が開始される見込みです。

このスケジュールを実現するためには、観光業界や免税店、税関を含む関係機関の協力が不可欠です。新制度への円滑な移行を目指し、業界全体での準備が進められることが期待されます。

見直しによる期待される効果

不正行為の抑止と税収の安定化

免税品区分の撤廃や購入上限額の廃止は、観光客の利便性を大幅に向上させます。特に、高額商品の購入が自由になることで、訪日観光客の購買意欲がさらに高まることが期待されます。また、返金方式の採用により、税金の返金プロセスが明確化されることで、観光客が安心して買い物を楽しめる環境が整備されます。これらの改正は、観光産業全体の収益向上と日本経済への貢献につながるでしょう。

観光産業の活性化と観光客の満足度向上

免税品区分の統一や特殊テープ使用規定の廃止により、免税店の事務負担が軽減されます。ただし、返金方式への対応や税関での確認作業が増加するため、システム改修やプロセス改善のための初期投資が求められる可能性があります。一方で、税関業務の効率化を目指したデジタル化の推進により、長期的には業務負担の軽減と制度運用のスムーズ化が実現するでしょう。

事業者と税関の業務効率化

免税品区分の統一や特殊テープ使用規定の廃止により、免税店の事務負担が軽減されます。ただし、返金方式への対応や税関での確認作業が増加するため、システム改修やプロセス改善のための初期投資が求められる可能性があります。一方で、税関業務の効率化を目指したデジタル化の推進により、長期的には業務負担の軽減と制度運用のスムーズ化が実現するでしょう。

まとめ

今回の免税制度見直しは、日本の観光産業にとって重要な転換点となります。不正行為を防ぎつつ、観光客の利便性を高める新制度の導入は、観光客と事業者の双方にとってメリットをもたらします。訪日観光客が安心して日本での買い物を楽しむことができるようになるだけでなく、税収確保や制度の透明性向上も期待されます。観光業界や免税店は、この機会を捉え、新制度に対応したサービス向上を図る必要があります。

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